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12. お見舞い①




 《魔術師》の家の前でみんなと別れて、《暗殺者》とバス停を目指す。これから真白が入院している病院へ向かう予定だ。


 あの後、真白はどうやら《冥王》の手によって保健室に運ばれていたらしい。しばらくそこで眠っていたけど、大事を取って救急車で病院へと搬送された。検査の結果ではどこにも異常なかったらしいけど、学校が始まるまでは病院でしっかりと休むことにしたみたいだ。


 だから、あの日以来真白には会ってない。メールでも送ってみようかと何度か思い立ったけど、結局送らずじまいだ。入院中の相手にこっちからのメールや電話は控えるのが常識だろうし、私が連絡したら、またあの時のことを思い出させちゃうかもしれないし……。



 それに何より、真白の身に何が起こったのか知るのが怖かった。



 あの時、真白が《冥王》に連れていかれてるっていうのに、私……何もできなかった。力が及ばなかったとかそんなレベルじゃない。一歩踏み出すことすらできなかった。



 もし、真白の気持ちがすでに《冥王》に向いているとしたら……。



「奈美」



 名前を呼ばれるのと同時に手をひかれてはっとする。すっかり隣にいる《暗殺者》の存在を忘れちゃってたから、ちょっとびっくりした。


「ごめん、考え事してた。何?」


 立ち止まって《暗殺者》の顔を見上げる。そしたら、呆れたような感じでため息をつかれる。ぼーっとして注意力散漫になってたから呆れられちゃったのかな?

 なんて思ってたら、ぽんっと頭に手を置かれた。《暗殺者》の謎の行動に思わず首を傾げる。



「奈美だけのせいじゃないからな」



 ……え?あれ?今のって……明らかに慰めてくれてる、よね?や、てかなんで私が罪悪感でぺしゃんこになりそうなのばれたんだ?また心読まれた??


「前に罪悪感で押しつぶされるみたいなこと言ってたし、今まさにそんな状態なんじゃないのか?」


 あー……そういえば観覧車で話した時にそのことも伝えてあったっけ。脈絡なく喚き散らしてたのに、よく覚えてるな。そのこと覚えてるなら、潰れかけちゃってるの見抜かれるのもしかないか。変に誤魔化しても無駄っぽいし、開き直って認めとくか。


「まぁ、ちょっとね……」

「止められなかったのは事実だけど、自分のせいとか思うなよ。俺たちだって止められなかったのは同じなんだから」

「……けど、私は事前に色々と知ってたのに」

「知ってたことは、ちゃんと俺たちに伝えてくれてただろ?」


 ……うん、別に隠してたことは何もないし、知ってることは全部話してたよな。一度自分の中で再確認してからコクリと頷く。そしたら《暗殺者》の顔がふと優しげに緩む。


「だったら、俺たちはみんな同じ立場だったってことだ。だから、奈美だけが特別責任感じることないって。だいたい、あの《魔術師》さえこの事態を予想できてなかったんだ。あいつのイカれた頭でも無理なら、俺たちにできるわけないだろ?」

「……そうかも」


 《暗殺者》の言葉に自然と納得してしまう。確かに、私なんかのすっかすかな脳みそ使ったところで、《魔術師》にすらわからなかったことがわかるはずもない。考えてみたら当たり前のことだ。

 むしろ私のせいとか思うのって、ちょっとおこがましいレベルじゃない?うわっ、なんかそれ恥ずかしいわ!今すぐここに自分の墓場を掘り始めたいレベルだわ!!


「ははは、いつもの奈美に戻ったな」


 ……今度はおかしそうに笑われてしまった。羞恥心で思わず一瞬きょどってしまったせいだろう。てか、いつもってなんだ。いつもの私はそんなに挙動不審じゃないぞ!

 抗議の視線を送ると笑うのをやめて、こっちを見下ろしてくる。ずっと頭の上に置かれていた手を動かしながら目を細めて《暗殺者》は笑った。



「俺がいるんだし、1人で抱え込むなよ」



 ……頭ナデナデされてる。おまけにすっごい見守られるような感じで見られてるし。さっちゃん、そんな顔もできるのね。

 てか、一応私のほうが年上なんだけどなぁ。1年の差なんてうかがわせないなんてさすがは前世で老衰するまで生きただけはある。……おかげでちょっと気が楽になったかも。


「ありがとね、さっちゃん」


 お礼を言ったら、ついでに自然と笑顔になってた。うん、やっぱさっきまで感じてた重圧感がかなり軽くなってる。さっきまで心潰れるって思うくらい落ち込んでたのが嘘みたいだ。



 こんなに気持ちを楽にしてくれるなんて……ナデナデ効果すごいな。



 なんて思いながら《暗殺者》の顔を見上げてたら、その表情が今まで以上に優しげな笑みを浮かべた。



「奈美が元気ないと、俺まで元気なくなるから」



 うっ……ここでキラキラビーム発動かっ……。弱ってるところにすかさずその攻撃とはさすが百戦錬磨のナンパ師。励ましてもらった手前文句を言うのは控えとくけどさ、また邪念にとらわれちゃ大変から話は逸らさせてもらう。


「あー……あ、うん、そうだね、そうだよね。私が元気なかったら、余計に真白を心配させちゃうよね!」

「……」


 あ、一気に不機嫌な顔になった。あんまりやりすぎると怖いけど、ひとまずキラキラビームが消えたから良しとしよう。




 それに、私が落ち込んでたら真白を心配させちゃうっていうのは本当のことだしね!



 真白の前では落ち込み過ぎないように、気合いを入れて病院へ向かおうではないか!!!




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