第三夜★死神が笑うとき、僕らは眠れぬ夢を見る
間をあけてすいませんでした。
評価及びお気に入りにこの作品を加えていただい方、本当にありがとうございます。
それだけで伝助の投稿スピードは上がってしまいます(当社比)
それでは、本文をどうぞ~
1
「じゃあこの中で入部希望者はいるかな?」
人の良さそうな野球部部長が質問しました。
「はいっ」
「神薙くん。手を離してもらえませんか?」
笑顔で元気よくあがる神薙くんの右手。左手では僕の手を掴み無理やりに上げさせようとしている。神薙くんは力が強い方ですが、僕も負けていなかったのでお互いに腕が震えるまでの激しい攻防になりました。
けれどばっちりと僕も部長さんの目にとまり、神薙くんと一緒に先輩の投球をバッティング体験をさせていただきました。やりたくありませんでしたが。
神薙くんは流石野球部入部希望者。先輩の鋭い球を二回カットし、最後の三球目は見事ヒットを記録しました。
クラスからも野球部部員からも歓声があがる。先輩も本気ではないとはいえ、速くて重い球を捉えたのはとてもすごいです。
「ありがとうございましたっ」
「うん。君もいい腕してる。入部を楽しみにしてるよ」
「はいっ」
マウンド場で握手しあう神薙くんと部長さん。
あつい光景に再び拍手が送られた。
握手が終わると照れたように神薙くんがこちらへ戻ってきた。僕の目の前までくるとバットを渡されました。
「よし、気張って行ってこい!」
「適当にやります」
笑顔の神薙くん(元凶)を視界から外し、一礼してからバッターボックスに立つ。
「悠夜く~ん。頑張って」
「応援してますわ」
玲さんと恋華さんの声援が聞こえる。それと同時に一部の男子(先輩も含む)から強烈な殺気が出ていた。
それがまずかった。
適当なタイミングで振って三振しようとしたのに、殺気を感じることで神経が鋭敏になってしまい、気付いたらストレートの白球を打ち返していた。
……やってしまった。
野球部入部希望者よりも綺麗に長打を決めたクラス委員長。今の僕はそんな風に写っているのでしょうね。
そう言えば師匠は修行がある程度終了した段階で
『今なら突然殺気を感じたとしもきっと大丈夫』
なんて言ってましたが、大丈夫どころか僕にとっては大惨事ですよ。
しばらくボールの軌跡を見ていましたが、観念してすごく目をキラキラさせている野球部員さんへ視線を向けました。
「「「野球部に入らないかい!?」」」
「お断りしますっ」
その後の体験では、ある意味予想通り野球部は(本当は良くありませんが)いいとして、サッカー部やテニス部でも体験(生け贄)に僕が選ばれ、というよりも素晴らしいD組の団結力のせいで、先輩と対戦することになった。対戦する度に
僕がスタンバイする→玲さんと恋華さんの声援→男子が殺気を放つ→殺気に反応して神経が研ぎ澄まされる→好プレー
という、負の連鎖が発動してしまい、野球部以降の部活では勧誘を断るのがとても苦労しました。
グランドで行われる部活動見学は一段落し、僕らD組は卓球や柔道等の室内競技を見に行くため再び下駄箱へ向かう。
「それにしても、めんどくさいニャー。室内競技終わった後でグランド行けばいいのに。これじゃ二度手間だニャ」
問題発言の多い天宮くんですが、これは僕も同意です。この疲労感を背負ったまま、部活動見学を続けるのは流石におっくうです。
「しょうがないッスよ。CとD組はグランド、AとB組は室内競技から回ることになってるんスから」
天宮くんの横では刈柴くんが合いの手を入れていました。刈柴くんの言う通り、この部活動見学は先生達が勝手に考え生徒の意見を100%無視されたローテーションが組まれていて、悲しい中間管理職(クラス委員長)の僕は担任に渡された用紙を見ながらクラスメイトを誘導するだけです。え、担任はどうしましたって? おそらくまだ寝てるんでしょうね、保健室で。もちろんずる休みです。
「大丈夫、悠夜くん?」
「顔色が優れませんが、少し休んではどうでしょうか」
「心配していただいてありがとうございます。僕は平気ですし、職務をしなければいけませんので」
僕の状態を見かねてか、玲さんと恋華さんが心配してくれました。気持ちはとても嬉しいのですが、この二人も原因でないとは言いきれないのでなんとも難しい心情で口を開くと、玲さんはおもしろそうにクスリと笑った。
「どうかされました?」
「ううん。でも、悠夜くんって偉いよね。嫌がってたクラス委員長の仕事ちゃんとやってさ。実はまんざらでもなかったりして?」
「そんなのではありませんよ。でも、役職をもらった以上はきちんとこなさなくては」
「その発言だけでも十分真面目だけどな。悠夜くんってもしかして、不幸請け負い体質?」
「否定はしませんが……」
思えば僕はこれまでいろんな意味でいろんな貧乏くじを引いていた気がします。
とりあえず、室内競技だけは何か厄介ごとがないことを祈りましょう。
けれど、そんな僕のささやかな願いは無惨に塵ました。
なぜなら不幸は回避しようとしても、向こうの方がまるで死神のようにつきまとうのですから。
2
「はぁ。疲れました」
例え室内競技であっても、スポーツということには変わりなく、毎度のことのように先輩との交流対戦がもうけられた。
そして、すっかり生け贄に選ばれた僕は、屋内でも負の連鎖を発動してしまい先輩方の熱い勧誘を断るのに必死でした。
「けど、悠夜ってなんでもできんだな。野外競技を一通りこなした時は驚いたが、室内競技もできちまうなんて。お前って万能人間だな」
「そうでもないですよ」
僕の横で神薙くんが驚きと賞賛をまじらせてしゃべる。褒められるのは光栄ですが、神薙くんが僕を野球に薦めなければこんな疲労を感じずにすんだのに。
「でも、それは言えますわよね。悠夜さんって、何かできないことがありますの?」
恋華さんがさも興味があるという顔で聞いてきました。そこまで僕って万能に見えます?
「もちろんありますよ。たくさん」
狂おしいほど願っても、叶えられないものはたくさんありますよ。
「でも、いい加減俺も疲れたッス。次で終わりッスよね?」
刈柴くんが投げ槍に言うのも無理はないでしょう。
この部活動見学は言い方を悪くすれば、強制的に行われるので前半に自分の興味がある部活の見学を終えた人のほとんどはめんどくさそうについてきている。
「そうですよ。最後は剣道部です」
「マジかニャっ。やっほーい」
「どうしたんです? 急に元気になりましたけど。何かあるんですか?」
刈柴くん同様だるそうに歩いていたのに、天宮くんは目に見えてテンションが高くなっていた。まあ、もともと高めの人ですが。
「何かってお前知らニャいのか? 剣道部には麗しの生徒会長が所属してるんだニャ。お近づきになるも良しっ。遠くから眺めるのも良しっ。そんな剣道部を見学できるなんて、テンションが上がらないわけないニャ!」
拳を握りながら力説する天宮くん。直視できないのは僕だけでしょうか。
天宮くんは結構大きな声でしゃべっていたので、他のクラスメイトにも会話が聞こえ、生徒会長に会えるということで意気揚々と歩みを速めた。すごい変わりようですね。一時はゾンビみたいに見えて少し怖かったのに。
「……生徒会長さんですか」
僕はというと、周りとの温度差を感じ心の中でため息をつく。
「どうしたの。やっぱり悠夜くんも美人生徒会長さんが気になるの?」
玲さんが怖い目で、美人というところを強調しながら聞いきました。ポケットに手を突っ込んでいるのは僕の返答しだいでは包丁を即座に出す準備、と思ってしまう僕は臆病者なのでしょうか? 見れば恋華さんもジト目で僕を見ています。
どうしましょう。
生徒会長に昨日『睨まれた』とは言わない方がいいですよね……
「実は昨日の生徒会長の祝辞のさい、偶然目があってしまいそれ以来気になっているのです」
刹那。
僕の顔、正確には左目をめがけてアイスピックが飛んできた。
間一髪で察知し頭を下げて避ける。アイスピックはそのままダーツのように壁に突き刺さった。
思わず床に腰をつけ、投げた人を恐る恐る伺う。
玲さんは悲しみ2割、怒り3割、狂気5割の眼差しで僕を見ていました。
「どうして私とは何回も目があってるのに気になってくれないのっ。私がポニーテールじゃないから!? 私が年上じゃないから!?」
「落ち着いてくださいっ。それと、もう一本アイスピックを構えないでくださいっ」
このままでは両目に眼帯をしてすごさなくてはならなくなりそうです。
「悠夜さんも月弦さんも落ち着いてください。単純に刺すよりも、それで眼球をかき混ぜる方がよっぽど苦痛ですわ」
「落ち着けませんよ。どうしてそんな嫌なベクトルにアドバイスをするんですかっ。玲さんも笑顔でなるほどと言わないで速く手に持っているそれをしまってくださいっ」
「全く悠夜さんったら……。昔はボーッとしてるだけでしたのに、今となってはいろんな女の子に目移りしてしまって。いけない人」
「いけないのはあなたの発言ですからね!」
「ねぇ、悠夜くん。どうして私のこと見てくれないの? そんなに生徒会長や霧坏さん(きりつき)の方がいいの?」
「あのー、見たいのはやまやまなのですが、僕の顔を押さえながらアイスピックを構えられたらそれは生存本能が働いてとてもじゃありませんが向けません」
「あ、そうだ、いいこと考えた。悠夜くんの目がそこにあって動いちゃうからいけないんだ。私が持ってれば、ずっと私のこと見てくれるよね? そうだよね? だから、さ――左目えぐらせて?」
「とてもじゃありませんが、Yesとは言えませんよ!?」
「ありがとう。嬉しい」
「何をどう聞き間違えたのかあえて追求しませんが、笑顔で僕の目にアイスピックの照準を合わせないでくださいっ」
振りほどこうにも、力が強く到底かなわない。細い腕のどこにこんな剛力が宿っているのでしょうか? あーっ、あと数ミリで左目がアイスピックと――
「ちょっ、月弦も流石にストップっ。刃傷沙汰はまずいって」
「霧坏さんも黒い笑み浮かべてちゃ駄目ッスよ!?」
廊下で惨劇が繰り広げられようとしたその時、神薙くんと刈柴くんが助け船を出してくれました。地獄に仏とはこのことなんですね……。天宮くんは『ヤンデレヒロインによる猟奇エンドが……』とどこか残念そうに呟やいていましたが。
玲さんと恋華さんはしぶしぶといった様子で諦め――
「うん。生徒会長の両目をえぐるので我慢する」
「わかりましたわ。闇討ちをかける機会なんて、いくらでもありますものね」
――諦めてくれたのでしょうか?
玲さんは当たり前のようにアイスピックをポケットにしまわないでください。そこは武器庫なのでしょうか?
僕のピンチを平然と(おかしくないですか?)見ていたクラスメイトも、生徒会長を速く見たいのか足早に剣道場を目指しました。玲さん達もそれに続きました。
「気をつけた方がいいぞ?」
僕も急いで先頭に戻ろうとすると、天宮くんが小声で話してきました。
「どういうことです?」
「女の扱いは気をつけた方がいいってことニャ。霧坏の方は腹黒お嬢様タイプだからそこまで実害はニャいけど、月弦はヤンデレだから本当に危ないニャ」
「ヤンデレってなんなんです?」
「簡単に言うと依存症と独占欲を合わせもつ女の子のことニャ。お前、鈍そうだから忠告するけど、背中にいきなり刃物で刺されないようにした方がいいニャ」
「わかりました」
正直天宮くんの説明だけでは良くわかりませんでしたが、下手なことをすれば僕の身が危ういというのは充分理解できたので素直に頷きました。
ヤンデレ
その言葉は僕の脳裏に恐怖と一緒に刻まれました。
「悠夜ー。置いてくぞー」
「いつの間にか一人ぼっち!?」
3
「以上で剣道部の説明は終わりです。何か質問はありますか?」
剣道部部長さんが主な剣道部の活動や成績を説明していましたが、聞いている人は半数にも満たしていませんでした。
なぜならほとんどの人は他の部員と一緒に稽古している生徒会長さんを見ていました。お可哀想に部長さん。目元が少し潤んでます。
僕はと言えばおかしなことをしでかさないよう、玲さんと恋華さんの手を両手で握っています。ある意味、犯罪予告をしていたのですから、抵抗するのかと思いきや何もしませんでした。それどころか、二人ともニコニコしていると思ったら、僕を挟んで睨み合ったりしたり忙しいですね。
「では、質問もないようなのでこれで剣道部の見学はこれで終了です。ぜひ、剣道部に入部してくださいね」
部長さんはそんなこと言いましたが、生徒会長さん目当てで大半の生徒が入ると予測されますので心配はないでしょうね。
僕は最後の仕事として、クラスをきちんと誘導。出口に向かう皆さんは実に名残惜しそうですね。生徒会長さんとそんなにお近づきになりたかったんでしょうか? まあ、僕も昨日のことを聞くことができないのは残念ですが。
最後に一礼をして剣道場を後にしました。
先に行かせたみんなは黙々と歩いて、僕も追い付こうと歩調を速めます。
その時――
「少しいいだろうか?」
鈴を鳴らしたような綺麗な声。間近にいた僕だけではなく、クラスメイトも振り向きました。
そこにはまだ剣道着を着用している生徒会長が、手に竹刀を持って立っていました。
「なん『なんでしょうか!?』……」
僕が口を開こうとすると、クラスの男子がすごい勢いで僕と生徒会長の間に入ると、すさまじい声量と熱量で喋りだしました。そんなに生徒会長さんと話したかったんですね。
「いや、私はそこの眼帯の生徒にようがあるんだが?」
生徒会長も生徒会長で、淡々と説明しクラスメイトを一瞬にして落ち込ませました。床に手をつく男子とは反比例して、玲さんと恋華さんの眼光はまた鋭くなりました。お願いですから、流血沙汰だけは勘弁してください。
「何か僕に用件でもあるのでしょうか、生徒会長?」
「少し聴きたいことがあって」
そう言って可憐に微笑む生徒会長。でも目が全然笑っていませんね。
「僕は構いませんよ。何でも聴いてください」
「そうか、じゃあ――何故お前はアストラル(ここ)にいるんだ?」
その一言で生徒会長さんの周りが凍りついた。比喩とかではなく、魔力が溢れて気温が低下していた。
生徒会長に近いた男子も遠目に見ていた人も、急な展開と異様な雰囲気のせいで押し黙ってしまいました。
「どういうことでしょうか? 意味がわからないのですが」
「それは一番お前がわかっているじゃないか? 森羅悠夜」
お互いに笑顔で向かい合う。
けれども、目は笑っていなく、眼光はギラつき敵意を隠さずに剥き出しにする。
「なんのことだかさっぱり」
「それなら、単刀直入に言わせてもらおう。――お前はここに居る資格があるのか?」
「ちょっと待ってください!」
生徒会長さんの言葉に反応したのは僕ではなく、恋華さんだった。その場を飛び出すと、僕と生徒会長さんの間に割ってきました。
「それはいったいどういう意味なんですの!? 私としては、詳しいことをお聞きしたいのですが」
「君には関係ないことだよ。それより私は森羅と話しているだが」
「今質問しているのは私ですっ」
僕の時とは違い、緩やかな敵意から剣呑なそれへと変化し、恋華さんと生徒会長さんの間に強大な重圧が生まれる。
「恋華さん。僕は構いませんよ」
「けど、」
「大丈夫です」
そう口にすると恋華さんの手を握る。恐怖かあるいは怒り、それとも両方のせいなのか、僕の手のひらに収まった白い手は震えていた。
無言で恋華さんを庇うように前へ出る。そんな僕らをつまらなそうに見る生徒会長と再び向かい合う。
「あなたの望みはなんですか?」
「私はただ、お前の存在が許せないだけだ」
「なるほど、ではどうしようと?」
「森羅悠夜。お前に決闘を申し込む」
「フェーデを?」
フェーデとは正式に認められている私用試合のことで、当然学園都市内でも申請すれば許可は降りる。もっとも、学生同士の場合はルールの改変等が可能になる。
そして、フェーデのある意味原則的とも言えるルール、『敗者は勝者の下す命を一つ受け入れる』がある。このルールはよっぽどのことがない限り、改変はされない。
「僕に拒否権は?」
「生徒会長権限」
「職権乱用では?」
「構わないさ。確かにこの申し出を断る権利はお前にある。だが、だからと言って私はあきらめない。お前が首を横に振れば、事態は複雑になるが手を緩めることはしない」
生徒会長の強い眼光。それは揺るぎない決意の現れなのでしょうか。
「……わかりました。そのフェーデ、お受け致します」
「そうか。なら細かいルールや、勝利条件はお前は決めて構わないぞ」
「では、方式は魔術戦闘。魔法や魔装具の使用はありということで、どうでしょうか? これより詳細なルールは後で報告致します。あ、ちなみにフェーデは明後日、金曜日の放課後でどうでしょうか?」
「……お前は私を馬鹿にしているのか?」
「僕に決定権をゆだねたのはあなたですよ」
「そうか。いいだろう。お前がどんな小細工をしようとも、森羅悠夜。必ずお前を――排除する」
生徒会長はそう言い残すと、剣道場へと引き換えして行きました。
4
「どういうことなんだ悠夜っ」
「そうだよ。フェーデなんて本当に受けちゃうの!?」
生徒会長が去った後、僕も踵を返して教室に戻りました。他の生徒も遅れて移動、教室へ帰ると瀬野先生に『遅いっ』と怒られつつ帰りのホームルームを終了し、今現在に至ります。
神薙くんと玲さんはホームルームが終わるや否や、僕にすごい勢いで尋ねてきました。周りでは他の生徒も聞き耳を立てている様子。
「どうもこうも、ありませんよ。フェーデを持ち掛けられたので応じた、それだけのことです」
「うちの生徒会長って、魔力が半端なく高いだけじゃなくて、魔祓師の資格も持ってるんだニャ。お前このこと知ってんのかニャ?」
「そもそも、何で受けたのよ? 断れば良かったのに」
「何か、訳ありッスか?」
「……今日はもう帰らせていただきます。さようなら。また、明日」
次々と来る質問を強引に打ち切り、鞄を持って教室を出る。
(申し訳ありません)
僕を追う人もいなく、夕日が照らす帰り道を一人で歩く。
そこに、
「ごきげんよう。一緒にお茶なんてどうかしら?」
目の前には、僕が高校生活を送る原因にして元凶――にこやかに笑いながら、彼女の腕にいる白猫を優しく撫でる貴婦人がいた。
★ ★ ★ ★ ★
僕らは初めて会った時のように近くの喫茶店に入り、ホットコーヒーを注文した。
「約半月以来かしら? どう、元気にやってる?」
「概ね良好――だと思います。むしろにぎやかすぎるかもしれません」
「それぐらいがちょうどいいものよ。若い頃はたくさんの友人に囲まれて、笑うのが一番なのよ」
「笑うどころか、顔がひきつって頬の筋肉がつりそうです」
「ふふふ、楽しそうね」
「そう聞こえますか……」
「孫にはもう会ったかしら?」
「ええ。つい先ほど、フェーデを申し込まれました」
「そう」
終始笑顔を浮かべていた婦人の顔が陰る。そこには憂いと哀しみ、わずかな後悔が見えたような気がしました。
「あの子、やっぱり……」
「これはあなたの考え通りですか? あなたが高校の選択はするということでおまかせしましたが、自分の孫娘と僕を会わせるのは計画のうち、だと考えているのですがどうでしょうか?」
「確かにあなたを孫と会わせるために、國桜高校へ入れたわ。でも、まさかフェーデまで……」
一つため息をつき、店員さんが運んだミルクティーを口に持っていく。僕もせっかくなのでブラックのままコーヒーをいただく。あ、美味しい。
「ごめんなさいね。家族の事情に巻き込んでしまって」
「いえ、僕は気にしていません。フェーデを申し込まれるのも、一度や二度ではありませんから」
「豪傑なのね」
そう言ってにこやかに笑い再びミルクティーを口にする。
「もう少し時間はあるかしら?」
「大丈夫ですよ」
「そう。なら、もう少し聞いてちょうだい。
――哀しい鬼の子の話しを」
どうでしたでしょうか?
作者としては書いているうちに、中間にありました玲さんのヤンデレ具合がメインになってしまいますたかね
でも、後悔はしてません!
生徒会長さんを期待していた方はごめんなさい。
来週はややシリアス、バトル、魔法多めになる予定です。
(やっと、ここまできました)
それでは、第三夜ありがとうございました。
第四夜もどうぞお楽しみに待っていてください。伝助は楽しく頑張らせていただきます。
それでは失礼します
さようなら~