7. 冬休み:初詣②
神社に到着して参拝の列に並ぶ。お昼近くだから丁度空いてる時間に当たったのか、そんなに待たずにお参りすることができた。去年よりも入念にお参りしたし、これで今年は健やかに過ごせるはずだ。
「奈美は何をお願いしたんだ?」
「もちろん合格祈願。今年は受験の年だからね。あとは家内安全かな。さっちゃんは?」
「恋愛成就」
……聞くんじゃなかった。
「さて、おみくじをひこう」
うさん臭い笑顔を浮かべている《暗殺者》を放っておいて、さっさとおみくじを売ってる場所に向かう。後ろからぶーたれる声が聞こえてくるが、それはいつものごとく無視だ。
人ごみをかき分けて、おみくじ売り場に向かう。ぐぐっと念を込めて~~~……とりゃ!これだ!!!お金を払って売り場を離脱。人ごみの少ないところに避難しておみくじを開けてみることにする。
さてさて、今年の運勢はどんなもんか―――――――
……え?
「奈美?どうしたんだ?」
う、うそでしょ……まさか、そんな……!!!」
「固まってどうしたんだよ?そんなに結果悪かったのか……って、大凶じゃん」
いやーーー!!口に出して読むんじゃないよ!え、てか、やっぱりこれって大凶?私が見ている幻じゃなくって、間違いなく大凶ってこと!!!?
「へー、初めて見た。ラッキーだな、奈美」
ははは、と楽しげに笑う《暗殺者》。そんな笑い声、私にはまったく届いてなかったんだけどね。襲いくる絶望感に手が震える。
いや、大凶だからって全部が全部だめってわけじゃないかもしれない!しっかりと中身を読んで見るべきだよね!えっと、まず総括は……。
”どんなにがんばってもすべてが空回り。何もしないのが吉。”
何それ……?もうどうしようもないってこと?頑張らせてもくれないとか、終了のお知らせじゃん!
「にゅ、入試がある年に大凶のおみくじ引くなんて……おわった……私の人生終わった……」
「たかがおみくじだろ?心配するなって」
思わず地面に崩れ落ちた私の肩を《暗殺者》が笑いながらぽんぽんとたたく。まぁね、私だってたかがおみくじだって思おうと思えますよ。何もしないのが吉なんて、本当に勉強一切しなかったら受験失敗確定だからね、そのくらいわかっていますよ。
ただね、去年といい修学旅行といい、この世界のおみくじ、やたらニアピンしてくるから怖いんだよ。
……これ、なんかのフラグじゃないよね?
だとしたらシャレにならないよ。ほんとやめてね。受験落ちるフラグだったら、私泣くよ?せっかく漫画もアニメもゲームも封印して頑張って勉強してきたっていうのに、それが全部水の泡とか泣いちゃうよ?立ち直れなくなっちゃうよ??ホントそれだけはやめてくれーーーー!
「!!!」
背中を駆け抜けた寒気に、とっさに顔を上げる。立ち上がって振り返ると、その視界の端に見覚えのある顔が写った。
あれは……《王子》……?
「どうした?」
突然顔をあげた私に、《暗殺者》は驚いた様子で尋ねてくる。それにこたえる前にもう一度あたりを見渡すけど、見えたと思った《王子》の姿はどこにもなかった。
「……今《王子》がいたような」
「俺は気付かなかったけど」
視線を鋭くしながら、《暗殺者》も辺りを見渡す。だけど、やっぱりどこにも《王子》の姿は見えなかった。
見間違い……だったのかな?あんな無駄にキラキラしてる人、間違える気はしないんだけど……これだけの人ごみだし、気のせいだったのかもしれない。
おみくじだけでも嫌な予感ひしひしだっていうのに、《王子》の幻覚まで見ちゃうなんて……。
新年からついてなさすぎだ。
お願いだから、滅多なことが起きませんように。
久々にすごく短くなった。すいません。




