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これからどうしたら良いのだろうか。
俺以外のプレイヤーがここから脱出するには、魔王となった俺を倒さなくてはならない。
俺がここから脱出するには、俺以外のプレイヤー全員を倒さなくてはならない。
そして、ゲーム内で死んだ者は現実世界でも死ぬ――デスゲーム。
「ミオ、どうした? 運営は何と言っていたんだ?」
シズキのその言葉で、俺は我に返った。
「ミオちゃん、何かあったの?」
「だ、大丈夫だ。気にしないでくれ」
俺が死ぬか、俺以外が全員死ぬか。
本当にどちらか一つしか選べないんだろうか? 妄言の可能性は?
俺たち三人全員が生き残る術は、ないというのか……!?
ピー、ピー。
警告音だ。いったい何だ?
『プレイヤーの諸君、大事なお知らせだ』
……さっきの男の声! ということは、デスゲーム開始の通達か!?
「くっ、くそっ!!」
俺は一目散に逃げ出した。
「ミオ、どこへ行くんだ!?」
「ミオちゃん!?」
俺が魔王だと知られたら、プレイヤーたちが一斉に襲い掛かってくるかもしれない。
嫌だ、俺は死にたくないっ!!
どこへ逃げたらいいんだ、草原の奥、さらに奥か!?
奥へ行くほどモンスターの強さは増す。よって、赤スライムより強いモンスターが出る可能性がある。
プレイヤーたちはモンスターに殺されるのを恐れるだろうから、そう簡単には近づいてこないだろう。
俺は【魔王化】のおかげで高ステータスだから、そう簡単にやられないだろうし。
……案の定、さっきの赤スライムの何倍も大きい赤スライムがいた。
さすがにこいつは一撃じゃ無理か……?
俺は巨大赤スライムと距離をとりながら、奥へ進もうとする。
お、攻撃してこない。ノンアクティブモンスターか。なら無視して先を急ごう。
草原を抜けると、第二の町に辿り着いた。
始まりの町と比べると、こじんまりとした田舎という印象だ。
プレイヤーの姿をちらほら見かける。
だが、俺の正体に気づいている様子はない。どうやら自分から『俺は魔王だ』と言わない限りばれないようだ。
さて、どうしようか。
とにかく俺は死にたくない。だが、俺が生きるためには何千人もの命が犠牲になるというのも耐え難い話だ。
外部からの助けを待つしかないか。
それまで生き延びてやろう。
そのためには、スキルの強化だ。装備も買い換えないとな。【魔王化】で強くなってはいるものの、それだけで生き延びることができる保障はない。
何事も強いに越したことはないのだ。
まずは全てのスキルを試して、お金を貯めて……。よし、この辺にモンスターが出る森があるらしいから、行ってみるか。
じゃりじゃりとした大地を蹴る。周囲には鬱蒼とした木々。
時折顔を覗かせるのは、トカゲ人間のような姿をしたモンスター。
見つけ次第【投擲】で石を思い切り投げつける。どいつもこいつも一発当てただけで倒れてしまう。ぬる過ぎるな。
現在のスキルレベルは【ダガー】Lv7 【投擲】Lv3 【跳躍】Lv2 【隠密】Lv1 【死魔法】Lv3 【闇耐性】Lv1 【回避力上昇】Lv8 【魔王化】Lv10 だ。
有用なスキルは最高レベルである99を目指そう。使わないスキルは別のスキルに変えたいんだが、どこで変えられるんだっけ。
「……お?」
でかいトカゲ人間発見。こいつは強いんだろうか。
まあ、俺はスキルレベルを上げるのが目的であって強い敵を倒す必要はないし、うっかり死なされたら堪らないし、ここは退散させてもらうぜ。
「きゃああああ! 誰か、誰か!」
……って。
仕方ない、助太刀してやるか。
とりあえず【投擲】で巨大トカゲ人間に向かって石を投げてみる。
……ふむ、さすがに一撃というわけにはいかないか。
なら、ダガーで切り刻んでやる。
巨大トカゲ人間が口から炎を吐いた。俺はそれを【跳躍】で上に跳び回避。
巨大トカゲ人間の頭を蹴り、後ろに回りこむ。
背中目掛けて縦横無尽に切り裂く。
すると息絶えたのかぐらりと倒れこみ、そして散っていった。
「あっけねぇな」
心底そう思った。
ところで、悲鳴を上げていた彼女は無事だろうか?
「あ……」
尻餅をつき、足をがくがくと震えさせている。
「もう大丈夫だ」
「な、何よ、かっこつけちゃって。べ、別に助けてくれなんて頼んでないし?」
……礼くらい言ったらどうなんだ。腰抜かしてるくせに。