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1. 全校集会/屋上




「この度次期生徒会長に選ばれた武蔵野勇気です。選ばれたからには責任をもって―――――」



 体育館のステージにたってそう挨拶をするのは我らが《勇者》。ゲームでは《勇者》が生徒会長になるなんてルート一切存在してなかったんだけどね。まぁ、この世界が【ゲームの中】じゃないっていうなら、何でもありだよね。



「この度次期副生徒会長に選ばれた真白清華です。生徒会長である武蔵野君と協力して―――――」



 《勇者》に続いて挨拶をする真白。以下同上。2人のハイスペックさと人気度合いを考えたら、当たり前の結果だけど。



「平野君は本当に何も役職につかなくて良かったのかい?」

「いいのいいの」


 私と同じく、ステージのわきから真白と《勇者》の挨拶を聞いていた《女騎士》が尋ねてくるので、適当に返事をしておく。入学当初からの初期メンバーってことで、役職に就くのを生徒会長にも打診されたが丁重にお断りさせてもらった。生徒会長と副生徒会長以外の役職はあってないようなもんだし、平々凡々代表な私には平要員がお似合いってもんだろう。ちなみに《女騎士》は書記に選ばれた。この人字がきれいなんだよね。



「はぁ、やっと終わった」



 全校集会が終わって教室に戻りながら大きなあくびとともに伸びをするのは《暗殺者》。学校にも真白にも《勇者》にも特別興味を持っていない《暗殺者》にとってはさぞ退屈な時間だっただろうね。


「てか、前も言ったけどさ、さっちゃんも生徒会に入れば良かったのに」

「冗談。そんな面倒なもん引き受けるわけないだろ」

「文化祭の時はかなりいい働きしてくれてたじゃん」

「奈美の手伝いじゃなかったら、あんなこと絶対しない」


 あーあ、なんかまた不機嫌そうにそっぽ向いちゃった。結構律儀なとこあるし、向いてると思うんだけー。これでもう少し協調性があったら本気で推したんだけど。


「んじゃ、また昼休みな。俺が来るまで教室から動くなよ」

「はいはい」


 2年A組の前で別れて、さっちゃんは自分の教室に戻ってくる。1年の教室が一階で2年の教室は二階なのに、わざわざここまでついてきてくれるんだよねー。今日の昼休みは屋上でご飯食べようってことになってるから、迎えに来てくれるなんだろう。ほんと、変なところで律儀な奴だよ。




 ■ □ ■




 お昼休みになりました。今回は《吟遊詩人》にも時間を合わせてもらって久々の《勇者》・《魔王》パーティ全員集合。最初にこれしたのって夏休み明けだったから、3か月ぶりくらい?なんかすごい昔のことに感じるわー。あの時と比べると色々と状況も変わってるしね。



 特に、この2人の変化は顕著だ。

 


「昇、昨日の試合みたか?」

「当たり前だろ。なかなかいい試合が多かったな」

「だよなー!特に俺としては3試合目の―――――」



 楽しそうに隣り合って盛り上がる2人。おそらくだが、昨日行われた格闘技戦の話をしているんだろう。共通点なんて全くなさそうだなと思っていたが、そういう話は合うらしい。そういえば、修学旅行の時も、博物館で昔の武器とか防具とか2人して熱心に見てたしな。

 おまけに、先日の私の謀りごとによって完全に仲間だったことを思い出した《勇者》と《魔王》は急激に仲良くなった。《勇者》なんて《魔王》のこと名前で呼び出したしね。もともと人懐っこい性格ではあるけど、切り替え早くてびっくりするわ。そんなのなれなれしい《勇者》の態度を許してる《魔王》にもびっくりだけど。



「2人ともすごく楽しそうだね」



 前回のよそよそしい感じが嘘のように盛り上がる《勇者》と《魔王》を見て、真白も嬉しそうに笑う。真白は優しいから2人の中がギクシャクしてたことを心配してたんだろうな。だから、今こんなにうれしそうなんだと思う。



 一方で、私の心境は非常に複雑だ。



 《勇者》と《魔王》が仲間だった時の記憶を取り戻したことは良いことだ。ただ、それが真白の記憶を呼び起こす手助けになるだろうっていう私の思惑は露と消えた。真白が記憶を思い出そうとすると頭痛や吐き気に見舞われることが分かったからだ。

 今も、真白が何も思い出さないことにがっかりしながらも、元気そうな真白を見てほっとしてる。記憶を無理やり取り戻そうとして倒れられたら元も子もないからね。



「全員集まったくらいじゃ何ともないみたいだね」



 《魔術師》がポツリという。その声に反応したのは私と《暗殺者》だった。

 文化祭以来、真白の記憶を下手に刺激しないほうが良いだろうって話になってたにもかかわらずこうしてみんなで集まってるのは《魔術師》の提案だ。


「文化祭の時みたいに、昔の出来事と直結することが起きたら記憶がよみがえりそうになるってことだよね」

「たぶんね」

「露骨なことを避けてれば、ぶっ倒れるようなことはないだろ」


 3人で真白の様子をうかがいながらそんな会話を交わす。本当は真白に《冥王》のことを思い出してもらって敵だって認識してもらうのが一番確実なんだけど……その選択肢は捨てざるを得ない。文化祭の時に話し合った通り、ひたすら真白が倒れたりしないように気を配るしかないってことだ。



 これまで以上にスタミナジュース作りに気合いを入れよう。絶対に真白を倒れさせたりしない!



「自分も標的にされてるってこと、忘れるなよ」



 ……人がせっかくかっこよく気合い入れてたのに、《暗殺者》に思いっきり水を差されてしまった。じと目で見てくる《暗殺者》を睨み返す。




 確かに最近何事もないからすっかり忘れてたのは事実だけどさ、ちょとくらいかっこつけさせさせてくれたっていいじゃんねえ?



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