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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語
215/382

問題.『愛』について、以下の問いに答えなさい


「ごきげんよう、アリスさま」


「あら、最近顔を見ませんでしたが……少し痩せましたか?」


 アリスの目に映る神子の姿は、以前までのほっそりとした、を通り越してやつれているとすら言える状態でした。髪や衣装の色も相まって、まるで触れれば溶けて消える雪の欠片のような儚さです。



「はい、断食を少々」


「えっ!?」



 普段の神子は人一倍、いえ十倍……いえ人百倍くらいは食べる健啖家でありますが、なんと、その彼女がここしばらく断食を行っていたというのです。それにはアリスもビックリです。



「神殿の修行か何かですか?」



 宗教家やなんらかの分野の修行者は、時に常軌を逸した苦行に身を晒す事があります。

 アリスは、てっきり神子がその類の修行を行ったのではと推測しましたが、しかしそうではありませんでした。



「いえ、これは罰なのです」


「何か罰を受けるようなことをしたんですか?」


「いいえ、“これから”するのです。ワタクシが貴女方に」



 神子がしたのは、これから犯す罪に対する罰の先払いのようなものです。

 彼女のあまりにも潔癖すぎる性分がそうさせた、せめて自らに罰を与えずにはいられなかったのです。とはいえ、その自罰はあくまでも神子の自己満足、自己を納得させるためのものですが。



「はあ、よくわかりませんが」



 「これから危害を加えますよ」と宣言されたに等しい状況ではありますが、アリスとしてはなんと反応したものか分かり難いものがありました。どちらかというと、警戒よりも極度の空腹による錯乱を疑う気持ちが上回ったほどです。

 アリスは、万が一攻撃されたら殺さない程度に加減して拘束すればいいだろうか……というような事を考えながら自然体のままで身構えていましたが、神子は、静かに一つの問いを言葉にしました。



「アリスさま。貴女が魔王さまに抱いている想い、それは本当に『愛』なのでしょうか?」







 ◆◆◆







 同日、某所、某時刻。



「リサさま、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


「はい、なんですか?」



 アリスとの話を終えた神子は、次にリサに会いに来ました。



「申し訳ありません。先に謝っておきます」


「はい?」



 ここでも神子は、話を始める前にそのような前置きを入れました。

 ですが、その先に続く問いは、アリスに投げたものとは違いました。



「リサさま。一度答えを間違えた貴女が、次こそは間違えないと、確信を持って言えますか?」







 ◆◆◆







 同日、某所、某時刻。

 アリスとリサとの話を終えた神子は、最後に魔王に会いに来ました。



「失礼、貴方には反省すべき点が多すぎますので気は進みませんが、一応形式上謝っておきます。ごめんなさい」


「ええと、僕何かしちゃいましたかね?」



 ここでも神子は、本心ではあまり言いたくないけれども、と正直に言った上ではありますが、一応前二人と同じような前置きを入れ、そして、本日三回目となる問いを発しました。



「魔王さま。貴方は、愛という感情を本当に理解できているのでしょうか?」




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