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28. 修学旅行④




 喫茶店で待っていた男子たちと合流する。ついでなので、私たちも一息ついてから宿に向かおうということになった。


「ん?どうしたんだい、博臣。なんだか楽しそうに笑ってるけど、なにかあったのか?」


 《魔術師》の隣に座りながら、《女騎士》が不思議そうに尋ねる。

 確かに、あんまり気にしてなかったけど、《魔術師》が非常に普通の笑顔を浮かべている。いつも嫌味な微笑みをたたえている《魔術師》がこういう笑い方をする時って、心底楽しんでる時だっていうのを、去年の文化祭の時に思い知ったからな。……なんかいい予感はしない。


「まぁ、ちょっと面白い見世物があってね」

「見世物?」

「おい、余計なこと言うんじゃねぇぞ」


 《魔術師》を睨みつけながら《暗殺者》が不機嫌そうに言う。

 ん?ということは、なんかさっちゃん絡みで面白いことが起こったってことか?……それにしては、《勇者》と《魔王》は全然楽しそうじゃないっていうか、狼狽したような顔をしてるんだけど。


「ねぇ、何があったの?」

「いや……」

「別に、なんもなかったけど……」


 《勇者》と《魔王》に問い詰めてみたけど、2人はなんか不自然な態度で私から目を逸らすばかりだった。……一体、何なんだ?


「それより、早く注文するもの決めちゃえよ。あんまり時間ないんだろ?」

「あぁ、そうだね……」


 《暗殺者》にメニューを差し出されて、それを受け取る。それでこの話は強制終了となってしまった。

 んんん?なぁんか気になるんだけど……、ここで問いただしても誰も口を割りそうにないな。まぁ、男子たちは男子たちでそこそこ楽しんだってことなんだろう。《勇者》と《魔王》反応からして、下い話っぽいし。これ以上聞くのは野暮だよね。


「あ、すいませーん」


 真白が近くにいたウェイトレスを呼ぶ。まだ頼むものを決めてなかった私は、急いで決めねば!と神経をメニューのほうへ集中させる。おかげでこの時の男子たちの不審な態度への興味は、きれいさっぱりなくなってしまった。




 ■ □ ■




「なぁ、奈美」

「ん?」

「おみくじ、なんて書いてあったんだ?」

「……さぁね」


 喫茶店を出て宿に向かう途中、ものすごく楽しそうに《暗殺者》が聞いてきたので軽く流しておく。おいしいお茶を飲んで、恋愛成就の神社でのこと忘れかけてたところだったのに、いろいろ思い出しちゃうじゃんか!せっかく元旦のおみくじのことも今回のおみくじのことも、信じないことにするって決めてたのに!!

 や、てか元旦のおみくじで旅行はいいって言ってたのに、《暗殺者》ついてくるは、異様にドタバタするはで、そんなよくないし。やっぱ、あれ当たってないよ。……楽しいは楽しいんだけどさ。


 《暗殺者》のせいで蘇ってきたおみくじのことで悶々としていたら、あっという間に今日の宿にたどり着く。川沿いに建てられたこの旅館はかなりでかい。今日は修学旅行最終夜ということで、クラスの男子女子単位で大部屋で泊まることになっている。男子部屋とかでは定番の枕投げとかするんだろうな。

 なんて考えてたら、みんなあっというまに解散し始めた。私もみんなと軽く挨拶を交わして、最後に《暗殺者》に挨拶をする。


「じゃあね、さっちゃん。おやすみ」

「……あぁ、またな」


 んん?なんだ?今のあいさつ……。ホテルで別れてた時は”おやすみ”、が定番の挨拶だったよな?それに、なんか変な間があったし……最後の《暗殺者》の笑顔も引っかかる。

 楽しい修学旅行がもうすぐで終わっちゃうから、《暗殺者》も名残惜しいとか思ってのかな……?そういう柄じゃないけど、そこそこ楽しんでたみたいだし。あの人、登山以来ちょっと感傷的になってるのかもね。


「奈美ー、行くよー」

「はぁい」


 先を歩いていた真白に呼ばれて、《暗殺者》の後ろ姿から視線を外す。さっきの違和感はきっと気のせいだろうと思うことにして、私は真白を追いかけた。




 ■ □ ■




 ご飯を食べたあとはクラスごとにお風呂に入った。旅館にある天然温泉の大浴場は、1クラス分の女子が全員で入ってもかなり余裕があるほど広かった。温泉の温度も丁度良くて、ついつい時間ぎりぎりまで使ってしまっていた。おかげで指がしわしわだ。

 お風呂が終わると、旅館が貸してくれる浴衣に着替えて、みんなで布団を敷いてごろごろしながらおしゃべりをする。だいたい、この修学旅行のことを振り返るような話題が多いみたいだ。真白もほかのグループん女の子に混じっておしゃべりしてるから、私は端のほうで修学旅行の間に取った写真を整理する。たまにめっちゃボケてたのがあったりするから、それを消していく。



「それにしても、私たち、本当に鬼勢君たちと同じ学年でラッキーだったよね!」



 一際大きな声で言った女子の言葉に、全員の意識が集中する。幸い、うちのクラスには過激な《勇者》ファンはいないので、今の言葉に反発する人はいなかった。むしろ、みんなその話題に乗っかりたいのか、真白が話していたグループのほうにみんな集まっていく。


「ほんと、この年に生んでくれた両親に感謝だよ」

「うんうん!特に今日の警備隊のコスプレは、最高だった!!」

「それ、聞いたよ!忍者と戦ったりして物凄くかっこよかったって!」

「私たちも見たかったー!」

「なんで1日目に行っちゃんたんだろう……」

「ねぇ清華、また写真見せて~~」

「いいよ」

「「「きゃーーー!」」」

「鬼勢君かっこいい!!!」

「武蔵野君……素敵すぎる……!」

「真白さんもすごくきれいだねー……」

「女の子でもドキドキしちゃうよ」

「ありがとう」


 真白がスマホで写真を見せると、女子たちから黄色い声が上がる。うっとりと写真を眺める人もいれば、その場にいなかったことを激しく後悔する人もたくさんいた。

 今日その場に居合わせた人たちは、うちのグループを朝からつけるような行動してたし、作戦勝ちとしか言いようがないよね。見れなかった人たち、ドンマイ。 

 写真のチェックの片手間で嘆く女子たちにエールを送る。けど、私のスマホに入っている戦闘中のビデオや写真は見せてあげたりしない。《勇者》たち説得するの結構大変だったんだから。そんな易々と見せちゃったら、私の努力が報われない気がするしね。



奈美たちが恋愛成就の神社に言ってる間の男子たちの会話も、おまけ話とかで書けたらいいな。

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