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9. 裏庭①

残酷な描写があるのでご注意を。ここ飛ばしても話が分かるようにする予定です。








 必死に自転車をこいで、校門の前にたどり着く。電話では真白はこのあたりにいると言ってたはずなのに、校門の前にパッと見人影は見えなかった。さらに門に近づいて、門の脇に自転車がとまっているのが見える。



 真白の自転車!でも、真白は……!?



 自転車を降りて校門前の道を見渡す。その地面の上には、真白が言ってた通り黄色い鳥の羽が一定の間隔をあけて落ちていた。見るからに不自然すぎる。

 その羽は門へ向かって続いていた。それを目でたどって、その視線が学校の敷地内をとらえたところで思わず体がびくりと震える。



 地面に落ちてた羽が、学園の敷地内に入った途端、赤い斑点にとって代わる。



 ……あれ、血……だよね?これだけ羽千切られてリリィが無事だと思ってたわけじゃないけど……。



 夢の中で地面に広がっていく生暖かい液体が脳裏によみがえってくる。



 冗談じゃないよ。いよいよまずいじゃんか。てか、いくら電話で言ったからって、これを見た真白がじっとしてられるとは思えない。真白はやっぱり1人で学園の中に入っちゃったんだ。

 《暗殺者》が学校にたどり着くにはもう少しかかると思われる。それを待つなんて悠長なことしてられなかった。一度降りた自転車にまたがって、そのまま学園の中に突入する。グラウンドに転々と落ちた赤い斑点をたどって、学校の裏庭を目指す。



 間に合って!!!



 ともかく必死で自転車をこいで、校舎の角を曲がった。裏庭が視界に入ると、すぐに真白の姿確認できた。



「真白!!」



 名前を叫んでも真白はこちらを振り返ることはなかった。真白はじっと裏庭の先のほうを見ている。近くまでいって、自転車を乗り捨てる。じっと一点を見つめ動かない真白の肩に手を伸ばす。



「ましっ――――――」



 肩に手が届く距離まで近づいて、真白の視線の先にある光景が自然と私の目にも入ってきた。肩が触れるのと同時に、名前を呼ぶ声が途切れた。意図的にじゃない。反射的に、脳みそが口を動かす電気信号を送るのを遮断した。



 目の前に広がる光景は、それに十分な衝撃を持っている。



 日当たりが悪いせいなのか、裏庭にはまだたくさんの雪残っていた。地面が白いから、その色は余計に鮮明に浮かび上がっている。



 黄色と赤。



 まだ毛の残っている黄色い胴体部分。その胴体から切羽れた翼はほとんどの羽を抜かれて骨があらわになっていた。胴体の数メートル先には黄色くて丸いものが転がっている。多分あれは……。



 そこまでのことを認識して、吐き気が込み上げてくるのを感じた。



 口元を抑えて視線を逸らす。見ていられるものじゃなかった。鳥のバラバラ死体。二次元やドラマの中の再現とは違う。同じ次元で直接的に神経を刺激してくる目の前の光景に、身体が拒絶反応を示してるみたいだ。そんな状況の中で、他の何か注意を払ってることなんてできるはずもなかった。



「いやあぁぁあぁ!!!!!!」」


「っ!真白!!」



 叫び声でようやく我に返る。同時に自分がなんでここにいるかも思い出して、私は急いで真白に駆け寄ろうとした。いつのまにかリリィの死体の近くまで移動していた真白は叫びながら地面に膝をつく。

 ただでさえ残虐な光景だっていうのに、あんな姿にされてるのが自分のかわいがってたペットだっていうなら、真白への驚愕と悲しみは私が感じたのとは比べ物にならないものだろう。

 なんて声をかけたらいいかなんてわからないけど、ともかくこの場に居続けるのは真白にとって良くない。ひとまず場所を移動して落ち着けないと……。

 そう思って真白に近づこうと一歩足を踏み出した時だった。



 ガクンッと、地面が大きく揺れた。



 地震にしてはおかしな揺れ方だった。まるでエレベーターが緊急停止したようなそんな感じ。不信感を覚えた途端、今度は視界の端で同時に裏庭の奥のほうで青い光が一度だけ強く明滅した。



 すべてのことが一瞬一瞬で、思考が追いつかない。一体、何が起こってるんだ?困惑しながら視線をさまよわせることしかできなかった。

 そうしている間に、真白の慟哭は止む。かと思うと、ぷつりと糸が切れたように真白の身体が地面に倒れに向かって倒れていった。身体を支えてあげないとと思うのに身体はとっさには動いてくれなかった。真白の身体が地面に倒れこむ。



 その体が地面に触れる前に、真白を支える腕があった。



 真白が地面に倒れてしまわなかったことにほっとする。だけど訪れた安堵は一瞬だけだった。








「やっと、会えたな」






 

 !!!こ、の声はっ……!!



 反射的に顔を上げる。




 声の主の姿を視界にとらえて、確信と絶望が一気に押し寄せてきた。








 真白を支えているのは白衣を来た男性。



 あれは……《冥王》。








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