11. 合格発表の日になりました。
7/1 改稿しました。内容が微妙に変わっています。
まじ、か。
「……………………あ、った」
ぶるりと、寒気が走った。そのはずみで手に持っていた受験番号表が落ちる。
「あった……。真白!私の番号あったよ!!!」
「きゃー!おめでとう、奈美!!!」
隣で一緒に私の番号を探してくれていた真白に思わず抱きつく。まだ身体中に鳥肌が立ちまくって虫が這いずりまわるような感覚が皮膚を駆け巡る。
それくらい、驚いていた。絶対、絶対落ちたと思ってたから。
「だから、心配ないって言ったでしょ?なのに奈美ったら心配性なんだから」
「だ、だって……数学ボロボロだったから……」
受験が終わった後、数学が全然ダメだったと今日この日までぐちぐち言い続けていた私に、真白がおかしそうに笑っている。そりゃそうだよな、真白の前なのに思いっきり「詰んだ」とか「世界の滅亡だー」とかひたすら呟いてたもんな、私。そんな私を見捨てないでいてくれた女神・真白に感謝せずにはいられない。
「これで私たち聖亜細誕巫亜学園に入学できるね!」
ぎゅっと両手を握って真白が本当に嬉しそうに笑っている。この笑顔は私がまだ「真白さん」と真白のことを呼んで、真白が私のことを「平野さん」と呼んでいた頃と全く変わらない。……うん、まぁ1年弱しか経ってないから、そう簡単に変わんないんだけどさ。ちょっとそういうこと言ってみたくなったんだよ。
お、ちょっといつもの調子が出てきた。よしよし。驚きすぎて一瞬キャラを見失うところだった。うん、大丈夫。私は42年のオタク歴を持つ平野奈美で間違いない、うん。
しかし、人間やればできるというのは本当らしい。聖亜細誕巫亜学園の受験を決めて以来……正確には真白から「一緒に勉強をがんばろう」と言われて以来、私はそれこそ前世でも経験したことがないくらい受験勉強に打ち込んだ。勉強しまくった。漫画、ゲーム、アニメは金庫に封印して頑張った。
そこまでして頑張れたのは一重に真白のおかげだ。真白は常に笑顔で勉強に誘ってくれた。私がこっそり先に帰ろうとしても、私がこっそり古本屋に立ち読みに行こうとしても、私が欲望に耐えきれずに金庫に手を伸ばした時も、真白はその場に現れたり、メール送ってきたり、電話してきたりと、どこかで見てるんじゃないかレベルで、私を勉強に打ち込ませてくれた。
正直、真白が小悪魔に見えたこともあった。しかし言っておく。小悪魔な真白も、もちろん可愛い。
そんな感じで”平”の”並”な私が聖亜細誕巫亜学園の特待生枠で合格してしまった。
あ、正確には準特待生なんだけど……。やはりそこは”平”の”並”が突然、”特”なんてレベルにはいけないということなのか……。牛丼屋さんでも”並”と”特”ってすごい違うもんね……。
とととと、ともかくこれで入学金全額と、授業料半額は免除されるから、普通の公立高校に通うよりちょっと安いくらいの金額になったはずだ。全額免除とはいかなかったが、これで両親も聖亜細誕巫亜学園への入学を許してくれるだろう。
受験勉強を通してかなり仲良くなった真白と同じ学校に通える。それは万年ぼっちだった私の学校ライフを劇的に変えてくれるに違いない。考えただけでも心が躍る。この1年も一緒にはいたけど、受験であんまり楽しんだりする余裕はなかったから、これからが本当に楽しみだ!
「奈美、浮かれて入学手続きし忘れないように気をつけてね?せっかく合格しても、入学手続きしないと、学園には通えなんだから」
……忘れるところでした。浮かれてはいけない。そんなことをしたら今までの努力が水の泡になるどころか、今感じている喜びはぬか喜びとなり、後悔と羞恥で立ち直れなく自信がある。
それをリアルに想像して真っ青になった私に、真白がおかしそうに笑う。
「私が入学手続きする時に一緒に行く?」
「行く!」
真白について行けば間違いない。これで私の聖亜細誕巫亜学園入学は確定だ。
……いやっほーい!!!