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12. 放課後②




「あ、博臣のことだけど、テスト期間中は機嫌悪いと思うから、成績発表のときに話しかけるのが一番だと思うよ」

「わかった、ありがとう」



 教室を出ていく《女騎士》を見送る。わざわざ《魔術師》のことを伝えに来てくれるなんて、本当に《女騎士》は気が利くなぁ。《魔術師》には勿体なさすぎる人格の持ち主だよ。……いや、あれくらい聖人君子な性格じゃないと《魔術師》の相手は成り立たないか。

 ともかく、《魔術師》の登校は朗報だ。テストが終わった順位発表の時にでも話しかければちょうどいいかな?それはまで、私はテスト勉強に打ち込むとしますかね。



「さて、帰ろう」

「じゃあ、俺も帰ろう」



 荷物をもって立ち上がった私と一緒に《暗殺者》も立ち上がる。まさか……こいつ、また途中までついてくるつもりじゃないだろうな?



「私は真白と帰るの」

「真白サンは昇が送っていくってよ」

「え!?」



 突然名前を出された《魔王》が驚きの声を上げる。

 あれ?さっきまでサボって教室にいなかったはずなのにな。帰るために鞄を取りに来たのか?こんなタイミングで帰ってくるなんて、なんと間の悪い……。

 《魔王》に気を取られてる間に、《暗殺者》が私の手元にあった鞄を素早く奪い去る。そして、そのまま教室を出て行ってしまった。



「んじゃ、そういうことで」

「ま、真白っ……!」

「えっと……また明日ね」



 真白に助けを求めるも、どうも真白は私と《暗殺者》の邪魔をしてはいけない、って感じで思っているらしく、なんかすごく微笑ましいって感じの笑顔で手を振られてしまった。

 こ、ここは盛大に邪魔してくれていいところなのにーーー!!!でも、真白と《魔王》が2人で帰るのを邪魔するのも忍びないし……くそっ、これじゃあ《暗殺者》の思う壺だけど、仕方がないから《暗殺者》を追うしかない!



 てか、鞄取り戻さないと、テスト勉強できないし、私に選択肢は残されてないんですけどね!



 《暗殺者》を追いかけていくと、やっと靴箱のところで奴に追いついた。すでに靴を履いていた《暗殺者》は、私の姿を確認するとさっさと門のほうへと歩き始める。慌てて靴を履いて追いかけて、門のところで鞄を奪い返すことに成功した。



「遠慮しなくても、俺が持っててやるのに」

「結構です!てか、もうはっきり言っちゃうけど、付きまとわれると迷惑なんだけど!」

「なんで?」

「見てればわかるでしょ!?私はクラスで浮きたくないの!なのに君みたいな猛獣が私の近くにいると、君のことが怖くて、みんな私のことを避けてくの!」

「俺がいるからぼっちになることはないだろ?だからいいんじゃない?」

「私は猛獣使いに転職した覚えはない!」

「猛獣使いねぇ……。俺は奈美のペットじゃなくて、彼氏になりたいんだけどな」



 だーかーらー、論点そこじゃないって。一生懸命この国の共通語を話ってるっていうのに、なんでことごとく論点がずれちゃうの?何言ってもこんな調子だし……ホントこいつ相手にしてると疲れる。



「まったく……からかって遊びたいなら、他をあたってよね」

「遊びでこんな面倒なことしないって」


 にっこり笑う《暗殺者》。うさん臭すぎて、そこに関しては突っ込む気力ももうないわ。


「たとえ本気だとしても無理。ゴメンナサイ」

「なんで?」

「タイプじゃないから」



「え?俺ってどっちかというと昇と同じ系統じゃない?」



「な、なんでそこで《魔王》の名前が出てくるんだ……!?」

「ずっと奈美のこと見てた俺の目を誤魔化せると思ってんの?てか、割とわかりやすかったと思うけど」



 え?わかりやすかったって何が?まさか、こいつ私が《魔王》のこと好きだとでも思ってるのか!?


「や、《魔王》に対するこの感情は雨の中捨てられて助けを求める犬に抱くような、2.5次元的な感情でして……」

「よくわかんないけど、俺、そういうの気にしないから」

「は?」



「すぐに俺のほうが大好きでたまらなくさせる自信あるし」



 えっとー……。ちょっと待ってね。突っ込みどころがたくさんあるのはわかってるんだけどね、今まで周りにいた人たちのボケとまったく方向性が違ってて、どこから捌いていけばいいのか咄嗟に判断できないわ。てか、もうなんかいちいち突っ込むのも面倒くさすぎるわ。ここはなんも聞かなかったふりして、トンズラしておこう。



「ともかく!君みたいにジャラジャラしてるのは私のタイプじゃないんだよ!だから無理!以上!!」



 それだけ言い残して、私はさっさと帰路に着く。追いかけてくるかなー、と思ったけど、どうやら私の最後のセリフが聞いたらしく、しばらくして振り返ってみても、そこに《暗殺者》の姿はなかった。



 あー、疲れた。なぁんであんなのに目をつけられちゃったかなぁ……。《魔術師》にも脳みそを狙われてるけど、《暗殺者》はあからさまに引っ付いてくるから予断ならん。まぁ、適当にあしらってれば、そのうち飽きて離れていくと思うけど。

 しかし、からかうにしても質が悪いよな。私の好みではないとはいえ、整った顔してる《暗殺者》にあんな風に言い寄られて落ちない女の子なんていないだろう。んで、落ちたら落ちたで、もうおもろくないからってポイッとかしそうだし。私に対する興味もそんなもんなんだろう。

 だが、生憎私はそんなのに引っかかるような乙女思考は持っていない。中身も一応大人だから、見た目だけで相手を選ぼうなんて考えないしね。

  


 はぁ、早いとこ私をからかって遊ぶのに飽きてくれないかな。

 



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