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迷宮レストラン  作者: 悠戯
開店編
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閑話・開店前

前回の真相


「知ってるかい、アリス? 煮込み料理って一度にたくさん煮ると不思議と美味しくなるんだよ」


 はい、知っています。

 前に他でもない魔王さまに教えていただきましたから。



「今回のも良い出来だと思うんだけど味はどうだい?」


 はい、とても美味しいです。

 ところで魔王さま、ちょっとお話があるのですが。



「だから今回のことは不可抗力というか、仕方がないことだったんだよ……?」



 魔王さまに苦言を呈するなど非常に心苦しいのですが、主人が間違ったことをした時に言うべき事を言うのが忠臣というものでしょう。常に肯定しかしない臣下など置物と同じです。あと、目の前のコレを不可抗力というのはいくらなんでも無理があると思います。


 さて、それでは魔王さま。

 何か言うことはありますか?



「……ごめんなさい」



 そう言って私に頭を下げる魔王さま。

 正直こちらも罪悪感で一杯なのですが、言うべきことは言わないといけません。



「いくら、たくさん煮たほうが美味しいからって、程度というものを考えて下さい!」


「……はい」



 さて、ちなみに私たちが何を問題にしているのかというと。

 目の前に置かれた見上げるほどに巨大な鍋と、その中で煮込まれている10トン近くもの小豆。先日魔界で収穫された小豆を、魔王さまが「たくさん煮た方が美味しいから」という理由で、一度にまとめて10トンも煮込んでしまったのです。


 もちろん、10トンもの小豆が入る巨大な鍋なんてありません。

 魔王城の宝物庫に眠っていたオリハルコンのインゴットを大量に、それも誰にも無断で使って、わざわざ超巨大な寸胴鍋を自作したのだとか。普通の鉄製だと中身の重さで壊れる恐れがあったから、だそうですが。


 おかげで魔界全土からコツコツ集められたオリハルコンの残りは完全にゼロ。

 見事なまでにスッカラカンです。まあ特に使うような用事が差し迫っているわけではありませんし、いざとなれば鍋を鋳潰す手もあるので、そちらに関してはまだ良いのです。


 問題は大量の小豆。

 いくらなんでも腐る前に私達で食べきるなど不可能ですし、捨てるのは論外です。


 魔王さまの意向により、現在の魔王軍では食べ物を粗末にすることは厳禁。

 とりたてて罰則があるわけではないですが、大根の葉から家畜のモツまで食べられるところは残さず食べて、極力無駄を減らすことが暗黙の了解となっています。


 そんな中で魔王軍のトップであり言いだしっぺでもある魔王さまが、大量に食べ物を捨てたりしたら下の者達に示しがつきません。組織運営の基本は率先垂範。何をするにしろ、まず上の者が模範を示さねば下は付いてこないものです。


 しかし、このまま手をこまねいていても仕方がありません。

 なんとか消費しきる手段を考えなくては。

 とりあえず、おすそわけと称して四天王の面々に一人頭2トンずつくらい押し付けてしまいますか。彼ら自身とその部下や家族がしばらく頑張れば、どうにか片付くことでしょう。これで8トン。


 あとは魔王軍の購買部やレストランで極力安く販売して地道に減らす方向で。

 差し当っては、小豆を使った料理を大幅に値引きするフェアでもやってみますか。



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