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10/202

10. 将来について力説してみました。

7/1 改稿しました。内容が微妙に変わってます。




 全く誇張表現や比喩なしで、本当に真面目に考えてた。始業式の日はご存知の通り「受験なんて」なんて思っていたわけだが、前世の記憶を取り戻したことによって、私はその考えを改めた。

 学校によって勉強のレベルと質は驚くほどに違うのだ。そして、最終的には本人の努力が左右するとは言っても、教える相手が上手いことに越したことはない。そっちの方が同じ努力でも効率が違ってくる。

 そして、それはもうすでに高校レベルから発生している差なのだ。高校同士はわずかなのかもしれない。だが、3年終えていざ大学を目指そうとしたとき、所属している高校で目指せる大学の幅が決まることもある。



 もう一度言うが、最終的に本人の努力なのは間違い。


 だが、環境がいいに越したことはないということなのだ。



 前世の記憶を取り戻す前の私にはそれがわかっていなかった。もちろん、名前だけの学校に莫大なお金を払い、当人は全く勉強しないっていうよくある話は馬鹿らしいなと思うのは変わりないが、しかし、間違いなく環境のいい学校に行き、将来を見据えて勉強するためにお金を払うということは、いわば将来への投資と言える。

 


 そういった観点から考えてみると、聖亜細誕巫亜学園は非常にいい学校だった。



 学校のサイトや口コミなど、いろいろな情報を開いてみたが、卒業生のほとんどはトップクラスの国立大学へ入学し、社会人となって活躍している。「主な卒業生」という欄に名を連ねているのは、一流企業の社長や官僚、大学の教授たちだった。

 そんなの一部の人間の話だろう、と思うかもしれない。だが、「コネ」というのをバカにしていたら世の中は行きていけないのだ。例えば就職活動の1つに「OBOG訪問」というのがある。これは行きたい企業で働いている同じ学校出身の先輩に話を聞き、いつもどんな風に働いているか聞いたり、どんな人材をその企業が求めているか聞いてみたり、はたまたどうやったら就職できるかというアドバイスなどももらえたりするものなのだが、これを重視している企業は案外多い。

 つまり同じ学校を出ている先輩が優秀であればあるほど、そのコネの質も良くなるということだ。言っておくがそれが全てとは言わないし、先輩に媚びへつらえと言っているのではない。ただ、それがあればもしかしたら自分の望む道に案外入り込める確率が高まるのは間違いない。

 


 ……なんで私がこんなに力説してるかって?


 前世で失敗してるからですよ!



 せっかく前世の記憶戻ってきたんだからフル活用しないとね!あんま役に立つ記憶ないけどさ!……自分で言ってて切ない。ひとまず、同じ轍は踏まない。今回は将来の生業をしっかり定め、それに向かって一直線に突き進み、短時間労働でいいお給料もらいながら、漫画とアニメとゲームに好きなだけ時間をつぎ込む人生を送るんだ!




 あたりまえに規定の出社時間より早く出社し、


 法律では規制されてるけど実質は断れない残業でほぼ1日中働かされ、


 発売日に買ったのに時間がなくて開封すらできないゲーム思って泣く人生なんて、


 絶対繰り返さない!!




 と、言うわけで、私は自分の将来を真剣に考えた結果、聖亜細誕巫亜学園を受験することに決めた。受けるのもタダじゃないけど、高い目標に向かって頑張ることは悪いことではないはずだ。両親も驚いてはいたけど、奨学金補助枠に入れるなら大歓迎だと言って喜んでいたしな。


 そして、”冥王エンド”のことを考えてみても、受験に挑戦する意義はある。もし万が一、何をまかり間違ったか、本当に”冥王エンド”が起こってこの世界が滅亡した時、その可能性を知っていた私は何もしなかったことを後悔するだろう。だからせめて「学園に入ろうと試みた」という事実だけは残しておきたかった。じゃないと罪悪感に押しつぶされてで私の魂がその場で昇華してしまう。


 死んだ後だからそんなの関係ないって?魂が消えたらまた転生できるかもしれない可能性がなくなっちゃうかもしれないでしょ!今こうして実際転生している身としては、少しでもいいコンディションで次の転生を果たしたい。



 いや、転生が魂に関係してるとか、そもそも魂ってなんなんだ?って聞かれたら、わかんないんだけどね?



 まぁ、こんな経緯で私は聖亜細誕巫亜学園受験を決めたのである。






「あ、平野さん?どうだった?」



 教室に帰ったら、なんと真白さんが待っていてくれたらしい。私の顔を見るなり、緊張した面持ちでこちらに駆け寄ってくる。当人よりもはるかにドキドキしていたんだろうなというのがわかるその表情はあまりに可愛い。


「がんばってみろ、って言われただけだった」

「本当!?じゃあ、聖亜細誕巫亜学園を受験するのね!?」


 ……この間もそうだったけど、真白さん、噛まずにすごい速さで学園の名前を言ってる。すごいな。前世からゲームで知ってる私でも、文字見ながらじゃないとすらすら言えないのに。それほど、真白さんの聖亜細誕巫亜学園に対する情熱はすごいらしい。



「うん。奨学金免除の特待生に食い込まないと通えなんだけどね……」

「平野さんなら大丈夫だよ!一緒にがんばろうね」



 そんなに親しくもないのに、大丈夫だと太鼓判を押されてしまった。きっと他の人間にこんなことされたら、「私の何を知ってんだ?」と嫌悪を感じただろう。

 しかし、真白さんの言葉は不思議なくらい素直に嬉しかった。ぎゅっと両手を握って本当に嬉しそうに笑っている真白さん。可愛い、可愛すぎる。

 もしかして一緒に勉強して、万が一特待生で合格できて、一緒にあの学園に通うことができたら、真白さんとし、親友なんかになれたりするんだろうか……?



 そう思った途端、将来のこととか”冥王エンド”のこととか、なんかちっぽけなことに思えた。



 結局のところ、私が聖亜細誕巫亜学園の受験するよう背中を押してくれたのは、真白さんのこの笑顔だったのかもしれないなぁ、と思ったりするのは、まだまだまだまだまだまだ先の話。



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