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第6話

まぁ…結論から言うと…一ヶ月で捕まえられなかったんだな…これが…


ぶっちゃけチコは命賭けの修業をずっとしてきた訳だ

それをたった一ヶ月の修業で追い付こうなんて、無茶な話だと思いませんか?


いくら俺の方がポテンシャルが高いと言っても、チコはなんだかんだと手加減するしね…


妖気を意識的に引き出せるよーになったから、結果は出てるけどさ

引き出せるよーにはなった…しかしチコに言わせたら、全開には程遠いらしい

妖気モードにすると、上がった身体能力に振り回されるっつーのに、まだまだ修業不足だ…


「今日は京太郎様とお出かけで嬉しいですよ~」


はしゃいでるチコを見る

チコのお願いってのは、「映画館で映画を観たい」だった

そのくらいで済んでホントに良かった…

チコ曰く…田舎には映画館などなく、修業ばかりだったので映画館で映画を観るってのが夢だったらしい

テレビでは観た事あるらしい


「いいか…映画館にはマナーがある

上映中は大きな音を立てない事、会話も必要なだけ、なるべく小声でだ

あと用もない時は席を立つなよ」


「分かりました」


と笑顔のチコ


「例外な時もあるが、極力守るよーに」


「つまり…暗がりで若い男女…触れる手と手…心臓だけがドキドキしてるのに、止まる時間…やがて見つめ合い…」


なんだ…何がスイッチで暴走した…このダメ猫は…


「だ…ダメです…京太郎様…こんなトコじゃ嫌…恥ずかしい…周りに気づかれますよ…

そんなトコ…ダメです…声が出ちゃう…って時も声を出しちゃダメなんですね?」


「そのシチュは100%ないがその通りだ」


「無いんですか…残念ですぅ」


残念がってろ…


隙あらば暴走するダメ猫にこのまま師事していいのか?と言う疑問が浮かぶが、それしか選択肢がないのも、また師匠しては優秀なのも事実だ

俺は一ヶ月前より確実に強くなってる


映画は感動物を選んだ

ダメ猫にどれが観たいと言うのはないらしい

だから無難なのを選んだ

ラブストーリーは俺が嫌だ

アクションは、チコなら自力で再現できるだろう…

実写でノンフィクションだが…


ホラー映画もあったが、妖怪がホラー映画を観てもつまらないだろうと、思ったんだが…本物より怖いからホラーは嫌だと言われた

最近のホラーは本物より怖いのか…侮れないな


取り合えず映画を観たが、そこそこ面白かった…

後半、涙腺が壊れたかのよーに泣いてるチコがいたが…


「映画館凄かったです!

大きい画面で、音が凄くて!」


そりゃ…画面が小さく、音がしょぼけりゃ映画館の意味ないわな…


「久々に映画館で映画を観たが、たまにはいいもんだな

また来るか」


「できればご一緒したいのですが…」


はぁ…伝わらなかったか…


「俺はチコを誘ったつもりだったんだがな」


「………喜んでご一緒します!」


一瞬思考停止しやがった

そしてかまど亭に移動する

もうすぐ夕方だ

ついでに夕飯を食べようと言って連れて来た

中途半端な時間のせーか客はいない

大丈夫か…この店…

映画の感想なんかをテキトーに話た後に、本題に入る



「もうすぐ夏休みだな?」


「夏休み…みんな開放的になる季節…」


あれ?地雷だったか…

しかし相談しなきゃならない話なんだが…

脳内妄想で静かに暴走中のダメ猫を現実世界に帰還させなければ…


「おーい…チコ、聞いてるか?」


「はっ!あの…夏と言えば海ですよね!

水着とか持ってないんですけど…どんなのが好みですか?

あたしとしてはみ…水着なんて着た事ないから、ちょっと緊張しますぅ

パレオの水着とかなら恥ずかしいの我慢できるかなぁ…ビキニだとちょっと自信ないです…無いのは自信より胸なんですが…って何を言わせるんですか!」


おぉ…完璧に暴走しとるな…

最近分かったが、一度暴走モードに突入したら、収まるまで放置した方が早い

一々突っ込んでると、別の方向に暴走するから、中々収まらない


「トップレスとかは絶対ダメです

京太郎様以外に見られるのは嫌ですから!

夏…開放的になる季節…水着の男女…人影ない岩場とか、誰もいない沖とか…ダメですよ~京太郎様~

見られたらどーするんですか~

嫌とかじゃなくて…あの…恥ずかしいですよ…」


今日の暴走は長いな…早く終わらないかな…


「初心者には荷が重いってゆーか…初めては二人きりがいいってゆーか…とにかく困りますぅ」


いや…今、困ってるのは俺なんだが…


「で…そろそろ気がすんだか?」


「最近の京太郎様はスルースキル上がりすぎです」


多分だが…チコの妄想力に比例して、スルースキルは上がってるんだと思うぞ…


「夏休みの予定なんだが、ジジィのとこに行くつもりだ」


チコが首を傾げている

なんか不思議そうだな


「言いにくいんですが、今の京太郎様じゃお館様には敵わないですよ?」


はっきり言ってるじゃねーか…


「んな事は分かってるよ

例えばだ…実戦的な組手をやるとして、チコは俺の事を殴れるか?」


「無理です!京太郎様に手を上げるなんて出来ません」


チコが修業に追いかけっこを選んだのもそれだろう

追いかけっこじゃ身体能力を上げられても、戦闘スキルは鍛えられない

最初の戦いの時もそーだった

何度も投げられたが、俺にダメージがないよーに転がされたと言う訳だ


「お館様か、お館様直属の七部衆に鍛えてもらいたいって事ですか?」


「そこまで贅沢は言わないが、そんなトコだ」


「うーん…お凛様と紅蓮様以外ならいいですよ

あの二人はどーかしてます…」


珍しい…チコが遠い目をしてる…


「お凛様って妖狐のお凛だよな?

紅蓮って誰だ?」


「鬼火の紅蓮様です

お凛様が相手だと…いっそ殺して下さいと土下座したくなります

紅蓮様だと…なんでまだ生きてるんだろう…と泣きたくなります」


「どんな修業だよ!」


「はう!お凛様!紅蓮様!悪口じゃありません~だから堪忍して下さい~

あの修業と言う名の拷問だけは嫌ですぅ~」


チコの奴…トラウマと戦いだした…

そんなに凄いのか…


「私、両方とも知り合いよ」


店主のほむらさんだ


「お二人には内密に~

悪口じゃないですよ~」


チコがほむらさんに泣きついてる

そんなチコの頭を優しく撫でながら「大丈夫…言ったりしないから」と、諭してるよーだ


「妖狐のお凛は幻術の使い手よ

いつ幻術に嵌めたのか分からないくらい…

彼女と戦った人は、暫くの間、幻と現実の見分けがつかなくなるの

鬼火の紅蓮は火炎術と体術の達人

実体化してる時には弱点の氷結系は効かないし、実体化を解けば、物理攻撃は効かない

どっちも超がつくほどのドSよ」


うげ…トラウマになりそーな奴等だな

この二人は洒落になりそーにない


「鉄壁の白爺様に修業を頼むといいですよ

修業は厳しいですが、言ってる事が的確で分かりやすいですし、心に傷を負う事もないです」


白爺か…確かぬりかべだったよな

とは言えぬりかべの姿は見た事ないんだが…


「お館様の親友です」


そーなのか…知らなかった


「京太郎様もお仲間集めたらどーですか?

子泣き爺とか砂かけ婆とか、一反もめんにねずみ男…猫娘はもういますけど…」


「髪の毛飛ばしたり、体内電気で発電したり、虎縞模様のチャンチャンコを着て、下駄を穿けってか…」


「ダメですよ!一番大事なのは短パンです!!

他を忘れても短パンだけは忘れちゃダメなのです」


チコにはどーやらショタっ気があるらしい

なんつーか色々ダメな奴だなぁ…


相変わらずだけどな…

こんな騒がしい日常も悪くない気がして来た…

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