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迷宮レストラン  作者: 悠戯
双界の祝祭編
145/382

閑話・計画と選択

本日二話目の投稿です

順番飛ばしにご注意ください


【……以上がターゲットの計画だ】


「そんなことを考えていたんですね」


【妙に勘が良くてな、探り出すのには苦労したぞ】


 リサは開会式の直前、聖剣が調査したコスモスの企みの内容を全部ではないにしろ主要な部分を密かに把握することに成功していました。


 聖剣の分体による遠隔探知はほぼ完璧なはずなのですが、コスモスは異様な運と勘の良さを発揮して監視の開始と同時に不審な行動を取ることがほとんどなくなっていました。

 不自然なほどに不自然さがない、とでも表すべきでしょうか。コスモスの場合、まともであることが既に異常だという確信がなければ途中で調査を打ち切っていたかもしれません。

 しかし、本当に「何か」があるのならば、それを完全に隠し切るのは不可能です。特に陰謀の規模が大きければ大きいほど、どうしても証拠が残ってしまいます。



 調査の途中、聖剣はコスモスの私室の隣にあった隠し部屋で暗号化された書類を発見しました。

 最近趣味で軍事暗号の解読法を学んでいた聖剣によると、イベント期間中の賭博や各種商業活動による利益の一部がコスモスが代表を務める架空の慈善団体に寄付される予定になっており、その時点ではてっきり金銭の着服が目的なのかと判断しそうになりました。


 しかし、隠し部屋の存在にしろ書類にしろ、どうにも違和感がありました。

 その気になって捜索すればすぐに見付かるような隠し方でしたし、慈善団体の代表の名前が偽名や代理人でないのも逆に怪しい。暗号も文字を一定の法則で記号化してあるだけのシンプルなものでした。あたかも発見されて解読されるまでが規定路線であるような。

 そもそも金銭の着服程度、コスモスならば堂々と悪びれずにやるでしょう。

 聖剣はその書類が本命を隠すための偽装工作であると判断し、調査を続行しました。



 そして更なる追跡調査の結果、ようやく本命に辿り着いたのです。

 本命の計画は一切書類に残さず、部下のホムンクルスたちとの最低限の接触と口頭による情報伝達のみで進行していました。

 その接触も最大限の警戒のもとで行われていましたが、昨晩遅くから今朝にかけての各国の使者による急な訪問、それによって発生するコスモス自身の予定外のスケジュールの変更により、開会式の直前になってようやく隠れ忍んでいる聖剣の分体の前で情報交換の現場を押さえることができたのです。寝不足により、コスモスの注意力が普段より散漫になっていたおかげもあるかもしれません。



【独断だが既に分体は消去済みだ。証拠を残すのは危険なのでな】


「ええ、ご苦労さまでした」


【それで、我が主はどうするのだ?】



 今ならばまだコスモスの本命の計画を止めることも可能です。

 聖剣はリサに今後の対応を仰ぎました。



何もしません・・・・・・



 リサはコスモスの計画を知り、しかし邪魔する気はありませんでした。



【そうか……ならば我は何も言うまい】


「せっかく調べてもらったのにごめんなさい」



 結局、聖剣が調べても調べなくても結果は同じだったのかもしれません。

 しかしリサはあえて知った上で、自分の明確な意思で、何もしないことを選択したのです。





連続でもう一話投稿します

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