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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語

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解答.リサ②


「……次は、わたしは」


 リサは、しばし瞑目して考え、それから神子の問いへの答えを口にしました。 



「どうしたらいいと思います?」


「え、その……ワタクシに聞かれましても」


「ですよねえ」



 質問をしたつもりが逆に聞き返されて、神子も反応に困ってしまいました。

 リサは足元の雪をサクサク踏みながら苦笑しています。



「わたしも最近ずっと考えてたんですけど、全部を綺麗に解決できるような方法なんて、全然さっぱり思い付かなかったんですよ」



 どうすれば全部が上手く解決するのだろうか?

 そんな方法がないものかと考えて、ひたすら考えて、リサもようやく認めざるを得ませんでした。全部が全部丸く収まる方法など存在しない事に。

 これは学校のテストではないのです。問題に対し、必ずしも解答が存在するとは限りません。

 しかし、そう言うリサの顔には悲壮感はありませんでした。



「でも、綺麗に解決できなくても、もう、いいんです」



 自分の心が傷付く事。

 あるいは反対に他の誰かの心を傷付けてしまう事も。

 それらを避けて通る道は無いと既に知り、それでもなお、その道を往くとリサは覚悟を決めていました。魔王を諦める為の理由を自分の中から探そうとは、もう、していませんでした。



「でも、すぐってワケじゃなくて、心の準備とかタイミングっていうものもありますから……そうですね、クリスマスとかバレンタインとか……あ、わたしの世界の風習なんですけど、そういう折を見て二人に告白しようかと」


 クリスマスもバレンタインデーも、異世界の住人には関係がありません。それらは、単にリサが自分を奮い立たせる為の理由付けの一例として挙げただけでしょう。

 それに、神子が気になったのは、そのような異界の風習ではなく別の部分のようです。



「お二人に、ですか?」


「はい、二人にです」


「それは、なんというか……」



 “二人に”告白をするとリサは言いました。

 魔王と、アリスとに。

 相手を好きだと。

 あるいは、相手の好きな人物を後から好きになってしまった、と告白する。


 リサのやろうとしているのは、正攻法も正攻法の真っ向勝負。

 その決意を聞いた神子も思わず言葉を失ってしまうほどに愚直で、困難で、そして誠実な選択でした。







「それは、果たして正しい選択なのでしょうか?」


 リサの決意を聞いた神子は、再度、最初の問いを重ねます。



「わかりません。でも、正しいからやるとか、間違ってるからやらないとか。なんというか、そういうのじゃないんです。間違っていても、わたしはそうすべきだと思うから」



 それが、リサの出した結論でした。 



「もし、フられたら慰めてくれると嬉しいです。きっと、また泣いちゃいますから。あ、でも最初から負けるつもりとか、そういうのじゃありませんよ」



 冗談めかして言ったその言葉の裏には、いったいどれほどの想いがあるのでしょうか。無理に作った笑顔は、今にも壊れそうに震えています。

 恐らくは、未だに完全に吹っ切れたわけではないのでしょう。

 それでも彼女は、傷付いて、落ち込んで、迷って、悩んで……そして、ようやく此処に辿り着きました。


 リサは、きっと、もう自身の想いに目を背けることはありません。







 ◆◆◆







「おっと、すっかり話し込んじゃいましたね。冷えてきましたし、どこかで温かい物でも食べていきませんか?」



 重大な決意を打ち明けたリサは、照れ隠しも入っているのかそんな提案をしました。



「せっかくですが、またの機会に。まだ、これから行くところがありますので」


「そうですか、それじゃあまた今度」



 ですが、神子にはまだやるべき事が、問うべき相手が一人残っています。

 リサと別れた神子は、今度は魔王の下へと歩を進めました。



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