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第参話

本屋を出た俺逹は、昼飯を食べようと店を探す事にした


「何が食べたいとかあるか?」


「なんでもいいですよ

はっ…ここは京君はぁとと答えるべきでした!」


戯言はスルーするとして…「突っ込みがないと寂しいですよ~」…戯言はスルーするとして…


「俺の知ってる洋食屋でいいか?」


「スルースキルに磨きがかかってます…

あたし洋食のマナーとか詳しくないですよ?」


「小さな街の洋食屋だからマナーとかは大丈夫だ

言えば箸も貸してくれる」


「それなら安心です

お任せします」


行こうとしてる洋食屋はガキの頃から、親に連れられて行ってる店だ

ついでに言うとある妖怪の夫婦が経営してる

俺の事を「若」と呼ぶのが嫌なんだが、ワンコを連れて行くにはちょうどいいだろう

この街に住む妖怪の顔役みたいなもんだ

ワンコの顔見せになるだろう

一応だけどな

何か言ってるワンコにテキトーに相づち打ちながら歩いてると、いきなり声をかけられた


「風祭に七尾さんじゃん

こんなトコで何してるんだ?」



振り向く綾瀬陽菜がいた

こいつは小学校からの腐れ縁の女の子だ

口調は何故か男口調だが、出るとこは出て、引っ込むとは引っ込むプロポーションの持ち主

性格も男に近いが…男子にも女子にも人気がある


「陽菜さん!」


ワンコは一目散に抱きついた

なんかワンコが凄くなついてるんだよね

構わないんだが…


「七尾さん…抱きつくな!胸を揉むな!助けろ風祭!!」


風祭って俺の名字ね


「いいな~陽菜さん…こんな胸、あたしも欲しいなぁ」


「それは分かったから、離れろ…せめて道端で胸を揉むのはやめてくれ…」


綾瀬は真っ赤だ…

そろそろ助けるか…ワンコのうなじの辺りをキュッと摘まむと、急に大人しくなるワンコ…猫のサガだな


「助かった…」


ワンコから離れる綾瀬…相当恥ずかしかったらしい

耳まで真っ赤だ


「ワンコ…同性とは言え他人の胸を許可なく触るな…分かったか?」


「分かりましたから離して下さい…悲しくなりますぅ」


理解したらしいので離す


「全く…七尾さんは顔合わせる度にこれだ…」


そーなのか?と思ったが流石に「ワンコに会う度に胸を揉まれてるのか?」とは聞けない…


「だって陽菜さんの胸、見た目通りたゆん…「わー!」うぐっ…」


今度は綾瀬がワンコの口を塞ぐ…たゆんたゆんなのは説明されなくても、なんとなく分かるが…


「七尾さん…勘弁してくれ…」


ワンコが必死でもがいてるが、綾瀬の拘束は続いてる…ワンコが苦しそうだ


「綾瀬…ワンコ、窒息しかけてねーか?」


「あー!ごめん」と、ワンコを解放する綾瀬


「死ぬかと思いました…人生で2度目ですけど…」


なかなか波乱万丈な人生だな…今回は自業自得だが…

まったく…こいつは行動が突拍子もないんだよなぁ

性質が猫だからか、たまに意表を突く行動をする

その辺りは治らんだろうとも思ってる


「話を戻すが、二人で買い物か?」


「あぁ…本屋に来たついでに昼飯でも食うかとね」


ワンコがブンブンと頷いてる


「陽菜さんもご一緒にどーですか?」


満面の笑みで綾瀬を誘うワンコ…

まぁ…一人増えても問題はない


「かまど亭だけどな」


洋食屋なのにかまど亭なんて変わってる名前だが、味はすこぶる良いんだ

知る人ぞ知る名店である


「あそこのロールキャベツとハヤシライスは絶品だからなぁ

行きたいのは山々だが、先約があるんだ」


しかもリーズナブルときもんだ


「先約があるじゃしゃーねーな

今度一緒に行こうぜ」


と、右手を挙げると綾瀬もパンと右手で叩いて来る

ガキの頃からの約束の印だ


「ああ!またな!二人とも」


「ああ…」


「明日学校でね」


学校では、ワンコはうちの隣にあるアパートに1人暮らししてる事になっている

親父が何件か持ってるアパートの一つだ

うちの収入源になっているが、隣のアパートに住んでる住人は、ほとんど妖怪なんだ

妖怪とバカにしてはいけない…

結構な資産家が多いんだ

古い名家が多いからな

詳しくは知らないが、うちが食うに困る事もない

うちの両親だって働いてる

妖怪絡みのネゴシエーターと言えばいいのか…

母が本気を出したら、止められるのはジジィくらいだからなぁ

大抵は話し合いで解決するそーな

それともOHANASIってヤツかも知れないが…


「着いたぞ…ここがかまど亭だ」


「ここですか…なんかこじんまりとした洋館みたいな作りですね…」


だから洋食屋なんだよ

名前から分かるよーにここの今の店主は、かまどの付喪神だ

名前を日乃森ほむらと言い女性の姿をしている

現在は主人を亡くした未亡人と言う体で店を営んでいる

そのほむらさんの息子と言う体で、中華鍋の付喪神の鉄也さんが店を手伝っている

数年したらほむらさんは別の姿に化け、鉄也さんの嫁と言う体で店を続けると言う話だ

俺のガキの頃は、鉄也さんは哲夫と名乗り、ほむらさんの旦那と言う体だったはずだ…

全く便利な事だなぁ…と思う


「複雑な関係ですぅ…」


ワンコに簡単に説明したら、頭を抱えてた…

そんな複雑じゃないんだがな…と思いつつ、店に入り2人に挨拶して空いてるテーブルに座った


休日の昼時だと言うのに、店には客がいない…

まぁ…作りが作りだから入りにくいせーもあり、繁盛してるとは言えないのは知ってるが…


「若!いらっしゃい!」


「まぁ…若が女の子連れて来たわ…

噂の花嫁候補さんね」


噂になってるのかよ!?

ワンコがアパートに入る時に、住人達に「京太郎様の花嫁候補です」って挨拶したらしいから、噂になってても不思議じゃないか…


「は…初めまして!京太郎様の花嫁候補の七尾一子です!」


「七尾一子さん…七尾って事は猫又ですね?」


「はい!よろしくお願いします」



無事に顔見せも終わったし、あとは飯を食って帰るだけだな

注文は任せるとワンコが言うので、オムハヤシを頼む

オムハヤシはメニューには載ってないが、注文すれば作ってくれる隠れメニューだ

旨いモノを食べてる時、無言になるのは人も妖怪も変わりなく…無言のまま食べ終わる


「美味しかったですよ~」


ほむらさん達も、ワンコの一言に満足してるらしい

食後の珈琲を飲んでいると、ワンコが真面目な顔でこっちを見てる

「なんだ?」と訊いてみると


「やっぱりワンコはやめてもらえませんか?

どーしても受け入れ難いですよ…」


うーん…俺としても真面目に頼まれたらなら、変えなきゃいけないなぁ

本人が嫌だから変えてくれと頼んで来たんだから、ホントに嫌なんだろう

もっと早く言えばいいのに…


「うーん…一子は言いにくいから、チコでもいいか?」


「それならOKですよ」


満面の笑みだ…犬なら尻尾を振ってそーだな

つーか、やっぱこいつは犬っぽいよなぁ

試しに「お手」と言って手を出してみた

迷わず手を乗せて来たチコ「おかわり」と言うと反対の手を乗せて来た…そして期待に満ちた瞳でこっちを見つめてるチコがいる


「猫としてのプライドはどーした!?」


「酷いです!せっかく猫のプライドを捨てたんですから「いや~ん…そんなのついてませんよ~恥ずかしい~」って言わせて下さいよ!」


「知るかー!」


「はっ!これが羞恥プレイってやつですか!?

でもそーゆーのは保健体育の実技の後じゃないと…」


「どこのスパッツ少女だ!お前は!!」


日乃森さん達に大笑いされて、「若達、お似合いだ」と言われた

これと同類だなんて思われたくない…

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