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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語

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異界オーバード④

本日二話目の投稿です。

順番飛ばしにご注意ください。


「アリスさま、新しいの焼けましたよ」


「どんどん焼いてますから、たくさん食べてくださいね」


 吸血鬼の村の記念式典に招待され、無事に来賓としての役割(とはいっても、軽く一言二言挨拶したくらいですが)を終えた魔王は、長老の館での宴会に参加していました。

 リサは無断外泊は出来ないので途中で抜ける予定ですが、魔王とアリスとコスモス(小)は今日はこのまま最後までいるつもりです。


 普段は店側として客をもてなす彼らですが、今日はいつもと反対に接待を受ける側です。

 最初は村人たちもゲストとの距離感を掴みかねていたのですが、前から面識のあるアンジェリカとエリックが積極的に世話役を買って出たおかげで、次第に和やかな雰囲気になってきました。



「それにしても、よく一回食べただけで作れましたね」



 大きな円卓の上には色々な料理が並べられていましたが、なんとその中にピザがありました。

 以前にアンジェリカが魔王の店でミックスピザを食べた事がありましたが、彼女がその時のことを余りにも美味しそうに話すものですから、興味を持った村の女衆がパン焼き釜でどうにか似た物が出来ないか工夫してみたのだそうです。

 幸いにも材料に特別な物は必要ありません。

 生地用の小麦は村で作った物が大量にありましたし、チーズや他の具材も村の産物だけで賄えました。最初は火加減に失敗して何枚か焦がして炭にしてしまいましたが、今ではすっかり勘所を掴み、こうして客人に振舞えるまでになっていました。

 しかも具材の組合せも種類豊富で、肉中心のガッツリ系、チーズとオイルだけのシンプル系、野菜中心のヘルシー系など盛り沢山。



「随分工夫したみたいですねえ」


「この村は景色も良いですし、ちゃんとした建物と移動手段を用意すれば料理で人を呼べるかもしれませんね。いえ、いっそ宿泊施設を用意して観光地として大々的に開発を……」



 アリスは素直に関心していましたが、コスモスは食事をしながらも抜け目なく金儲けの算段をしています。今の外見は年齢一桁の幼女なので、セリフとのギャップが凄まじいことになっていました。



「ご馳走になっている時にお行儀が悪いですよ、コスモス」


「おっと、これは失敬」



 アリスがコスモスのおでこにコツンとゲンコツを落としました。まあ、子供状態の時なので痛みを与えない程度の、拳で軽く撫でた程度のものでしたが。そしてコスモスはというと、叱られているというのにとても嬉しそうです。もしかしたら、アリスの気を引くためにわざと注意を受けそうなセリフを口にしたのかもしれません。



「しかし、こうなると大人ボディで来たほうが良かったかもしれませんね」



 コスモスはまだ然程食べていないのに、もう満腹寸前です。体格を気軽に変えられるのはいいのですが、食べられる量も相応に減ってしまうので、こんな風にご馳走が山のように並ぶ状況では口惜しい思いをするハメになってしまいます。


 テーブルの上にはピザ以外にも、この宴会の為に一頭潰したという子牛の丸焼き、村の釣り名人が釣ってきたばかりの骨ごと食べられる小魚の揚げ物、村で栽培したり山で採ってきた瑞々しい果物、種類豊富な果実酒に麦酒、下戸や子供用の果実水ジュースなどが所狭しと並び、しかも時間が経つと共にどんどんと新たな皿が追加されていくのです。


 アンジェリカやエリックが毎回レストランの料理に感激していましたし、あまり食事の味に期待できないのでは、とアリスは内心密かに心配していたのですが、良い意味で予想を裏切られていました。

 たしかに食材そのものの味、特に野菜類などは品種改良が未熟なのか、普段自分たちの店で扱っている物に比べると歯ざわりがスジっぽかったり、苦味が強めだったりしますが、調理によって尖った部分が丸くなり、充分に許容できる範囲内に収まっています。むしろ、多少の癖は個性として昇華され、楽しむこともできました。



「この村の人は良い物を食べていますね」


「いや、こんな豪華なご飯が出たの、ワタシも初めて見ました」



 アリスの言葉を即座にアンジェリカが否定しました。どうやら、今回の宴席の食事は彼女も見たことがないような特別版のようです。あくまで村の宴会の延長というような雰囲気ですが、今回魔王を招待するにあたり村の者たちも気合を入れていたのでしょう。



「そういえば、魔王さまたち遅いですね」


「長老さまと何を話しているんでしょうね」



 十分ほど前、魔王とリサは話がしたいという長老の希望で別室に移動しました。

 当然アリスたちも付いて行くつもりでしたが、当代の魔王と勇者にだけ内密の話があると言われてしまっては元魔王としては引き下がる他ありません。


 いったい、彼らは何を話しているのでしょうか?




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