12. 入学手続きに行きました。
7/1 改稿しました。内容が微妙に変わってます。
私の合格には両親もそれはもう大いに驚いていた。見間違いじゃないかと、合格発表から1週間経っても聞かれ続けた。私も私で両親に言われるために「もしかしたら夢!?」と思ってビビりまくっていた。
やっと合格が夢じゃないと思えたのは、真白と一緒に入学手続きをしに学園に行った時だった。”入学の手引き”や入学式までに揃えておかないといけないもの一覧など、いろんな資料が入った袋をもらって、私と真白は学園の裏に来ていた。
入学手続きはしたとはいえ、まだ部外者である私たちがうろちょろするのは憚られたが、私はどうしても1つ、見ておきたいものがあった。
「あ……本当に、あった」
「きれいだね」
学園裏には校舎と門の間にかなり広いスペースがある。その一角に立っている、白いオブジェ。それは2メートルほどある角柱で、上に行くほどだんだんと細くなっていく、そして一番てっぺんはペタンコの三角錐の形をしている。
サイトによれば創立を記念して作られたごく普通のオブジェらしいが、このオブジェには面白い噂がある。実はこのオブジェ、”大空石”というかなり希少な石で作られているとういのだ。もしそれが本当ならゼロがぱっと見では判断できないほどたくさんついた金額になるらしい。よって、そんな希少な石のこんな大きな塊が学園の一角にあるはずない、といういわゆる都市伝説レベルの話らしかった。
が、私はもしかしたらその噂はまるっきりの嘘ではないんじゃないかなと思う。
なにせ、【今キミ】の告白場所となるのが、このオブジェの前なのだ。
このオブジェの前で愛が通じれば創造主の加護を受ける、という噂がゲームの中ではあったのだが、この世界でも同じ噂が流れているようだった。
3年後、真白はここで、ゲームの通り誰かから告白されるのだろうか?
……まぁ、きっとここがゲームの世界じゃなかったとしても、こんな可愛い真白を男子たちが放って置くはずない。3年後と言わず、入学したその日から告白の嵐が真白を襲うに決まっている。
私の3年後は……切ないので考えないことにしておく。いいんだいんだ!私はこの学園でしかり勉強して、いい大学に入って楽にお金を稼げる仕事を手に入れるんだから!!
「もう満足した?誰かに見つかる前に帰ろうよ」
「あ、そだね」
真白にそう言われて、我に返る。いかんいかん、私はともかく真白に無断で校舎をウロウロしてた常識のない中学生なんてレッテルを貼らせるわけにはいかん。誰にも見つからないように早いとこ立ち去らなけば……とわかってはいるのだが。
んー………何も起きない、かな?
私は腕組みをしてひたすらオブジェを見つめていた。「もう」っと言ってしびれを切らした真白が私の手を引いて歩き出す。うん、ちょっと怒った顔も可愛いったりゃない。
しかし、何か起こるかと思っていた私の期待は見事に裏切られた。こういうキーオブジェクトの近くに重要キャラが近づくと何かしら反応があるのがセオリーだと思ってわざわざ真白を連れてきたのだが……何も起こらなかった。幻聴くらい聞こえるかなーと耳もすましてたんだけど、それらしきものは聞こえてこなかった。
ま、さすがにそんなベタな展開起こらないか。私は校舎の角を曲がってオブジェが見えなくなってから、ようやくそう思って諦めることにした。




