表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/202

9. アミューズメントパーク⑥




「っははは……」



 ……え?



「あー、我慢してたけどもう無理。おかしすぎ」



 ……なんか、腹抱えて笑い出したんですけど。怒りのあまり、頭イッちゃったのか?



「昇から話聞いてて、変な奴だなって思ってたけど、やっぱあんた変な奴だった」



 おいおい、涙にじむほど笑いながら変な奴連呼するなんて、どんだけ失礼な奴なんだ。てか、《魔王》よ、《暗殺者》に私のことを一体どのように伝えたっていうんだ?

 まぁ、この様子だと無事に地上まで帰れそうだから良しとするか。


 しばらく、《暗殺者》は前かがみになって笑い続けた。何がそんなにツボッたのかはよくわからんが、笑いすぎでしょ。なんかここまで笑われるとさすがに腹立ってくるわ。



「あー、面白かった」

「こっちは全然面白くないんですけど」

 


「ごめん」



「え?」

「ちゃんとした事情も知らずに勘違いして、好き勝手言ったことは謝る」

「や……別に、謝ってくれるならいいんだけどさ……」



 笑うのをやめたかと思えば、座りなおしてこっちに頭を下げてくる《暗殺者》。

 いやいや、何?その態度の違い?そんなしっかり改まって謝られたら、拍子抜けしちゃうじゃん。



「許してくれる?」

「許すも何も、まぁ、こっちも言いたい放題言ったし、もう気は済んでるっていうか……」



「んじゃ、ここまでの諍いはこれでチャラってことで」



 ちょっと待て!今、こいつ思いっきり開き直りやがった!?たったこれだけのやり取りで、そんなすっぱりさっぱりきれいにこれまでのことをなかったことにする気なのか!?

 少ししおらしい態度取ったからって、下手に出たのが間違いだった……。なんか、ただ無口で不愛想だった時よりも質悪いわ。



「それにしても、一体何者かと思ってたら、異世界からの転生者ねぇ」



 こっちに身を乗り出しながら、《暗殺者》がまじまじと私の顔を眺めてくる。

 てか、さっさと話題変えやがったし。さっきのことは本当に終わったことにするつもりなんだな……。なんかちょっと納得いかないけど、話を戻したって仕方ないし、私も聞きたいことあるし、ここは何も言わずに《暗殺者》の話に乗っとくか。



「その前に……顔、近いんですけど」

「中身、28歳?」

「そうだけど……」

「全然そんな感じしねぇな」


 悪かったなぁ、大人の威厳が感じられない中身で!28歳まで生きましたけど、オタクこじらせてたような大人ですからね。威厳も何もないっつーの。


「私のことはどうでもいいでしょ!それより、私も君に聞きたいことたくさんあるんだけど」

「だろうな。だからいちいち俺の教室に来てたんだろ?」

「そうだよ。ことごとく逃げられてたけどね」

「それも悪かったって。誤解してたんだから仕方ないだろ?今ここでちゃんと答えるから」


 ニコリと笑って首をかしげて見せる《暗殺者》。そんなちょっとおちゃめな仕草してみたって、惑わされないっつーの。でも、観覧車降りちゃったら真白と《魔王》と合流しないといけないし、今は文句を言ってる場合じゃない。時間は有効活用しなければ。


「君は前世の記憶大体思い出してるんでしょう?それなのに、なんで真白のことを毛嫌いしてるの?」

「あぁ、あいつね……」


 また、真白のことあいつって言ったな!おまけに真白の顔を思い出しているのか、盛大に顔を歪めてるし。



「それがあたりまえ、って態度で周りにちやほやされてるのが気に入らないんだよ」



 その表情のまま、またも吐き捨てるように言って見せる。

 うーん……私に向けてたのよりかは多少ましだけど、今のもかなり嫌悪が込められてたな。でもさ、ちょっとその感情はお門違いだと思うんだけど。



「ちやほやされてるのが気に入らないっていう感情は何となくわかるけどさ、真白はスーパーかわいくてリアル聖女並にやさしいんだから、みんなが憧れたり好きになるのは当たり前じゃない?」

「俺に言わせてみれば、あんなのただの八方美人だろ。あんただって、それで苦労してるんじゃないの?」



 あ、今、ちょっと痛いところを突かれた……。わ、私は真白に対して八方美人なんて言葉を思い浮かべたことは…………あるような、ないような……。

 いや、でもそれは真白が悪いんじゃない!私も含めた、素敵な人に引き寄せられちゃう凡人の感覚がいけないんだよ!うん、そういうことにしとこう!!



「ま、まぁ……、《冥王》の付け入る隙を作らないためには、誰か特定の人とくっついてほしいなぁと思ってはいるけど……」

「だろ?《勇者》にも昇にもいい顔しやがって。あんな態度取られたら、昇だって諦めるに諦めきれないんだよ」



 なるほど、《暗殺者》が真白を毛嫌いしているのは、《魔王》のことがあるからか。まぁ、あのうじうじを私より近くで長く見ていたというのなら、もどかしくなる気持ちも分からなくはないな……。

 てか、こいつ、本当に《魔王》命!なんだな。ん?つまり、真白に対する感情って、実はやきもち……?ってことは、やっぱ《暗殺者》は……!!!



「あ、俺、ストレートだから」



 ……ふん、今更心を読まれたからって驚くまい。前世組にそういう能力があるのはもう散々目の当たりにしてきたのだから。



「俺の昇に対する感情は腐れ縁っていうか……昔のよしみで放っておけないとか、そんなとこだよ。前世ではかなり世話になったしな」

「まぁ、真白に関してはわかったけど、なんで私のこといちいち睨んできたの?嫌われてたのはわかってたけど、嫌いなら無視しとけばよかったんじゃない?」



 続いての大きな疑問を投げかけると、《暗殺者》はなぜか、ニコリと楽しそうな笑顔を浮かべた。



「ん?それは、睨んでビビってるあんたを見るのが面白かったから」



 え、ちょっと待て。おまえ、それ、本気だったらまたハンドバッグを顔面にぶち当てるぞ。



「っていうのは、半分冗談だけど」



 つまり半分は本気なんかい!つまりつまり、私のことおちょくって遊んだたってこと!?ただ単に嫌われてたってだけならともかく、おまけにおちょくられていたなんて……!!!




「あとの半分は異様に《聖女》に執着してるから、《冥王》の手先かと疑ってたんだよ」

「んなわけないでしょ、私はただの幼気なその辺によくいるモブキャラです」

「あんたみたいなのがその辺によくいてくれたら、この世の中ももうちょっと面白くなるのにな」



 それはどういう意味だ!?私がちょっとその辺にはいないくらい変わってるキャラだとでも言いたいのか!?平々凡々代表のモブキャラを捕まえて、こいつは何わけわからんことを言ってるんだ!心外すぎるぞ!!しかも、微妙な当回しな言い方が余計に嫌味っぽく感じる。


 こいつ、考えていたより8割増しで性格悪い。ゲームの中では無口で不愛想だけど純粋なキャラだったのに、その純粋さはどこ行ったの!?どこに置いてきちゃったの!!?《魔術師》と同じベクトルで残念すぎるわ!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ