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迷宮レストラン  作者: 悠戯
迷宮都市編
79/382

特製お子さまランチ


 多くの人で賑わう迷宮都市の地下深く。

 かつては多くの魔物や罠がひしめいていた魔窟の最奥。

 そこには一軒の小奇麗なレストランがあります。


 今でこそ魔物や罠の危険は無くなり、移動用の魔法陣によって安全に辿り着くことができるようになりました。が、そもそもの立地が悪いためか、はたまた競合する他の飲食店が地上に増えたためか、連日連夜満員御礼とまではいかず、精々が『知る人ぞ知る名店』くらいのポジションで収まっています。


 そもそもが金儲けのためではなく、あくまでも趣味的に店を営む魔王からすると、あまりにも忙しすぎると純粋に料理を楽しめなくなってしまう恐れがあるので、今くらいが丁度いいのかもしれませんが。




 そんな迷宮の最奥、レストランの入口近くに二つの人影がありました。一人は上等な身なりのふわふわした栗毛の少年。もう一人は執事服を着こなした白髪の老人です。


 恐らくはまだ五、六歳くらいであろう小柄な少年は、しかしその幼い顔に似合わぬ、ひどく厳しい表情を浮かべて背後に立つ老人に問いました。



「じい、ここに魔王がいるのだな……?」


「はい、若様。その筈でございます」



 『じい』と呼ばれた老人は緊張した様子の『若様』とは対称的に涼やかな口調で答えました。少年は一度ごくりと唾を飲んでから、緊張した面持ちでレストランの扉を開けました。


 カラン、コロン。



「うわぁっ!?」



 扉を開けた拍子にドアベルが音を立て、その音に驚いた少年はその場にドシンと尻もちをついてしまいました。



「おやおや、大丈夫ですかな、若様」



 すかさず老人が助け起こそうとしますが、その前に少年に手を差し伸べる者がありました。



「あら、大丈夫ですか?」



 先代の魔王にして現在はこの店のウェイトレスであるアリスが、少年の手を取って助け起こしたのです。



「どこか痛いところはありませんか?」


「ありがとうございます、お嬢さん。おや、若様?」



 最高級の宝石ですら路傍の石くれに見えるほどに輝く美しい髪。海の深さも空の高さも及ばぬほどに深い蒼さを湛えた瞳。アリスの姿を一目見た少年の心はかつてないほどに揺れ動きました。



「……は!? あ、ああ、大丈夫だ。どこも痛くない」



 少年はアリスの顔を見て呆としたまま顔を赤くしていましたが、数瞬の後に正気を取り戻したようです。



「では改めて、いらっしゃいませ、お客さま。お席までご案内しますね」


「さ、参りましょう若様」


「う、うむ、よろしく頼む」



 少年と老人はアリスに案内されて二人掛けの席へと腰を落ち着けました。



「ではお冷とメニューをどうぞ。ご注文が決まったらお声掛け下さい」


「ああ承知した……ところで女給よ、名をなんという?」



 少年に名を尋ねられたアリスは、特に隠すことでもないのでそのまま名乗ります。



「名前ですか? アリスといいます」


「そうか、アリスか……良い名だ。アリスよ、おれはシモンという。こっちの爺はクロードだ」


「シモンくんとクロードさまですね。よろしくお願いします」


「うむ、よろしく頼む」


「よろしくおねがいします、アリスさま」



 シモン少年は鷹揚に、クロード氏とアリスはペコリと頭を下げて言いました。



 

 ◆◆◆




 さて、この妙に背伸びした口調で話すシモン少年。

 その正体はさる国の現王の息子、つまりは王子さまでした。

 やんごとなき身分のシモン王子は、食事のためではなく、とある重要な使命を帯びて本日この場を訪れていたのです。少なくとも本人はそう信じていました。



「おれが魔王の邪悪なる正体を見極め、皆の目を覚まさせねばならぬ」



 昨今の魔族との和解を受け入れ、そして共存を目指す動きが世の主流ではあるのですが、当然のことながらその流れを面白く思わない層もそれなりにいるのです。このシモンも魔王を悪と信じて疑わぬ者の一人でした。


 それというのも彼が今よりももっと小さな頃から、それこそ物心つくかつかないかといった頃から、魔王が悪役として登場する絵物語を親兄弟や世話係のクロードに読み聞かせられていたからです。今ではすっかり魔王イコール悪という強固な価値観ができあがっていました。



「魔王め、皆は騙せてもおれはそうはいかぬ」



 シモンの父は子沢山で、シモンには二十人近い同腹や異母の兄姉がいるのですが、現王が老境に入ってから生まれた末子であるシモンは、歳の離れた兄や姉たちから殊更に可愛がられています。

 れっきとした王子ではありますが、生まれた順番からいっても王位の継承争いにはまず関わりなく、それ故に純粋に肉親の愛情を向けられたのが良かったのでしょう。


 ですが、やんごとなき方々の愛情表現は少々変わっておりました。

 一体どこで探してきたのか、妙にリアルなタッチの挿絵が入った禁書指定スレスレのホラー系絵物語などを、次から次へと入れ替わり立ち替わりに読み聞かせようとするのです。

 幼いシモンが怖がって抱きついてくるのが可愛いと、両親や兄姉、果ては城の使用人や兵士までもがことあるごとに怖がらせようとするのですから相当なもの。封建国家にあるまじき自由な気風の国なのです。



「父上も兄上たちも、どうして魔王などを信じることができるのだ」



 最近ではシモンも慣れてきてちょっとやそっとの怪談では怖がらなくなりましたが(それを城の人々はひどく残念に思っています)、それでも彼の中での魔王というのは悪と同義。


 様々な絵物語を元にした脳内のイメージ図では、手足やツノや牙や触手や気色の悪い縮れ毛やらが全身にビッシリと生え、口や尻から火や毒や酸を吐き、身体の各所にあるたくさんの目から四方八方に怪光線を放つ。魔王というのは、そのような見ただけで正気度がガリガリ削られる名状しがたい系生物なのだと想像していました。


 そんなのと友好を結ぶとか、シモンは周囲の人々の判断が信じられません。さては、ダイスロールとその後の判定に失敗して正気度の値が零になってしまったのかと疑うばかりです。ああ! 窓に! 窓に!



「だが姉上も言っていたし、間違っているのはおれではなく皆のはずだ」



 唯一、シモンと一番仲の良い八歳年上の姉だけは「皆には真実が見えていないのよ」、「私の魔眼には魔王の正体、そして真なる黒幕の姿がはっきりと視えているわ」、「くっ、静まれ私の左腕」などと言ってシモンの意見に同意してくれました。その御歳十四歳になる姫君は、思春期の内向的な少年少女が罹患しがちな、ある種の心の病を発症していたのです。


 おかしいと言っているのが自分一人だけならば、あるいはシモンも自分の方が間違っているのかもしれぬと思ったかもしれません。ですが今回は、自分が深く信頼している、特にケガをしているわけでもないのに常に包帯を腕に巻き眼帯を付けている姉の言葉を後押しに、自身の考えが正しいことを確信してしまったのです。


 ところで今回の件には関係ありませんが、



「じい、どうして姉上はケガもしていないのに、いつも包帯や眼帯を付けているのだ?」


「ふむ、それは私の口からは申し上げにくいですな。若様、とりあえず姉君の言動の記録を詳細に書き残し、五年後くらいに姉君の目の前で読み上げるとよろしいかと」


「うむ? よくわからぬが、そうしておこう。じいの言うことなら間違いはあるまい」



 というやり取りが少し前にあったそうです。



 こうしてシモンは魔王の正体を見極めるべく、外交官として赴任する予定だった上から三番目の兄にくっついて、表向きは旅行として迷宮都市にまでやってきたのです。

 方向性はさておき可愛がられてはいますし、家族も幼いシモンには甘くなりがちなので、旅行に行きたいと言ってもこれといって反対もされませんでした。





 ◆◆◆





「じいよ、無事に魔王の隠れ家に潜入できたが怪しまれてはいないだろうか?」


「大丈夫ですとも、若様。さ、次は怪しまれぬように料理を選びましょう」


 冷たい水を飲んだことで入店時の動揺も収まり、シモンとクロードはメニューを選びながら今後の予定を話し合います。


「ほう、料理の絵はなかなか美味そうだな……魔王め、さては美味い料理で民草を懐柔する気か。だが、おれはその手には乗らぬぞ」


「それは頼もしいですなぁ」



 パラパラとメニューをめくるシモンですが、なかなか一つに絞りきれないでいました。



「このはんばぁぐとやらが美味そうだが、こちらのえびふらいとかいうのも捨てがたい。甘い物もよい……だが、おれではとても食いきれぬ」



 この店の料理はそれなりにボリュームがあり、小さなシモンでは一人前を食べきることは難しいでしょう。この店に子供が来ることは少ないので子供用メニューなどは用意していないのです。



「そうだ、良いことを思いついたぞ。アリスよ、ちょっとよいか?」



 迷っていた様子のシモンは、アリスを呼んで言いました。



「食いたい物は色々あるのだが、どうもおれには量が多すぎるようなのだ。少しずつ色々な料理を食いたいのだが、できるか?」


「少しずつ色々ですか? ……そういえば前にリサさんからそんな子供向けの料理を聞いた覚えが……ええ、できますよ、シモンくん」


「そうか、ではおれはそれを頼む」


「私はこのはんばぁぐせっとというのを頂きましょう」



 シモンとクロードがそれぞれの注文を伝えるとアリスは店の奥へと入っていきました。


 シモンは料理が楽しみなのか歳相応の無邪気な笑顔を浮かべていましたが、それを微笑ましく見守るクロードの視線に気付くとまるで言い訳をするように言いました。



「おれがこうしてただの無邪気な子供であるかのようなフリをすれば魔王も油断するに違いない。これはそういう作戦なのだ。じいよ、分かっておるな」


「はい、もちろん心得えておりますとも」


「うむ、それならよい」



 フリも何も、身分以外は本当にただの無邪気なお子さまなのですが、クロード氏は特に否定することなく穏当な返事をしました。彼は空気の読める男なのです。


 クロードの返答に気を良くしたシモンは続けて言いました。



「そうだ、魔王を探すための良い作戦を思いついたぞ。じいには特別に教えてやろう」


「ほう、興味深いですな」


「うむ、アリスに聞けばよい。この店で働いているならば魔王の居所も知っているかもしれぬ」


「成程、冴えておりますな、若様」



 この店が噂通りに魔王の店であるならば、ここで働くアリスも魔王の手の者なのでは? などと思いはしても、クロードは特に作戦の不備を指摘したりはしませんでした。彼はすごく空気の読める男なのです。



「だが、作戦の前に腹ごしらえだ。腹が減っては戦はできぬと兄上も言っていた」



 シモンは尊敬する上から五番目の兄の言葉を思い出して言いました。その肥満体型の兄は戦に備える為という名目で常に何かしら口にしているのです。戦に備えすぎて最近は着れる鎧がなくなり、馬にも乗れなくなっていましたが、根が素直なシモンは兄の言葉の矛盾にはまだ気付いていないようです。


 

「お待たせしました。特製お子さまランチとハンバーグセットです」


「おお、これは見事な馳走! アリスよ、褒めてつかわす」


「ありがとうございます。では若様、いただきましょう」



 運ばれてきた皿を目にしてシモンは歳相応に目を輝かせました。

 大きめの平皿の上には小さめのハンバーグ、タルタルソースを添えたエビフライ、フライドポテト、プチトマト、小さな旗の刺さったチキンライスが所狭しと並んでいます。これらに加えて別皿でデザートのプリンとオレンジジュースを付けて『特製お子さまランチ』です。


 通常メニューにはない品なので魔王とアリスで急遽考えたのですが、存外にそれっぽく仕上がっていました。

 チキンライスの旗は以前リサにお子さまランチという料理を教えられた際、旗の重要性を熱く語っていたのを思い出して楊枝と余り紙を使って急造しました。重要性に関しては今ひとつピンとこなかったものの念の為。ちなみに旗にはアリスがデフォルメして描いたネコのイラストが入っています。



「これは美味そうだ……む、じい、そちらのはんばぁぐの方が大きいな」



 いざ手を付けようとした間際、シモンはクロードのハンバーグの方が大きいことに気付きました。



「いやはや歳を取るとどうにも食が細くなりましてな。若様、助けると思って私のはんばぁぐと交換して頂けませんかな?」


「うむ、よいぞ! じいの頼みとあってはおれも断れぬ」



 クロードはシモンの希望を瞬時に汲み取り、なおかつ相手を立てる物言いでハンバーグの交換を申し出ました。彼はとてつもなく空気の読める男なのです。


 ハンバーグの交換が済んだところでシモンは料理に手を付けました。



「これはたまらぬ!」



 デミグラスソースのかかったハンバーグは噛めば噛むほど肉汁が溢れるかのようですし、エビフライはサックリとした衣とプリッとした海老が酸っぱい味のタルタルソースと合わさりえも言われぬ美味さです。

 脂の強い料理の合間に、プチトマトを口に放り込めば爽やかな酸味で重くなった舌が蘇り、ホクホクとしたフライドポテトもケチャップと合わさり良い具合です。


 ですが、なんといっても。



「この旗がよい」



 と、てっぺんに旗の刺さったチキンライスがシモンの好みでした。

 やや甘みの強いケチャップライスには小さく切った鶏肉や刻んだ野菜などが入っていて、その味だけでも彼の好みだったのですが、



「この旗がとてもよい」



 幼い少年の心には、味以上に旗の存在がヒットしたようです。食べる過程でチキンライスから抜いた旗をおしぼりで綺麗に拭き、ズボンのポケットへと入れるほどに気に入ったようです。



「ふう、堪能したぞ」



 デザートのプリンまで食べ終え、オレンジジュースを飲みながらシモンは呟きました。



「じつに美味でしたな」



 クロードも少し小さめのハンバーグを堪能したようです。



「だが、忘れておらぬな、じい。おれの本当の目的をこれから果たさねばならぬ」


「ええ若様、分かっておりますとも」



 正直に言えば、満腹になって元々の目的を忘れていてくれることを願っていたクロードですが、シモンの気に障らぬように答えました。彼はそれはもう凄まじいまでに空気の読める男なのです。




 ◆◆◆




「アリスよ、少し尋ねたいことがある」


「なんですか、シモンくん?」


 シモンは先程考えた作戦の通りにアリスに尋ねました。



「このあたりで、手足やツノや牙や触手や気色の悪い縮れ毛やらが全身にビッシリと生え、口や尻から火や毒や酸を吐き、身体の各所にあるたくさんの目から四方八方に怪光線を放つような名状しがたい系の生物を見なかったか?」


「なんですか、その正気度が下がりそうな生き物は?」



 もちろんシモンの想像通りの生物を見たことなど“このあたりでは”あるはずもなく、アリスは否定を返しました。魔界の秘境やら深海やらにはたまに名状しがたい系の魔物が棲んでいたりするので、そういう生物も探せばどこかにいるかもしれませんが。



「そうか……じつはおれは魔王の正体を見極めるためにこの店に来たのだが、ここに魔王がいるというのは眉唾であったか」


「今の魔王さまのことだったんですか!?」



 アリスは驚いて聞き返しました。それはそうでしょう。



「うむ、もちろん実際に見たことはないが、前に見た絵物語の挿絵だと大体そんな感じだった。世の人々は魔王と共存することに賛成する者が多いが、おれにはどうも信じられぬ。そこで実際に魔王を見て判断しようと思ったのだ」


「そうだったんですか……」



 アリスはどうしようかと迷いました。

 なにせ相手は小さい子供なので、いくら魔王に敵意を持っているとはいえ暴力に訴えるような真似はできません。これが大人だったら容赦なく正気度の値が零を通り越してマイナスになるような手段も取れるのですが。


 結局アリスは迷った末に、実際に魔王をシモンに会わせて危険がないことを理解してもらうことにしました。



「シモンくん、こちらが魔王さまです」


「こんにちは、魔王です。よろしく、シモンくん」



 アリスが連れてきた魔王を見てシモンは疑わしげに言いました。



「普通だな。この男が本当に魔王なのか?」


「本当だよ」


「本当ですよ。絵物語の挿絵はそもそもただの想像図でしょうし」


「むぅ、アリスがそう言うなら信じよう」



 シモンはアリスが言うと素直に信じました。



「だが、姿形はともかく、心が邪悪であるかどうかも見極めねばならぬ。魔王よ、己が悪ではないと証明できるか?」


「それは……難しいね」



 問われた魔王は、心が邪悪でないと証明する方法が思いつかず、頭をひねりました。まあ、別に証明できなかったからどうなるというワケでもないのですが。


 ですが、悩んでいる魔王を尻目にアリスが答えました。



「その問いには私が答えましょう。魔王さまは道端にゴミが落ちていれば拾い、大きな荷物を持っている老人がいればかわりに持ち、外から帰ったらちゃんとうがいと手洗いをし、お腹を空かせている人には食べ物を与え、迷子がいれば一緒に親を探し、大雨の日には農家の人のかわりに田んぼの様子を見に行くついでに雨雲を拳圧で散らし、捨て犬や捨て猫がいれば里親が見つかるまで面倒を見て、無職がいれば就職の斡旋をし、雪が降れば雪かきをするついでに子供たちに雪だるまやかまくらを造ってやり、小銭が落ちていれば額に関わらず衛兵に届け、食材は大根の皮や葉っぱまで捨てずに使い、滅びかけた世界があったら救ってしまうほどに善良です。すべて私がこの目で見たことですから間違いはありません」



 まさに立て板に水。

 激流の如き勢いで一息に語りました。


 魔王は、何故一緒にいなかった時のことまでアリスが知っているのか少しだけ不思議に思いましたが、基本的におおらかな性格なのですぐにその疑問も忘れてしまいました。


 そして、それだけ一度に語られたシモンはというと、



「そうか、そうなのか……いや、アリスの言うことだ、信じよう。魔王は悪ではないのだな」



 何かを悟ったように、重い口調で呟きました。


 そして魔王の方を向き、



「魔王よ、確かにお前は悪人ではないようだ……だが、お前はそれでもおれの敵だ」



 と魔王の目を真っ直ぐに見据えて言いました。


 最後に「また来る」とアリスに伝え、シモンとクロードは帰っていきました。




 ◆◆◆




「嫌われちゃったかな、小さい子には好かれる方だと思っていたんだけどな……」


 閉店後の店内で、魔王はマイペースな彼にしては非常に珍しく、少しだけ落ち込んでいました。



「原因が分かりませんね。悪い子ではないと思いますし、理由もなくあんなことを言ったりはしないと思いますけど」



 アリスの方も何故シモンが魔王に「お前は敵だ」などと言ったのか分からずにいました。しかも、魔王が悪人だという誤解自体は解けているはずなのでなおさら不思議に思っています。



「分からないなぁ」


「分かりませんねぇ」



 名状しがたいというか、余人には理解しがたいレベルで鈍い魔王とアリスは、シモンの言葉の理由が分からず、夜遅くまで頭を悩ませたのでした。



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