13. 悶えました。
7/1 改稿しました。内容が微妙に変わってます。
辺りは真っ暗だった。たまに赤い揺らめきが空間の向こうに見える。
……あり?なんだこりゃ?
んとー、なんでこんなところにいるんだ?えとー、えとー……。明日は入学式だから早く寝なきゃなーと思ってたのについついゲームしすぎて日付が変わっちゃって、いい加減寝ようって決意を固めてから1時間後にやっとベッドに入ったから……。
なるほど、これは夢か。
納得しつつ辺りを見渡す。夢は高確率で見るほうだが、どんなにへんてこな夢を見ても普段は夢と気付けないので、なんか変な感じだ。目覚めるには頬をつねればいいのかな?ジャイアントコスメティックモススライムが出てきたら、即行で頬をつねろう。
そんなことを思っていたら、遠くのほうに白い光がぼんやりと見え始めた。
ひとまず光のほうに近づいてみることにする。根っからのビビりではあるが、好奇心のほうが勝ってた。まぁ、夢だしね。怖くなったら起きればいい。
しばらくすると光は大きくなる。
そして、その光の中心にいるのが真白だと気づいた。
真っ白い服を来て、なんだか少し体は宙浮いて髪の毛とかもふわふわなびいている。真白は眠っているのか目を閉じていた。目を閉じててもすごく可愛い。それにしても……うん、なんだかすごい《聖女》っぽいな。これが私の真白への《聖女》のイメージなのかな?まぁ、私の夢だし起こしてみるか。そう思って、真白に近づこうとした。
途端、真白の背後から、闇が現れる。
ただでさえ辺りは暗かったのに、それを上回る黒さだ。まさに漆黒。その闇がこの空間唯一の光である真白を取り込む。
まるで、闇が真白を背後から抱きしめるかのように。
しかし、なんだあの闇。真白の体にまとわりつきやがって。世界中とまではいかなのかもしれないが、この街の男全員を敵に回すこと請け合いだぞ!離れろ離れろ!!
『……の時を、……ってぃ……』
「え?」
声が聞こえた?と思ったら、闇がいつの間にか私の体の周りにもまとわりついていた。一瞬のことで声もでない。お、起きなきゃ、って思ってるのに体が動かなかった。
なななな、なんだこれ!?起きろー!私、起きろーーーー!!今、今起きるんだ!!!
一生懸命心の中で叫んでたら祈りが通じたのか、意識が遠のいていく感じがする。真白の姿もその周りにある闇もだんだんとぼやけてくる。現実の私が目を覚まそうとしているのかもしれない。
あー、よかった。なんかよくわかんないけど、なんかヤバそうな感じだった。……てか、あの声。確かな振動をもった深みがある、囁かれただけでイけそうともっぱらの評判だったあの低い声は………まさか、
『今世でキミを、手に入れる』
「!!!!!」
体がびくりと跳ねた。そんな自分の体の動きで完全に覚醒する。なぜか汗ばんで息があがっていた。でも、正直それすら気に留められていられなかった。
目を覚ます直前に聞いた声の余韻が耳元に残っている。全身に鳥肌が立ち上がっていた。そして、私の脳内はというと……。
のぉぉぉぉぉ!!!相変わらずなんっつーエロい声だぁぁぁあ!!!!
こんな感じで、完全に犯されていた。
いや、てかね、あの声は本当いかんて。なんでただ夢見てただけで、囁かれただけで、なんか親に言えないようないけないことした気分になるのってなんなの?私全然そんないかがわしいことなんてしてないよ?いかがわしいのはあの声だ!エロの塊だ!!
なんて、1人でベッドの上でのたうち廻ってたら、セットしてた目覚ましのアラームが鳴った。よかった、このアラームがなかったらあと小1時間ぐらいは悶えているところだった。
いやー、でもいいもの聞いた。やっぱ《冥王》の声はあれでなきゃ……。
「え?」
目覚まし時計のアラームを消そうと思っていた手を止める。興奮してたけど、なんかすごいまずい気が今更してきた。
夢で聞いた声は、私が前世で大好きだった声優さんの声。囁き声がエロすぎると多くの女性たちを悶えさせていた彼の声。その声を夢の中でも聞けたのはとてつもなく嬉しい。けど……。
つまり、それってあの声は《冥王》ってことでもあるんですよね。
何度も【今キミ】の世界を滅亡させていた私が聞き間違えるはずもない。確かにあれは《冥王》だった。まぁ、でも夢って記憶の整理とか言って、自分の記憶のつぎはぎからできたものっていう説もあるし、欲求不満すぎてあんな夢見たのかな?
「でも、なんで《冥王》が【今キミ】のタイトル知ってるんだろう?」
それも、私の記憶がつぎはぎされた結果だろうか?うーん、しかし《冥王》がいうとタイトルにも重みとエロさが乗って半端な……(思い出し中)。
にょぉぉぉぉぉぉ!!!
こうして、私は9割7分の萌えと、3分の嫌な予感で入学式の朝を迎えることと相成った。