表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/202

24. A組の教室




 昼休み、今日はA組の教室で真白と《女騎士》と《暗殺者》と4人でご飯を食べていた。屋上で《勇者》・《魔王》パーティが集結以来、さすがに毎回全員集合、というわけにはいかなかった。《吟遊詩人》は教師だから昼休みとはいえ仕事があるし、《勇者》は最近よく生徒会長に呼び出されているらしい。《魔術師》は相変わらず気まぐれで学校に来たり来なかったりしている。《冥王》について調べるのは切り上げるって言ったのに、何してんだろうね?んでもって《魔王》は……。



「真白君は、自由時間に誰と回るか決めたのかい?」



 《女騎士》の真白への問いかけで、いったん思考が途切れる。ついつい意識をそちらにやっちゃったのは、その話題が2週間後の修学旅行のことだったからだ。2年の2学期、登山と文化祭の間に修学旅行があるのは毎年のことらしいが、こっちとしては勘弁してくれというスケジュールである。

 普通の生徒はともかくとして、私たち生徒会メンバーは修学旅行が終わるなり、怒涛の文化祭の準備に取り掛からなければならない。去年の2年の先輩たちが疲れがとり切れないまま仕事に勤しんでいるのを知っているから余計に憂鬱だ。

 修学旅行自体は楽しみなんだけどね。お金持ち学校だから海外でもいくのかなーと思ってたら、定番の国内最古の古都に行くって聞いたときはちょっと拍子抜けしたけど、そこに行ったことのない私としてはうれしい行先だ。


「うん。奈美と勇気君と約束してるよ」


 《女騎士》の問いかけに真白は笑顔で答える。


「私と博臣も一緒にいいかい?2人でと思ってたんだが、さすがにそれは嫌がられてな」

「児玉君も照れ屋だよね」


 ふふふ、と楽しそうに笑う真白。すごくかわいい。それにしても、……あのツンツンツンツンにおまけによじれまくった性格の《魔術師》を”照れ屋”なんてかわいい言葉で形容しようとするのは、きっと真白くらいだろう。さすがだ。


「鬼勢君はどうなんだ?」

「うーん、誘ったんだけど、1人で回るって言われちゃって……」


 真白はちょっと残念そうな顔をしながら肩を落とす。修学旅行の話がホームルームで出るようになってからすぐに真白は《魔王》を誘ってたんだけど、断られちゃってたんだよね。真白の誘いを断るなんて、なんて奴だと文句を言ってやりたいところだけど、《魔王》の事情もなんとなく察しちゃってるからそういうわけにもいかなかった。

 《魔王》はみんなで一緒にお昼を食べて以来、たまに顔は出すものの、あまり一緒にいようとはしない。一緒にいてもちょっと気まずそうというか、なんか思い悩むような顔をしてることが多い。もしかしたら、記憶を取り戻したことで思うところがあるのかもしれない。《暗殺者》に対しても若干よそよそしいしね。


「小夜時雨君もいたら、きっと一緒に回ってくれたと思うんだけど」

「そうか、小夜時雨君は一学年下だったな」


 ずっと無言で黙々とご飯を食べていた《暗殺者》に真白と《女騎士》が視線を移す。その視線に気が付いて、一旦はしを止めた《暗殺者》だったけど、何も言わずにまた食べるのを再開した。

 うん、本当にね。このでかい態度のおかげでついつい忘れちゃうけど、この人一応後輩なんですよ。


「奈美がしばらくいないから、すごく寂しいんじゃない?」

「うん。まぁ」


 ……相変わらず、真白にでさえ無愛想で適当な返事しやがって。せめてはしを動かす手を止めて、真白の目を見て返事をしろよ!!

 なぁんて、心の中で苛々しながら《暗殺者》を睨みつけていたから一瞬気づくのが遅れたんだけど、平然と昼食を続ける《暗殺者》を《女騎士》がきょとんとした表情で見つめている。

 ん?どうしたんだ、《女騎士》?なんか、豆鉄砲くらったような顔してるけど……。


「……」

「……何?」


 《女騎士》の視線が煩わしかったのか、睨み返しながら不機嫌そうに問いかける《暗殺者》。だから、先輩に対して態度悪すぎだから……。さすがに突っ込んでやろうと口を開きかけたら、なぜか《女騎士》が楽しそうに笑い声をあげた。

 ん?どうした?今なんかそんな笑うようなとこあった??首を傾げながら真白を見ると、真白もわけがわからないという顔でこちらを見返してくる。


「いやいや、気にしないでくれ」


 ひとしきり笑った《女騎士》は訝しげな顔をする私と真白に言う。気にしないでって言われても、すごく気になるんですけど。じとめで《女騎士》を見ていたら、彼女は微笑ましい、といったような笑顔を浮かべて《暗殺者》を見る。



「1つ言っておくとすれば……私は君の味方、ってことかな」


「……」



 ん?この場合の”君”って《暗殺者》のことだよね?《暗殺者》は《女騎士》の言葉の意図をわかっているのかいないのか、さらに不機嫌そうに顔を歪めて《女騎士》を睨む視線を鋭くする。

 ……一体、なんなんだ???


「翔子?何の話をしてるの?」

「ふふふ、秘密だよ」


 真白の問いに対しても、《女騎士》は楽しそうに笑って誤魔化すばかりだった。その度に《暗殺者》の顔が凶悪に歪んでいく。だから、先輩をそんな風に睨むのはやめなさいってば。


 

 それにしても、今のやり取りは本当に何だったんだろう?楽しそうに笑う《女騎士》を不機嫌そうに睨む《暗殺者》。《女騎士》は何かを悟ったような言い方をしたけど……。




 ……ひとまず、あんまりいい予感がしないのはなんでだ?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ