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うささんとねこさん

うささんと、ちょっとだけゾクッてした話

作者: uyr yama




夜、唐突に目が覚めた。

目をこすりながらベッドに備え付けられているスタンドのライトをつけ、目をこすりながら時計を見た。


針はAM2:00ジャスト。

起きる予定の時間よりも、5時間以上は早い。

布団を頭までかぶり、もう一度寝ようかと目をつぶるが、なんとなしに布団から出て冷蔵庫のある台所に足を運んだ。

最近お気に入りのミカン成分の入った水で喉を潤し、せっかくなんでついでにトイレをすませた。

ジャーッと水を流し、妙にスッキリした気持ちでトイレから出ると、最初の一歩目で足の裏がぶにっとなんだか柔らかい感触。


やべぇっ!?


勢いよく身体を前傾体勢に持って行くと、今踏みそうな柔らかい物体から足をどける。

間一髪といっていいだろう。

うまい具合、それを踏みつぶすのを避け、だけども体勢を崩した俺はそのまま床に転んだ。


ドシンっと結構いい音を響かせた俺は、下の階に響いただろうな……と心の中で下の階の人に詫びつつ、ぶぅぶぅ鳴きながら転んだ俺の脇の下に潜り込んできた柔らかい物体の頭をガシッと掴んだ。


「う~さ~、おまえってヤツわ……」


痛む背中と膝頭。ドックンドックんと激しく鼓動を繰り返す心臓の音。

恨みの籠もったその台詞に、だけどもうささん、そんなの俺には関係ねぇ、とばかりに撫でろ撫でろとせがんでくる。

仕方ないな……と多分俺は苦笑してたんだろう。

上体起こしつつ、大きくため息を吐くと、ゆっくり優しく耳のある頭からお尻まで撫でた。

それを何度も繰り返しながら、うささんの寝床であるゲージに視線を送った。






……突然だが、こんな話がある。


俺の母親の話だ。


母が小さい頃、今はもう死んでしまった祖父にせがみ、ようやくの思いで買って貰った子犬がいた。

母はその子犬が大好きで、だけどもその子犬は飼ってから一週間もしない内に亡くなったのだ。

それが、母のトラウマである。

どうしてか? と言えば、妙に人懐こかったその子犬。

夜に母の布団の中に潜り込み、そのまま母に押し潰されて……

朝起きた母の下には、押し潰されてお亡くなりになった子犬が一匹。


そりゃートラウマにもなるよ。そう思った子供の頃の俺。

ペットを決して飼うことのない、我が実家の話である。



まあ、そんな訳で、子供の頃から動物好きな俺は、だがしかし、こうして一人暮らしをするまでペットを飼ったことはなかったのだ。

大学の入学に合わせ、ペットOKのマンションを探し、ついに念願の初ペット、うささんを家族として迎え入れた。

その内に、大学で出来た友人の猫が出産し、貰い手のなかった一匹の子猫……ねこさんを引き取り、今の我が家がある。


そして、そんな我が家の鉄の掟が、夜寝る前にゲージにしっかりとうささん、ねこさんを入れてから寝ることだったんだけども……


いったい何があったんだろうか?

天井の部分が半壊し、何故かうささんゲージにねこさんが眠っている。

ねこさんゲージはもちろん空っぽだ。

こちらも天井の部分が半壊している。


なに? ジャンプして頭突きでもしたのっ!?


朝にケージの天井部分がずれてることは確かにあったけど、こんな状況初めてよっ!?


そんな感じで、ちょっとリアルにポルポル状態だった俺だったのだけども……


不意に、本当に不意に、うささんが俺の撫でる手から逃れて、玄関に身体を向け、二本足で立った。

ジッと視線を固定させたままのうささんに、何だろう? と思いながらも手を伸ばし、再びうささんを撫でようとしたその時だ。


うささんが、タンタンっと床を叩く。


何度も、何度も。


身体を触れれば、いつもはダラ~っと柔らかい身体が、緊張しているのか、とてもピシッと引き締まっている。

しかも、決してこちらに関心をよこさず、タンタン、タンタン、とひたすら繰り返すだけ。


初めて見せた、そんな様子に、俺は理由の良く解らない恐怖に駆られ、急ぎうささんを抱き上げる。

だけども、腕の中で暴れ倒すうささん。

こんな反応も初めてで、思わず俺はうささんを逃がしてしまうのだけども。

うささんは再び玄関を向いて2本足で立ち上がると、タンタン、タンタン……

気づけば寝ていたねこさんも起きて、だけどもこちらはゲージの中で身を縮こまらせていた。


……あれ? もしかして何かいるの?


そう思った瞬間、背筋がゾクゾクっとした。

たぶん、鳥肌が出ていただろうとも思える。


俺は急ぎベッドに飛び込み、鉄の掟も気にせずに布団を頭まで被って目をつぶる。


タンタン、タンタン……タンタン、タンタン……


うささんの鳴らす床の音を聞きながら、気づけば意識は夢の中。


朝起きたらうささんも、ねこさんも、いつもと同じ甘えん坊。

深夜の床叩きなんてまるでなかったように……


その日、行った大学で、教授にその話を披露したら、ウサギのそれは警戒。

群れの仲間に危険を知らせると同時に、危険の対象に対しての威嚇だと。


一体、ナニに警戒していたのか?


そんな、ちょっとだけ怖かった深夜のお話。








……に、しても思ったのだが、もしかしてウチのリーダーって、うささんなのか?


ねこさんがうささんに絶対服従してる様に、そう思った俺だった……





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― 新着の感想 ―
[一言] これは… 危険に立ち向かううささんを讃えれば良いのか… うささん、虫かなんかだよね?口に出しちゃ寝れなくなっちゃう系ではないよね??? 何はともあれ、面白かったです!
[良い点] 何かいたんですね、きっと。 動物って、たまに何もないところをじーっと見つめて固まりますよね。 あれ、怖いです。 たまたま出会ったうささんシリーズ、癒されました。 ありがとうございます。 …
[一言] うん、ちょっとだけ……ちょっとだけ、ゾクッとしたんだ。 ちょっとだけだよ。 ちょっとだけだってば。 ……しんじてよ。
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