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10. 裏庭②/《魔術師》の家①




 私が学園の校門にたどり着いたとき、すでにそのあたりには真白の姿はなかった。学園の中まで続くリリィの痕跡をたどって、学校の裏庭を目指す。

 校舎の角をまがってすぐのところに真白は立っていた。声をかけようと思ったけど、その言葉は最後まで続かなかった。真白が見据える裏庭の先。



 そこにあったのは、原型をとどめないリリィの死体だった。



 そこからは、なにが起こったのかうまく理解できていない。真白が聞いたこともないような声で鳴き声を上げて、突然地面大きく揺れて、青い光が見えて、真白が倒れこみそうになって、そして……。





 そして、奴が現れた。





 白衣を着た男性が真白の身体を支えながら、薄く笑ってこちらを見ている。ただそれだけなのに、動けない。普通に考えたらあいつが真白の体を支えているなんて、すぐに阻止するべき状態なのに、そんなこと思いつく余裕さえなかった。



 《冥王》が降臨してしまったという事実に、ただ立ち尽くしていることしかできない。



 そんな私から視線を外した白衣の男は真白の体を軽々と抱えるとこちらに背を向ける。私がやってきたほうとは反対側の校舎の角を曲がって、男と真白の姿は見えなくなった。



 ……真白は、どこに連れていかれたんだろう。やばい、追いかけないといけないのに、足が動いてくんない。



「だから、言っただろう?」



 背後から声がした。嘲笑の混じったその調子には聞き覚えがある。ゆっくりと振り返るとそこには予想通りの人物が立っていた。


「お、《王子》……」


 なんでここに?と問いかけようとした言葉は続かなかった。



 こちらを嘲笑うように見ている《王子》の両手が真っ赤だ。



 私の視線がそれをとらえると、《王子》はさらに口の端を吊り上げて笑う。こちらにゆっくりと歩み寄っみきて、丁度私の真横に来たところで、囁くように《王子》は言った。




「君程度がどうあがいたって何も変わらない……って」




 そういえば、文化祭の時にそんなことを言われたような気がする。そんなことを思うくらいで悔しいとか、怖いとか、そんな感情すらうまく感じられない。何もかも訳が分からなかった。



 勘弁してよ……誰でもいいからさ、何が起こったのか説明してよ……。



 困惑で機能を完全に停止させた頭を抱えたまま、私はその場に膝をついて座り込んだ。






 ■ □ ■






 真っ白な部屋に沈黙に包まれていた。



 今いるのは以前に訪れた《魔術師》の家の地下室。そこに《魔術師》、《吟遊詩人》、《女騎士》、《暗殺者》、私の5人がいるわけだけど、ここに全員が集合し終わってからも、誰も言葉を発そうとはしなかった。


 

 今日は真白が倒れてから3日目あたる。あの後、学校は急きょ休みになった。学園内であんな鳥の死体が発見されたんだから当然だ。警察の捜査も入って、猟奇的な殺人衝動のある人物の仕業かもしれないということで、このあたり一帯の見回りを強化されることになった。


 警察を呼んでくれたのは《吟遊詩人》だったらしい。実はあの後のことはよく覚えていないんだけど、さっちゃんの話によると、私は放心状態で裏庭に座り込んでいたそうだ。さっちゃんと一緒に駆け付けてくれた《魔王》と《吟遊詩人》もその場にいたらしいんだけど、全然気づけてなかった。それくらい、多分混乱してたんだと思う。


 警察に事情聴取されたり、精神科の診断を受けさせたり、昨日一昨日は結構散々だった。でも、そんなことしてたらちょっと混乱は落ち着いてきたと思う。それでも、誰かに説明してほしいって気持ちは変わらなかったけど。


 多分、その思いは《暗殺者》も《吟遊詩人》も一緒だったんだと思う。ってことで、情報交換と状況把握を兼ねたミーティングを《魔術師》の家で行うことになった。そして、現在に至る。



「まさか、本当に《冥王》が降臨するとは……」



 沈黙を破ったのは《吟遊詩人》のそんな言葉だった。多分、ここにいた誰もが同じような気持ちだったんだと思う。実際に《冥王》と対峙したのは私だけだけど、私だって未だに信じられないよ。

 ちょっと落ち着いて来た頃には、もしかしたら裏庭で見たのは白衣を着た普通男の人かも、とかも考えたけどそれは《暗殺者》たちによって否定された。明らかに、今までにはなかった《冥王》の気配を感じるんだって。


「起こったことを悔やんでも仕方ない。今は落ち着いて状況を整理して、今後のことを考えるべきだ」


 続いて口を開いたのは《魔術師》だった。その言葉に全員が一斉に頷く。

 落ち着いてきてはいるけど、頭がこんがらがってるのはあの時からそのまんまだ。おまけに、落ち着いたら落ち着いたでほかの弊害が出てき始めたんだけど……今はそのことは極力知らんぷりして、《魔術師》の話に集中することにしよう。




微妙なところで切っちゃってすみません。

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