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4. 入学1日目④




 真っ赤になった《勇者》は案の定頭から湯気を立ち上らせ始めた。この反応、ゲーム的に言えばもう好感度MAX状態ですよね?真白、朝のあの短時間でどうやって《勇者》を攻略したんだ?……まさか、あんな場所であんな短時間であんなことやこんなこともやっちゃったのか!?……ちょっとその過程を見てみたかった、残念。



 てかさ、こんだけ《勇者》メロメロなら、卒業を待つまでもなくくっつくんじゃない?



 ゲームの中では攻略対象たちとデートはするが、付き合うのは卒業式の告白後からだ。最初乙女ゲームをやった時は「デートって付き合ってからするもんなんじゃないの?」なんて可愛い疑問を抱いていた時期もあった。人間関係、いろいろなものが前後するなんてままあるなんてことを、28歳まで生きた私は知っている。

 あ、また脱線したし……。と、ともかく、ゲーム内では学園生活のなかで正式に付き合うという展開はありえない。


 けど、ここはゲームと完全一致しているわけじゃないし、真白が1年目で生徒会に入るというゲームではありえない展開も起こってたりする。だから、真白が《勇者》を好きなれば、卒業を待たずに2人がくっつく可能性は十分にありえそうだ。


 ということは、ということはですよ!真白が卒業前に《勇者》とくっついてくれれば、相手確定で他の攻略キャラの付け入る隙はないはず。


 つまり、《勇者》と真白がくっつけば、いるかどうかもわからない《冥王》のことに悩むこともなくなるってことじゃないっすかこれ!?そしたら私は《冥王》について考える時間を避けて、その分勉強に集中できて……それって私にとってすごく好都合!



「決めた。今決めた。君の恋を私の安寧な学園生活のために応援することにする」



「は?」

「要は、真白と仲良くなりたいんでしょ?」

「……まぁ」

「だったら私が協力してあげる」

「……」



 あ、そんな目しやがって。全然信じてないな、こいつ。くそぅ。いいさいいさ、嘘じゃないってことを今から証明してやるからな!



 あ、その前に。1個確認。



「君はこれくらいの大きさの透明な石持ってる?」

「……なんでそんなこと聞くんだよ?」

「いいから答えて。持ってるの?持ってないの?答えないと協力してあげられないんだけど」

「……持ってるよ」



 不審者を見るような目で渋ったような顔をしてたけど、真白と相当仲良くなりたいのか、最終的に勇者はブレザーの内ポケットから何かを取り出した。それは、間違いなく真白が持っていたものと同じ宝玉。

 ただ、色は青だった。これはゲームと一致する。間違いなくこの《武蔵野勇気》は《勇者》の生まれ変わりみたいだ。



「これ、もしかして夢で《創造主》様からもらったとか?」

「な、なんでお前がそれを知って……!」



 ふむ、《創造主》とも会ってるところからして、これは真白と同じく確定だな。もしかしたら真白がくっつく相手はゲームとまったく関係ない相手でもいいのかもしれないけど、《冥王》対策のためならゲームと関連するキャラとくっついておくことに越したことはないはずだ。

 もちろん、真白が《勇者》のことを好きにならなかった場合、無理強いしようなんて思ってないが、考えてもみてほしい。真白ほどのハイスペックな女子に相応しい男子なんてそうそういない。その点でいけば、攻略対象筆頭を誇る《勇者》はかなりハイスペックなはずだ。

 見た目だけで言わせて貰えば文句なしの合格。2人が並んだ姿は実に絵になるだろう。うーん、ちょっと見てみたい。



 そんな余計なことを考えてたら、いつの間にか《勇者》の警戒心が強まっていた。そりゃ、夢で《創造主》に会ったなんて、幻としか思えないようなこと言い当てたんだから当然だ。ここはフォローしとかないとな。と思ってたら、《勇者》のほうから質問が飛んでくる。



「お前も、なのか?」

「あー、うーんと。私は部外者、かな。ちょっと事情知ってるだけ」

「……」



 うーん、納得していただけてないみたいだ。そりゃ、こんな説明じゃ納得しないか。

 ただ、正直に私の前世とかここがゲーム云々の話なんてしちゃったら、もっと怪しい目で見られるのが関の山だしなー。不審者どころじゃなくなっちゃう。詳しいことはおいおい話すことにして、今はさっさと本題に入らせてもらおう。



「それよりさっきの協力するって話なんだけどね。実は、真白は生徒会に入ることが決まってるんだけど、もう1人メンバーを探してんだよ」

「え……」

「当て無さそうだし、3人のうち2人は女だから最後は男がいいと思うし、もしその気があるなら引き受けてくんない?一緒に生徒会入れば仲良くなるチャンスもいっぱいあるから、君にとっても都合いいでしょ?」

「……」

「無理にとは言わないけどさ、興味があるなら明日うちのクラスに来なよ。真白に紹介するし。あ、私A組だから。じゃね」



 それだけさっさと言って、ようやく見つけることができた靴を履いて玄関を出る。《勇者》にはあれだけ言っとけば十分だろう。既に攻略されちゃってる彼は、真白と仲良くなりたくてたまらないわけだから絶対に生徒会の話に乗ってくる。

 真白も後1人誰にしようかと困ってたわけだし、これで2人が仲良くなってトントンっと付き合ってくれれば私のはっきりしない不安も払拭される。まさに一石三鳥!



 これで私はアニメと漫画とゲーム三昧の生活に向かって突き進むことができるのだ!うはははははははは!!!



 あ!ちんたらしてたらアニメの時間が迫っているよー!え?勉強に集中するために封印したんじゃないのかって?今日は課題も出てないし、リアルタイムでくらい観させてよ!!



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