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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語
208/382

ss 手作りジャム

二百回記念SS、その⑤。

今回のお題は須賀佳直様から頂いた『アリス』&『手作りジャム』の組み合わせです。

須賀佳直様、どうもありがとうございました。

 ことこと、ことこと。

 鍋の中身を焦がさぬよう気を付けながら、ゆっくりじっくりと煮詰めていきます。

 時折木ベラでかき混ぜる程度で、それほど手をかける必要はありません。

 ジャム作りに焦りは禁物。

 気が急いて火を強くして焦げ付いてしまっては、苦味で全部が台無しです。



 材料は、旬の果物であれば基本的になんでも大丈夫。果物だけでなく、ミルクやワインのような液体だってジャムにできます。

 あとは砂糖と、酸味が足りなければレモン汁を入れるくらいでしょうか。そうそう、保存するつもりならば、密閉可能な瓶を煮沸消毒しておくのも忘れてはいけません。


 アリスは旬のイチゴやリンゴの、特に生のままだと酸味が強すぎるような実で作ったジャムが好みです。

 刻んだ皮ごとの柑橘のママレードも良いですし、瑞々しいブルーベリーなんかトーストに多めに乗せると最高ですね。それに、ご存知ですか? ソテーしたお肉の肉汁と果物のジャムを合わせると、とても素晴らしい味のソースになるんですよ。



「よし、こんなところでしょうか」



 私は手元で火にかけていた二つの鍋の中身を見て、ちゃんと出来ていることを確認してから火を止めました。

 今回作ったジャムは二種類。

 旬を迎えたリンゴと、リサさんからお裾分けで頂いたデコポンという名の珍しい形の柑橘です。

 リンゴに関しては作り慣れているので心配いりませんが、デコポンのママレードは私としてはちょっと挑戦してみた新作です。生で食べて美味しかったので、工夫しようという意欲が刺激されてしまいました。


 普通に市場に並んでいるオレンジに比べると皮の部分が段違いに分厚いので、皮の表面部分だけを削るように薄く剥き、その上で細かく刻んで薄皮と種を除いた実と一緒に砂糖で煮てみました。分量に関しては勘で判断しましたが、どうにか上手く成功してくれたみたいです。

 あとは粗熱が引いてから瓶に移し、保管庫で冷やしておけばいいでしょう。







 ◆◆◆







「たまにはこういうお茶会も良いものですね」


 テーブルの上には焼き立てのスコーンとクロテッドクリーム。作ったばかりのジャムの瓶。

 そして、ここに紅茶が加われば、もう言うことはありません。


 もう営業を終えて深夜に片足を踏み込んだような時刻なのですが、私が昼間の空き時間にジャムを仕込んでいたのを見た魔王さまが、閉店の少し前からこっそりスコーンや紅茶の用意をしていたのです。こんな風にしてお茶会に誘われたら私に断れるはずがないじゃありませんか。



「出来はどうでしょう?」



 私としては、特に新作のデコポンのママレードが気になります。調理中にも味見はしましたが、一度冷やして味が落ち着いたらどんな感じになっているのでしょう?


 小さなスプーンで瓶の中身を掬い上げてみると、細かく刻んだ皮が照明の光をキラキラと反射して綺麗な黄金色になっています。これは美しいですね。

 まずはそのままの味を確認するためにクロテッドクリームは無しで、少量をスコーンに乗せて口に運びました。



「これは、良いですね」



 一般的なオレンジと比べると皮の苦味がややおとなしく、元の実の奇抜な外見からは想像できない上品な口当たりです。

 個性はあるのですが派手すぎず地味すぎず、スコーンの素朴な味わいとも相性が良いようです。二口目はクロテッドクリームを添えて一緒に食べてみましたが、乳脂肪の柔らかな風味ともケンカしません。

 正面を見れば、テーブルの向かいに座る魔王さまがママレードとクリームを山盛りに乗せたスコーンを頬張っていました。気に入っていただけたようで私も一安心です。


 一つ目のスコーンを食べ終えた私は、紅茶を飲んで口内に残る後味を洗い流し、今度はリンゴジャムとスコーンの組み合わせを試してみました。


 リンゴのほうは、食感を楽しむためにあえて大ぶりに切り、火の通りも僅かながら浅くしてあります。手作りジャムの良い点は、こうして自分の好みに合わせて細かい調整ができるところですね。深く煮詰めていないので、スプーン越しに感じる汁の感触もサラサラとしています。


 じゃくじゃくとした実の食感はアップルパイの中身に似ていますが、こちらはシナモンを入れていませんし、よりシンプルな印象です。どちらがより美味しいかは……とても難しい問題です。今度、常連の皆さんも交えて食べ比べでもしたら面白いかもしれません。



 その後も、ジャムにクリームを付けたり、二種類を併用してみたり、紅茶の中にジャムを入れて風味の変化を楽しんでみたりと、真夜中のお茶会はとても楽しいものになりました。



SSのお題と人気メニュー投票、引き続き受付中です(11/6まで)。

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