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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語

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下手人二人


 ところで、どうして魔王はアリスとリサのケンカにタイミング良く割り込む事ができたのでしょう?


 それにはちょっとした理由がありました。

 すっかり仲直りしたケンカの当事者二人が魔王と一緒にレストランの前まで戻ると、



『しくしくしく……酷い、あんまりですよぉ……なんで、わたくしの世界をあんな風に壊そうとするんですかぁ……っ』



 扉の前で、神子の身体を借りた女神が泣きながら抗議してきました。

 裏の思惑とか全くないのは一目瞭然、フリではない完全なるガチ泣きです。涙も鼻水もすごいことになっていました。

 何故かその隣にいるライムが「よしよし」と頭を撫でて慰めているのが、より一層の哀愁を誘います。



『うぅ、せっかく……せっかく、すごく頑張って創ったのに……』



 どうやら、先刻のアリスとリサの破壊活動は、世界の創造主的には相当にショックな出来事だったようです。



「いや、僕も事情はよく分からないんだけど『二人をすぐ止めてきて』って、さっき頼まれてさ」



 魔王がケンカを止めにきたのは、女神から『このままだと、あの二人に世界を滅ぼされてしまいます!』と泣きつかれたからでした。


 アリスたちは人や動物にはなるべく影響がない土地を選んだつもりでしたが、攻撃の規模と威力が大きすぎて、この世界そのものにダメージが入っていたのだとか。

 厳密には肉体的な意味での痛みではないのですが、神様的な感覚としてそれがすごく痛かったようです。


 元の地形が力業で壊されたこともそうですが、戦闘中に魔力の回復をする為にあの周囲一帯の大気中や、地面の下の魔力の流れ(地脈や霊脈と呼ばれる)を、枯渇寸前にまで吸い上げたのが特にマズかったようです。

 今すぐに目に見える形の影響が出るというワケではないのですが、現在あの地域周辺には魔力のエアポケット状態が発生しており、回復するまでは天候が不安定になったり、植物の生育に悪影響が出る可能性があるのです。

 既に自然界の魔力が消え失せて久しい地球と違い、この世界の自然や生態系は魔力ありきで成立しているもの。たとえば、霊長種として人間よりも魔力への親和性が高いエルフやドワーフが今のあの地を訪れたら、名状しがたい不快感を訴える事でしょう。


 今回の影響が抜けるまで、恐らく数ヶ月、長ければ半年程度はかかるでしょうか。

 仮に最後の全力衝突が未遂で終わっていなければ、その数ヶ月が数年に、それどころか空間自体に不可逆の歪みが発生して回復不能の傷跡となっていたかもしれません。

 





 世界というのは神が丹念に創り上げている箱庭であり、同時に神自身でもあるのです。

 その辺りのルールは世界によって微妙に違ったり、複数の神々が共同管理している場合もありますが、大抵の神は自分が管轄する世界をとても大事にしています。


 そして、この世界の管理者である女神は、神としてはこれでもかなり善良な部類です。

 時には人類や世界全体の総体としての益の為に、個々の生命に過酷な運命を強いることもありますが、面白半分に弄んだりはあまり・・・しません。

 むしろ、見込みのある者には助言や知識を授けたり、手助けをすることのほうが多いでしょう。勇者召喚の術式などはその最たるものです。


 雄大な自然の巡りや、善良な人々の日々の営み、世代を経て為される文明の発展。

 そういう物事を見守る事に生き甲斐を感じている女神にとっては、今回のケンカはとても耐え難いものだったのです。








 ……という事情を、女神は泣き声交じりに説明しました。

 それを受けたリサとアリスは、



「そ、それはなんというか……済みませんでした」


「その……面目ありません」



 過去には色々ありましたが、今回の件に関して女神は完全に被害者です。

 下手人二人はただ平謝りするしかありません。



『……ぅうう、まあ、いいです、許します。今度からは気を付けてください、この埋め合わせはいつかしてもらいますからね』


「は、はい」


「ええ、わかりました……そうですね、何か好きな物を好きなだけご馳走するという事では?」


『わたくしはそんなに安いおんなではありません! いえ、それはそれでご馳走になりますが、それとは別に埋め合わせてもらいますからね!』



 アリスの誤魔化しも通じません。

 神はお怒りです。それはもうプンスカ怒っています。激おこです。

 どうやらこの借りを返すのは一筋縄ではいかないようです。








 ◆◆◆








 こうしてリサとアリスは、とても大きな借りを作ることになってしまいました。

 この借りを完済するのはこれから随分と先、数年も未来のことになるのですが、それに関しては別の場で、別の物語として語ることになりましょう。



世界観の解説回&将来に向けての伏線回でした

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