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第二十四夜★そのフラグをへし折る術を僕は知らなくて


 今回は短めです



 次への振りということでお願いします








「……あれ、寝てましたか」


 突然の覚醒。窓からこぼれる夕日がまぶしいです。

 僕は教室で寝ていたようで、放課後の時間帯からかここには僕しかいませんでした。

 他の方は部活に行ったのでしょう。演劇部は今日、活動ありましたっけ?

 自分の仲で疑問は解けないまま、僕はとりあえず教室を出るべく身支度を整えました。

 すると、後方から足音が。僕は驚き後ろを振り向きました。


「ねぇ、どこへ行くの?」


 僕に声をかけてきたのはおよそ十歳と思われる童女。髪と瞳は虚無の闇のように暗く、見ているだけで吸い込まれるよう。

 僕は目の前の童女を認識した瞬間、体中に悪寒が走り金縛りにあったように動けなくなってしまいました。


「ねぇ、どこへ行くの? 私は“ゆう”の傍に居てあげるって、約束してあげたのに」


 不安そうな瞳で、僕を見上げる。その手は欲するように僕へと伸ばされている。

 逃げだしたくても動かない足は、自分でわかるほど恐怖で震えていました。

 眼前まで近付いてきて童女が、その細い腕で僕を抱きしめます。

 嬉しそうに笑う童女――幼い頃の姉さんに触れた瞬間、まるで突然深海に訪れたような強烈な冷気に教われた。氷よりも冷たく感じる肌は、病的なほど白い。


「ウフフ、“ゆう”って暖かいね」


 文字通り芯まで冷えた僕とは違って、姉さんは端正な顔に微笑みを浮かべ僕の背中を撫でさすります。


「――ッ!!」


 僕は思わず姉さんを突き飛ばしました。

 嫌悪感から力の加減ができなかった僕は、突き飛ばした反動で後ろに数歩下がる。


「あらあら、危ないわよ“ゆう”」


 進む背中を誰かが受け止め、その人物が背後から腕を回して僕を抱きしめる。

 今度は感じた肌の温もり。でもそれを感じた時、僕の中にある恐怖心は増幅し心臓がうるさいほどの鼓動を刻む。

 首だけを動かして、後ろにある顔を覗き込む。

 左目にある泣きほくろが印象的な黒髪ロングな美女。

 穏やかな笑みを浮かべた美女――僕より三、四歳上だと思われる姿の姉さんは僕を抱く腕にギュッと力を込めた。


「ウフフ、私のかわいくて愛しい“ゆう”……。もう離さない、誰にも渡さない。あなたは私だけのモノよ。今も、そしてずっと前からも――」


 途端に姉さんの体は粘性のある黒い泥に変化し、僕はその中心へと吸い込まれる。

 必死に抗うも足の自由が、腕の自由が奪われとうとうもがくこともできずに僕は泥の塊に取り込まれ、意識は闇の中へと落ちていきました。

 意識が落ちる最後まで、僕の頭に浮かんでいたのはとても綺麗な笑顔をした姉さんでした。



 ★ ★ ★ ★ ★



「起きてー! 森羅(もりあみ)くん起きてー!」

「!(ガバッ)」


 誰かの呼び声で、僕の意識は覚醒し机に預けていた上体を起こしました。

 今の姉さんは…………夢でしたか。あー、胸くそ悪い夢見ましたね。まさしく悪夢ですよ。


「森羅くん大丈夫? (うな)されてたけど」


 僕を起こしてくれたのは、淡い赤のフレームの眼鏡をかけたクラスメイト――逆絵(さかえ)(かな)さんでした。黒い髪をストレートに伸ばし、同世代ながらも右目にある泣きぼくろが妖艶な印象をかもしだしている美人さんです。逆絵さんはスタイルもよく、(ひびき)くん曰くリリスさんがやって来るまでは一年D組の中で一番の大きさの胸だったとか。……うん、どうでもいいですね、はい。

 そういえば。

 どことなく姉さんと逆絵さんは似た雰囲気を持っているなと思うのは、あんな夢を見た後だからでしょうか。


「ご心配ありがとうございます。大丈夫ですよ。確かに悪夢を見てたかもしれませんが、内容なんて忘れてしまいましたし」

「そう? 大丈夫ならいいんだけど。あ、それよりもお客さんだよ」


 逆絵さんが指差した方には見知らぬ男子生徒が壁に背中を預けていました。僕の視線に気付くと、右手を上げてニッと笑いました。


「森羅くんに用事があるようなんだけど、寝てたから声をかけづらかったんだって」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「ううん、大したことはしてないよ。それじゃあね」


 僕もさようならと返すと、逆絵さんは優雅に手を振り教室を後にしました。そして入れ換わるように先ほどの男子生徒が僕に近づいてきました。


「ええと、あんたが森羅悠夜(ゆうや)で間違いないよな?」

「そうですよ」

「俺は西戸(にしど)砦羽(さいば)ってんだ。よろしくな」

「よろしくお願いします。して、いったい僕にどんな用が?」

「あー、いや、ちょっと頼みごとでな。天宮(あまみや)からの推薦」

「響くんですか」


 彼が普段一緒に遊んだりするのは幼馴染の(りょう)くんや同じクラスの僕や大地(だいち)くんが主ですが、交友関係で言うと他のクラスメイトや同じ学年、さらには別の学年でも数人の先輩方とは繋がりがあるとか。そういう人脈が情報収集に生かされるのですね。

 でも響くんは何故西戸くんに僕のことを紹介したのでしょうか?


「話しかわるけど、今出て行った娘って森羅の彼女?」

「違いますよ。ちなみに僕は彼女持ちでもリア充でもありません」

「彼女欲しいとか思う?」

「いいえ、特には」

「そうか……」


 西戸くんは僕に質問をし終えると、何やらこっちをチラチラ見ながら思案顔になりました。


「なあ、森羅って今度の日曜日暇か?」

「予定は無いですよ。部活もありませんし」

「おおっ、そっか。ならさー、合コンに参加してくれねえか?」

「…………質問に質問を返すようで申し訳ないですが、合コンとは?」

「え、えっと、そうだな……。初対面同士が友情の輪を広げるための食事会みたいなもんだよ。急に人数が揃わなくなっちまって。悪いけど出席して欲しいんだよ」

「そうでしたか。別に僕は構わないのですが、初対面の方と関わり持つのはあんまり得意ではありませんよ」


 亮くんや(あきら)さん達とは比較的速く打ち解けることができましたけど。相性とかそういうのが、良かったのでしょうかね。

 それか知らない間に僕自身が変わったってしまったのか…………。それはなさそうですね。


「いやいや、大丈夫だって。お前なら笑顔で黙ってるだけでもいけるから」

「そういうものなのですか?」

「そういうもん、そういうもん!」


 そういうもんなのだそうです。


「わかりました。それではこの森羅悠夜。その合コンに参加させていただきます」

「おおっ、マジか! いやー、助かったぜ」

「そんなに喜ばしいのですか?」

「ああ、結構セッティングに苦労したからな、今回のは」


 友情の輪を広めるのも大変ですね。

 その後はお互いの連絡先や、合コンでの注意事項を一通り聞いて僕は帰宅することにしました。




 ――――そして帰宅後に迎えた夕食



「「いただきます」」


 僕とリリスさんはちゃぶ台を挟んで座り、箸を取って夕食を食べます。

 今日のおかずは煮魚、(かれい)です。ふっくらとした身がとても美味しい。スーパーに寄って魚コーナーで鰈を見た瞬間食べたくなってしまったんですよ。


「お兄ちゃんお兄ちゃん」

「なんですか? お兄ちゃんと呼ぶのは一回で充分ですよ」

「今度の日曜日暇かな? もし暇だったら、一緒に遊び行こうよ」


 暇ですと喉に出かかって、今日知りあった西戸くんにも同じ質問され了承したのを思い出しました。

 危ない危ない。


「すみませんねリリスさん。日曜日はあいにく予定がありまして」

「え、予定? どうしたの? 確か演劇部の活動はなかったよね」


 どうしてリリスさんが演劇部の活動日を知っているのでしょうか。

 まさかリリスさんも――いや、そんなはずはない、と思いたいです、はい。


「じ、実は隣のクラスの西戸くんという方に親睦を深めるため食事会に誘われたんですよ」

「ふ~ん、そうなんだ」


 リリスさん、不機嫌そうに煮魚に箸を通します。

 別の機会に行くとかダメなのでしょうか。


「それってどんな食事会なの?」

「僕もよくわからないのですが、西戸くん曰く『合コン』と言っていました」

「合コン!?」


 突然リリスさんはちゃぶ台に両手をバンと叩きつける。驚く僕は思わず箸を落としてしまいました。

 リリスさんはすごい剣幕で口を開け、けれど思いとどまったのかそのままなにも言うことなく座り直しました。


「ごめんね、急に大声出して。さ、ご飯食べようよ」

「は、はい。そうですね」


 先ほどとは違いいつものニコニコ顔で食事をするリリスさん。

 ……なんだったのでしょうか。

 僕は拾った箸を持ち直しながら、どうしてか背中に嫌な汗が流れているのを感じました。




 伝助は合コンは愚か、初対面の人と食事なんて基本避けるので次話が書けるか正直不安です。




 ……なんでこんな流れにしたんだれ?


 それでは失礼します。さようなら~


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