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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語
173/382

どうすれば?

三話連続更新の二話目です。順番飛ばしにご注意ください。


 わたしリサは自室に戻ると、着替えもせずにベッドに倒れ込みました。

 全身が深い疲労と痺れにも似た倦怠感に包まれていますが、妙に目が冴えてしまい、とても眠れそうにありません。



 脳裏を過ぎるのは、つい先程の出来事。

 我が事ながら、人の想いを勝手に代弁するなんて、なんとまあ酷い勇者もいたものです。

 あの場の皆は、わたしの行動をどう思ったのでしょう? 単に行き過ぎたお節介だとでも考えてくれていれば良いのですけれど。



 まあ、魔王さんはアリスちゃんに好かれている事実を好意的に受け止めて、その場で婚約までしましたし、結果オーライと言えるでしょう。

 わたしもちゃんと笑顔で「おめでとう」と言えました。言えていたはずです。



 なんにせよ、これでわたしもやっと諦めることができそうです。

 そう、元々住む世界も種族も何もかもが違うのです。こうすれば全てが丸く収まりますし、皆が幸せになれるのです。

 それに、これはいつかは決断しないといけない問題だったのです。しかも先延ばしにすればしただけ傷が深くなる類の問題です。早い段階で決着をつけることができたのは、むしろ幸運だったと言うべきでしょう。

 そもそも魔王さんってあんな風に鈍い性格ですし、仮に良い仲になっても将来苦労するのは目に見えています。出会った時に親切にされてうっかり好きになっちゃいましたけど、友達くらいの距離感で付き合ったほうが気苦労はないはずです。

 もちろん失恋は辛いですけれど、初恋は実らないものと言いますし、いつかはこれも良い思い出に……、





「……ぅあ……あ……」



 ……ダメでした。

 いくらもっともらしい理屈をこねて自分を納得させようとしても、口を開けば漏れ出てくるのはかすれたような嗚咽ばかり。別室にいる家族に聞こえないように泣き声を堪えても、後から後から流れ出てくる涙ばかりは止められません。



 これで良かったはずなのに。

 ちゃんと納得してこの結末を選択したはずなのに。

 どうして涙が止まらないんでしょう?


 いくら考えても答えは出ません。

 熱を持った頭で思考の迷宮をふらふらと彷徨い、どこかに納得できる答えがあるはずだと考え続け、されど涙は溢れるばかり。

 錆び付いた歯車のように心が軋み、心に刺さった棘がじくじくと熱を持ったように痛みます。全身の水分が涙になって、身体が干乾びてしまいそうです。……いっそ、そのほうがいいかもしれません。



「……ひ……ぁあっ……」



 これで良かったはずなのに。

 これで良かったのでしょうか?

 わたしは、どうすれば良かったのでしょう?




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