表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮レストラン  作者: 悠戯
開店編
4/382

閑話・閉店後


「ありがとうございました!」


 (アリス)は今日来店した客の勘定を済ませて、その後姿を見送りました。


 しかし、ハッキリ言ってかなり変なお客さんでした。

 見上げるような大男なのに妙にオドオドしているし、私の事をまるで怖がって怯えているかのようだった。一瞬、「さては魔族であるこちらの正体を見抜かれたか?」とも思ったけれど、どうもそういうワケでもないようで。


 それに輪をかけて変なのが注文する料理の内容でした。

 「俺に相応しい料理」とか言われても困ります。


 私では判断しかねたので、とりあえず厨房にいる魔王様に相談してみました。

 その客の風体を尋ねられたので”五十歳くらいの男性”だと答えると、魔王さまは早速料理に取り掛かったのです。


 あれだけの情報で客の望む料理が分かったのでしょうか?

 やっぱり魔王様はすごい。


 そして数分後に出来上がった料理が「プリン・ア・ラ・モード」。

 あのお客さんの見た目からしてガッツリ系のお肉やお酒を想像していたので少し驚きましたが、魔王さまのすることに間違いがあるはずもなし。きっと大丈夫でしょう。


 万が一にもあのお客さんがこの料理を食べたくないと言ったのなら、それは魔王さまではなくお客さんが間違えているのです。もし間違えたのならば、それは正さないといけません。


 ……などと考えていたのは、幸いにも杞憂だったようですが。

 あの身体の大きなお客さんは「プリン・ア・ラ・モード」を夢中で食べていました。


 少し羨ましいです。

 あとで魔王様にお願いしたら私にも作ってくれるでしょうか?


 食べ終わったお客さんは、途中までのオドオドした様子などなかったかのように妙にスッキリと晴れやかな顔をしていました。きっと、さっきまでの妙な様子はお腹が空いていたせいだったのでしょう。


 それにしても不思議です。

 魔王さまはどうして「五十歳くらいの男性」という情報だけで、あのお客さんが「プリン・ア・ラ・モード」を欲していると分かったのでしょうか?


 というわけで、その日の夕食の席で魔王様にその事を尋ねてみました。

 その答えが「だって五十歳くらいの男の子なんだよね? 小さい子は甘いものが好きだからね」というのは流石に予想外でしたけど。


 確かに我々のような魔族にとって五十歳などよちよち歩きの子供にすぎませんが、人間の五十歳というのは老人一歩手前くらいの年代だったはず。その事を指摘すると魔王さまは驚いた様子で「でも喜んでくれたのなら結果オーライだよね」と照れ隠しのように笑いながら言いました。


 そんな魔王さまのことがどこか可愛らしくて、私もつられて笑ってしまいました。


 ああ、とても幸せな気持ちです。



魔王様は割と天然です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ