第十八夜★科学起動、この手は魔を祓う為に
本当にお久しぶりです。
一ヶ月以上かかってこのクオリティ…… 我ながら泣けてきます
どうか暖かい目で読んでいただけばかと
それではどうぞ~
1
「こんばんは。遅くなってしまいすみません」
両手が袖の中に隠れ、裾が地面すれすれまである黒のロングコート。前を止めるファスナーは全開で、中の服も黒で統一されている。右耳には黒いサイコロのようなイヤリングを着けている。トーレドマークの長髪と右目を隠す眼帯も身に付け、まるで闇夜に溶け込むかのようなファッション。
悠夜は身動きの取れない亮達を視界に捉えながら、誰に対して言うでもなく口を開く。
「遅くなんてないわ。むしろ丁度いいくらい。
もしかして、さっきの唄は悠夜くんが歌ってたの? とっても上手だったわ」
赤と黒で彩られているドレスを身に纏った雲雀先輩が楽しそうに悠夜を褒める。
その背後では、赤と黒の鱗を浮かべた、いかにも人一人を丸呑みできそうで見上げるように巨大な大蛇――怪異の姿が。
「ありがとうございます。僕の歌って結構好評なんですよね」
ヒーローのようにやって来た悠夜は、別に嬉しがるわけでもなくただ言葉を返すだけ。パッと見、先輩後輩がありきたりな会話してるように見えるが、笑う雲雀とポーカーフェイスの悠夜。とても友好的な雰囲気には見えない。
悠夜は首を左右に巡らせ、身動きの取れない俺ら、十字架に張り付けられた篤兎とその傍で横たわるリリスちゃん、地面に倒れている何十人もの不良。そして、妖しさを含んだ表情を浮かべる雲雀先輩を視界に映す。
「……これがあなたの舞台ですか。綺麗とはあまり言えませんね」
「あらあら、厳しい評価ね。でもこれはまだ、序章の舞台。場面展開すればもっと華やかになるわ」
「そうですか。……あの、ところであなた達はさっきから何をしてるんですか? 墓地に自分達を見立てた集団メッセージ?」
「んなわけあるか! そこの先輩に何されたかわからんが、身動き一つ取れないんだよ」
ツッコミの勢いで悠夜に情報伝達。俺にもツッコミスキルがあったんだな。
「雲雀先輩。彼らをあなたの舞台の一部にしようとでも?」
「必要ならばそうするつもりよ」
「………………」
おいおい、一生このままとか冗談じゃねえぞ。どうにかならないのか……。
「でも、悠夜くんは心配する必要なんてないわ。
――あなたも私の世界に足を踏み入れたのだから!」
「くっ」
雲雀先輩がズバッと勢い良く、悠夜に人差し指を向ける。すると悠夜は見えない糸に操られるかのように、下げていた両腕を俺らと同じように水平に固定した。
もしかして、いや、もしかしなくても、悠夜まで拘束されたのか?
「どうかしら。私の舞台の一部になった気分は?」
動けない悠夜の目の前で、雲雀先輩が満足そうな笑みを浮かべる。
悠夜は身動きが封じらたまま、うつむかせている顔にニヤリと笑う。……笑う?
「ハハハ」
「な、何がおかしいの!?」
口からも声が漏れ、悠夜は実に楽しそうに雲雀先輩へ笑いかける。
「雲雀先輩を騙せるのならば、僕も演劇部員としての力量が上がったようですね」
悠夜はそう言って上げていた両腕を静かに下げた。……え、下げれんの?
俺は自分の意思で腕を動かそうとするが、相変わらず動かなかった。どうやら雲雀先輩の力が弱くなったとか、そういうのではないらしい。
「な、何で!? あなたも(・)私の世界の中で自由に動けるの!?」
も? もしかして、篤兎やリリスちゃんが俺らみたいになってないのは、精神操作とかゆうのができなかったからか? そして悠夜にも――
「あなたの世界の常識は、どうやら僕には通用しなかったようですね」
「――ッ! ……まあ、いいわ。舞台上のアクシデントなんて、無いとは限らない。むしろまだ、修正可能の範囲内よ。悠夜くんが私の世界に居るのは変わりないのだから」
そう言う雲雀先輩は、優雅なしぐさで指をパチンと鳴らした。渇いた音が辺りに響く。
すると、地面に横たわっていた数十人の不良達が、まるでゾンビのようにゆっくりと立ち上がった。しっかりと体重を二本の足で支えているものの、開かれた瞳には自我の光は無い。
「より強い精神操作……! 下手したらその人ら廃人になるッスよ」
「へぇー、そうなんだ」
俺のすぐ傍で大地が悲痛な声を上げるが、肝心の雲雀先輩は全く意に介さない。さも、どうでもいいと言った様子であしらう。……雲雀先輩のやろうとしてることは誰かを犠牲にしてすることなのか? 今更ながら、俺は置かれた状況とあくまで冷静な雲雀先輩に恐怖を覚えた。
「なるほど。操ったこの人達を利用し、誘拐劇を自作自演したというわけですか。ずいぶんと手の込んだことを」
「ウフフ、正解。
……役者には小道具が必要よね」
雲雀先輩が再び指を鳴らす。不良達の手がひかり、お伽噺に出てくるような剣が握られていた。
「模造刀だけど、当たると痛いから気をつけてね?」
「……選択肢はありませんか。ま、この方が僕は得意分野ですから構いませんけど」
悠夜は耳に着けたイヤリング――黒い七面体のサイコロを外し、宙へと投げた。
「匣型特殊魔結晶、発動――一ノ目、禍鎌!!!」
宙を舞っていたサイコロが黒く輝き、その形状を禍々しい鎌へと変えた。自身の背丈ほどある黒い鎌を持った悠夜は、死神を連想するには充分な出で立ちだ。
「雲雀先輩、あなたの世界は僕のサイコロの中です」
「それはどうかしら? 行きなさい!」
雲雀先輩の声で、武装した不良達が一斉に悠夜へ距離を詰める。
対する悠夜も得物を構え、迎撃体制を取る。
不良の一人が悠夜の正面から斬りかかる。悠夜はそれを鎌で受け止め、相手の腹へ強力な蹴りを入れ地面に転がす。
同時に、背後から迫った一人が悠夜へ攻撃を加えるが、後ろの不良へ振り向くことなく弧を描くように鎌を動かして防御する。
「無駄ですよ。いくら洗脳して動かしても、所詮は学生の寄せ集め。数で押しても、意味はありませんよ」
「さて、どうかしらね……」
雲雀先輩が右手の人差し指を上にクイッと曲げる。すると、悠夜の一撃で地面に横たわった不良が、再び起き上がりその手に武器を持つ。
「……動けない程度に痛めつけたつもりなんですがね」
「痛みも想いも願いも、役者には関係無いわ。台本に決められた通りに動くだけ。演出(私)の指示でね」
「なるほど。完全な操り人形というわけですか」
役者とかそういうの以前に、不良達を道具としか見ていない雲雀先輩。
悠夜がいくら攻撃を防ぎ、反撃を加えるもまるで意味をなさない。どんなに強力な蹴りや拳をくらっても痛みを感じないのか、すぐに戦闘へ復帰する。
状況は悠夜が一向に悪い。
「ほらほら、どうしたのかしら? 悠夜くん(ヒーロー)はこんなところで舞台から降りてしまうの?」
「好きかって言ってくれますね……!」
悠夜は戦法を変え、不良の集団から距離を取るように動く。囲まれないよう移動しつつ、どうしても攻撃を回避できない時だけ、鎌を器用に使って相手の武器をはじく。そしてまた距離をあける。
真っ向勝負が有効的ではないのが目に見えているが、悠夜に打開策があるのか?
「頑張るなぁ、悠夜くん。でも、その頑張りもいつまでもつかしらね」
雲雀先輩の声がさっきよりも近くに聞こえ、思わず声のした方へ首を向ける。どうやら首から上は自分の意思で動かせるようだ。
俺の左、響の肩をポンと叩くと、
「あなたの魔法、借してもらうわね」
響の右腕がゆっくりと動き、その手の平を悠夜へと向ける。
魔法を借りるって、まさか……!
「や、やめるニャ!」
「さあ、照明に照らされなさい、悠夜くん」
響の制止も効かず、無理矢理放たれた雷が音をたてて悠夜へと襲いかかる。
不良達は道を開けるように後ろへ下がり、悠夜が異変に気付くも既に時は遅く、非情な雷撃が放たれる。
地面を黒く焦がし、夜に染まった景色の中で暴力的な光が悠夜を襲う。
――ドバン!!!
命中。操られている為か、冷酷無比、寸分の狂いも無い一撃が確かに悠夜へと届き、轟音を発した。けれど――
「な、なんで……? なんで平気なの!?」
手加減も何もしていない、直撃すれば最悪絶命してしまうかもしれない雷。だが悠夜はそれを受けながらも地面に立ち、しっかりと目を見開いていた。
突き出された悠夜の右手。そこへ避雷針のようへ進むように向かった雷は、見えない壁に行く手を阻まれるように停滞しながらも前へ前へと進もうとしていた。その光景はまるで、悠夜が右手一本で雷を受け止めているようにに見える。
――ピキッ、メキッ、ギリッ
まるで鏡の表面にできるひびが枝分かれするように、雷の先端から亀裂が走る。
……確か、俺はこの光景を見たことある。
――パリンッ!!!
隅の隅まで亀裂が走った瞬間、雷は結晶が弾け飛ぶように音をたてて崩壊した。
その様子はあの時と非常に酷似していた。
以前行われた魔術決闘。
悠夜と冬空先輩が戦ったこの場所で。
それは起きた。
冬空先輩が最後の魔法を使った瞬間、誰もが悠夜の敗北が頭を過った。確かに負けはしたけれど、悠夜は冬空先輩の魔法を退け何らかの方法で消滅させ限界まで冬空先輩に挑んだ。
今の雷が消えた現象はまさしく魔術決闘の再現に思える。
魔術決闘が終わった後は悠夜の弟子になったりと、いろいろあったし詳しくは聞いていなかったが、今ので確信できた。
悠夜のやつ、魔法をその魔力(存在)ごと消しやがった!
「何をしたの!?」
悠夜対冬空先輩の魔術決闘を見ていなかったのだろうか。雲雀先輩は響に触れたまま、困惑気味に叫ぶ。
動揺する雲雀先輩を冷ややかに見つめながら、悠夜は質問には答えず左手に持った鎌を雲雀に向けた。
「雲雀先輩――あなたは科学を信じますか?」
「カガク? ……いったい何が言いたいの」
「反撃開始と言うことですよ、リリスさん!」
「とうっ!」
悠夜がその名前を呼んだ瞬間、リリスちゃんは勢い良く立ち上が――ると見せかけてジャンプした。結構な高さまで飛び、体を折り曲げるように丸くなり回転を加えながら落下、極めつけに『シャキーン!』と決めポーズを取りながら悠夜の傍らへ着地した。
……正直やる意味がわからない。動けたことにも、もちろん驚きだが。
「あなた動けたの!?」
「ううん、さっきまで私は機能停止(気絶)してたよ。でもお兄ちゃんの呼び声で起きたの。……ところで変なポーズで突っ立って、みんなは何をやってるの? ウケを狙ってるならもう少しマシなものを……」
「ちげーよっ! 操られてんだっ。というかウケがどーのこーのなんて、ついさっき『シャキーン!』をやった奴に言われたくねーよ!」
「リリス・ペンドラゴン」
悠夜が再び義妹の名前を口にする。けれど今の声はどこか無機質で、いつもリリスちゃんを呼ぶ声とは違うように思えた。
「所有者(僕)の名の元、命じます。
――科学起動、その両手に宿すは闇を撃ち抜く銀の弾丸」
「――イエス、お兄ちゃん(マスター)。白銀の荒鷲、起動します」
リリスちゃんがポケットから取り出した髪ゴムで素早く髪をツインテールに結い、悠夜は手にした鎌をおもいっきり雲雀先輩へと投げた。
「くっ!」
雲雀先輩は当然のように避ける。フワリと宙を浮くように舞い、再びあの怪異の大蛇の手前へ。悠夜の鎌も、ブーメランの要領で持ち主の手へ戻ってゆく。
髪を結い終えたリリスちゃんは、服の袖から二つの金属体を取り出した。L字の形のしたそれを握りしめ、独特の構えをとる。
「標的はみなさんの額。弾丸は貫通しない物を」
「オーケー、ご主人様。弾丸装填、発射します」
ん、何か不穏な単語が聞こえてきたぞ。
標的? 額? 貫通? 発射?
「歯ぁ食い縛って、ね!」
――パンッ!、パンッ!、パンッ!
「痛てぇ!!」
乾いた音がリリスちゃんの手元から聞こえたかと思うと、額のちょうど中心に小さい何かがものすごい勢いで当てられた。
この衝撃に一番近いのは、小さい頃響や他の友達と遊んだ銀玉鉄砲だろう。だが、威力はこっちの方が格段に強い。
あまりの痛さに思わず後退り、手のひらで額を押さえる。…………って、あれ? 俺の体、動く。動くぞ! 雲雀先輩のなんか良くわからん拘束が解けたのかっ。俺以外のやつも(めちくちゃ)痛そうに額を押さえているが、自由に動けるようだ。
「ッ! まだよ、手駒(役者)はまだいるんだから」
雲雀先輩が腕を横に降り、不良達が悠夜とリリスちゃんへ駆ける。
二人は臆することなく立ち向かう。悠夜は鎌と蹴りを繰り出し、不良をフィールドの隅へと追いやる。後ろに控えたリリスちゃんは銀玉鉄砲(のような物)を使って俺らの時と同じように、小さな球体と思われる金属の額にぶつけてゆく。地面に転がった不良はゾンビみたいに起き上がろうとはしない。きっと精神操作とやらが、悠夜とリリスちゃんの活躍でなくなったのだろう。
森羅兄妹は文字通りばったばったと敵を薙ぎ倒し、とうとう立っている者は俺らと雲雀先輩だけになった。
悠夜は呪縛の解けた俺達を背中で庇うように立ち、眼前で佇む雲雀先輩と対峙する。リリスちゃんは十字架に固定された篤兎を解放しようとするが、両手足を縛っている鎖に苦戦していた。
「なんで……、どうしてそこまで私の邪魔をするの……? 私は幸せになっちゃいけないの?」
怒りを通り越して、『虚無』の表情を浮かべた雲雀先輩はまるでよくできた仮面をつけた雰囲気を醸し出す。
雲雀先輩のやってることは確かに間違っていると思う。でも、先輩の気持ちは俺にも少しだけわかる気がする。どうしても選びたくない選択肢しか目の前にない時、人はいったい何を選べばいいのか――
「僕は別に、あなたのしてることは間違っていると言う気もありませんし、正直なことを言ってしまえば邪魔をする気もありません」
「じゃあ、なんで――」
「それはあなたが『白樺雲雀』だからです。……僕の知っている『白樺雲雀』はとても優しく、ヒトの心に機敏です。誰かを傷付けてまで、自分の願いを叶えようとはしません。例え叶えられたとしても、あなたは苦悩と負い目から笑顔にはなれない。
僕は笑顔を浮かべることができなくなった雲雀先輩なんて見たくありません」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい! 私の何を知ってるってゆうの! 知りもしないくせに私のことを語るなっ。悠夜くんは私のこと全然知らないからそんなことが言えるのよ。
なんなら教えてあげようか? 私は今までいくつもの苦痛を味わい、何度も夢を描いては諦めてきたわ。どれもこれも生まれた時から――」
「知ってましたよ」
「――!?」
「あなたが性別を周りに偽って生活していたことは、前から気付いていましたよ」
マジでか!
こう言っちゃなんだが、雲雀先輩の『女装』は完璧と言っても過言ではない。同じ部活で一年の付き合いがある二人の先輩の目も欺いていたのだから。正直俺は、雲雀先輩が真実を告白しても未だに信じられない。雲雀先輩はどの角度から見ても『女の子』だ。というか何で悠夜は雲雀先輩が女じゃないってわかったんだ?
「ヒトの性別なんて、そのヒトの骨格を見ればわかりますよ。だいたい、性別を当てる確率なんて二分の一じゃないですか」
「…………いつから? いつから私が男だって気付いてたの?」
「初めてお会いした時には『おや?』と違和感を覚えた程度ですが、次の日に雲雀先輩を見て偽っていると確信しましたね」
「そう、そんな前から……」
雲雀先輩は変わらずの無表情。だがその目には憤怒を浮かべ悠夜を睨み、拳はドレスを強く握りしめていた。
「あなたもやっぱり私を騙してたのね! 私と平気な顔して話して、部活して、一緒に帰って、でも本当は私のことを奇異の目で見てたんでしょう!?私が自分の夢を語った時だって、本当は心の中では私のことを嘲笑ってたんでしょ!」
「それは違います」
「何が違うの? 私が将来の夢を言った時は、もう私の性別のことはわかってたんでしょう」
「確かにあの時にはすでにわかっていましたよ。でも僕はあなたの置かれた状況を知った上で僕は『笑わない』と言ったんです。
誰かが思い描く夢を笑い飛ばすなんて真似僕はしたくないですし、現にとても似合うと思いますよ? 雲雀先輩が『お嫁さん』のように朝の台所でエプロン着けて料理する姿は。雲雀先輩は性別がどうのこうの言う以前に、『女性』としてとても魅力的な方です。内気な性格からあまりヒトとうまく関われないかもしれませんが、それでも誰かを常に思いやったり自分にできることを最大限にこなそうとするところはすごいと思います。
雲雀先輩はとても尊敬でき、目標の一つとなるヒトです。そんなヒトの夢を、僕は笑わずに応援したいんです」
そう言って悠夜はにっこりと笑う。こんな緊張状態にも関わらず、まるで子供のように純真無垢で誰もを安心させるような笑顔は、目の前にいる一人の先輩がいかに大切な存在であるかを物語っていた。
「悠夜くん、私……」
毒気を抜かれた表情の雲雀先輩が頬に涙を流していた。その手を悠夜へと伸ばし、距離を縮めるため足を前に進める。
――けれど、その瞬間
「きゃぁ!」
「雲雀先輩!」
背後から伸びて来た数本の黒い紐のような物によって、雲雀先輩の体が縛られそのまま引き寄せられる。
「悠夜くん!」
「くっ……」
悠夜は急いで駆け寄って手を伸ばし、雲雀先輩の手を握ろうとするが一歩およばず虚しく空を掴むだけ。
黒い紐は篤兎の方にまで伸び、まだ拘束の解けていない篤兎をその十字架ごと引き寄せる。
「させないよ!」
リリスちゃんが再びL字の金属体を取り出し、それから出される小さな球体が紐に命中する。
命中し紐がちぎれるも、紐は一人でに結合してリリスちゃんの攻撃は意味をなさなかった。
縛られた雲雀先輩と篤兎は黒い紐の根元――怪異の大蛇へと引っぱられ、悲鳴を上げる間もなく波紋を生みながら鱗の中へ吸い込まれた。
今度は異形の蛇が俺達と静かに対峙する。
「クロキ、モノヨ……」
喋った!
2
怪異の大蛇に雲雀先輩と京さんが取り込まれた。
この状況を想定していなかったわけじゃない。けれど、対処できなかった自分に苛立ちを覚える。さっきの操られた不良達だって、リリスさんの手を借りなければ打破できなかっただろう。少し舞台(戦場)を離れたからって、この体たらくとは。
鎌首をもたげた状態でビル五階分の高さを持つ異形の蛇。きっと雲雀先輩との同調が不完全となった為、無理やり取り込むことによって同調を促したのだろう。京さんは恐らく雲雀先輩ほどではないにしろ、世界に対して拒絶していた節がありましたから一緒に取り込まれたのかと思う。
怪異は魔力の塊。厳密に言えば、魔法とさして変わりはない。
それ故に怪異は魔法を使う『誰かの意思』があって初めて活動できる物がほとんどだ。例外こそあるがその存在はとても希少だし、この蛇もそれにあてはまるのでしょう。もっとも、途中までは雲雀先輩とかなり強い同調していた為問題はなかったようですが。
「クロキ、モノヨ……」
おや、僕のことですね。ヒトを取り込んだからか、それとも初めから喋れたのか。まあ、喋れるということは相手と意志疎通できますし、対話してみますか。ちょうど聞きたいこともありますし。
「あなたの目的はなんですか?」
「ワレハ、ソノソンザイヲ、ハタスノミ……」
どうやら何者かが意図的に送りこんだとかではなさそうですね。あくまで空気中の魔力から自然発生した怪異がこの学園都市に流れついたというところですか。
けどまだわからないことはある。
「あなたは『何故』ここに来たんです? 雲雀先輩の他にも、あなたと同調できるヒトなんて世界にはたくさん居たはずです。どうしてわざわざ学園都市にまで来たんですか?」
怪異はさっきも言った通り魔法の一つだ。
本能や知性があったとしても、それを使用したり行おうとする『意思』はない。例えば、食欲があっても好き嫌いを選んで食せなかったり、知識や経験を行動に生かせなかったりする。
だが冬空先輩が行方不明者と怪異の関連性を説明する為に使った地図を見る限り、発生した時からまっすぐにこの学園都市に向かっている。ジグザグに進んだのはおそらく蛇行運動だと思う。
まるで初めから学園都市アストラルを目指していたのか、それとも――
「ワレハ、ミチビカレタ…… クロキモノノ、ヤミニヨッテ……」
その言葉の真意を考える間もなく、僕は大蛇の尾による一撃によって吹き飛ばされた。一瞬の判断で禍鎌を使い防ぐも、ハートブレイカーは壊れ盾の意味をなさなかった。
みんなの声が聞こえるけど何を言っているのかわからず、僕は地面を何度も転がる。石が何個かあって結構痛かった。
僕の体がやがて止まり横たわった状態の視界には、僕を殴りつけた太い尾が見えた。
地面の上に鎮座したそれは、まるで脱線してしまい線路から投げ出された列車を僕に連想させ、昔の記憶の断片を思い出させた。
『ウフフ、気分はどうかしら? 可愛いくていとおしい私のゆう……』
『姉さん、何でこんなことをするの!?』
『知らないなら教えてあげる。……力と力、異質と異常は互いに惹かれ会うのよ。
私達のようにね』
『素敵だと思わない? ゆうと私、愛し合う二人だけしか存在しない世界。そんな世界にいずれなるのよ。ゆうが大嫌いな世界じゃなくて、愛しい人どずっといられるそんな楽園に』
『……だったら姉さん。僕があなたを――ブッ破壊します!』
「クロキモノヨ……」
ああ、そうか。
僕は――
「……クフフ、アハハハーー、ヒヒヒヒヒャハハハーーーーーー!!!」
僕は狂ったように笑いながら、立ち上がる。
いったい何を期待していたのでしょうか?
どんなことがあっても僕は僕、変わることは決してないのに。
僕は道化。
僕は悪魔。
そして異常。
世界と神に呪われた非日常に住む存在。
「いいでしょう、怪異。あなたが本能のまま、導かれるまま僕の前に在るというのなら――僕はその全てを否定して破壊します」
左手を右目に着けている眼帯へと伸ばす。そのままむしり取る。
「制御装置解除――灰色ノ夜眼発動!」
――視界に魔界が重なる
眼帯を外し露出した右目は左と同じ物ではないあまりにもかけ離れたモノ。
黒く染まった目の中に瞳と呼べる物はなく、灰色の虹彩に浮かぶのは逆位置の五稜星。星の下からは黒い涙が一筋流れ落ちる。
魔眼、灰色ノ夜眼
それは遥か昔、一つの神が一人の人間を愛したが為に生まれた悲劇。なんとかして自分の姿を認識して欲しかった神は、人間の右目を自身の魔力によってこの世の全ての『魔』が見える眼に作り替えた。神の望み通り人間には神の姿が見えたが、人間が見たのはそれだけではなかった。人間を愛した神以外の神、天使に悪魔、果てにはヒトの魂までその右眼で視認できるようになった人間は『視る』という情報処理に耐えきれずに発狂。その後人間は永眠した。神は自分の行いが愛する人間を死に追いやったことを酷く悔やみ、人間の死体から右眼を取り去り以降その視界にヒトを捉えることはしなかったという。
今の僕の視界には本物の左目と呪われた右眼によって映し出されている。
右眼が視る光は全部で九つ。
玲さん達が宿す銀、桜、赤、黄、緑、青色をした綺麗な輝き。その向こうでは、赤と黒が混ざりあった禍々しい血の色の中に、小さな光が二つ。
よし、ちゃんと視える。
僕は戦える。
袖の中に隠れた右手を、天を指すように上へと向ける。
「科学起動――破壊者!」
重力に従って零れた袖から出て来た僕の右手が黒に色付く。
僕の右腕はもはやヒトのそれではなく、硬質で無機質な鉄で作られた科学の腕。
「ぬくもりも、優しさも、絶望も、儚さも全て力に変えましょう 嘆け――ヘル!」
僕の呼び声に応え、右腕は暗く光ながらその姿を変えてゆく。
螺が回り、歯車が連動し、バネが軋み、ワイヤーがほどかれ絡み合う。やがて全ての音が止んだ時、そこにあったのは僕の足元に届くほどの長さを有した武骨な右腕(科学兵器)。
さあ、小道具は揃いました。
「父さんが僕に託したこの右腕と、母さんが僕に話してくれた右眼の物語、師匠が僕に教えてくれたこの世界で在る意味
その全てをもって怪異、あなたを――ブッ破壊します!」
さあ、今宵もおどけた道化と踊りましょう。
3
冬空美姫(私)は動けないでいた。
白樺と篤兎が怪異に捕らわれた時も、森羅が怪異の一撃で吹き飛ばされた時も。
私は怖かった。
魔祓師として人間に悪害をもたらす魔陣獣を討伐したことはある。
だが目の前に存在する怪異というモノは、過去に出くわしたどんなモノよりも強い威圧感を出し私の戦意を削いでいく。
人は圧倒的な存在、自分では到底敵わないと思うモノを前にすると、こうも恐怖心を駆り立てられるのだろうか?
怖い。逃げたい。帰りたい。嫌だ。傷つきたくない。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い――
「……クフフ、アハハハーー、ヒヒヒヒヒャハハハーーーーーー!!!」
突然聞こえた笑い声。いや、これは笑い声と言えるのだろうか? まるで壊れたオルゴールを聴いているような、どこか歪んでいて不安定な叫び。
声の主は森羅だった。
狂ったように笑いながら、その左目に輝きを灯す。だが、その輝きはどこか寂しそうにも見えて。
「いいでしょう、怪異。あなたが本能のまま、導かれるまま僕の前に在るというのなら――僕はその全てを否定して破壊します」
「制御装置解除――灰色ノ夜眼発動!」
森羅が自分の眼帯をむしり取る。
そこから現れたのは、人が宿すとは思えないとても酷く奇怪な眼だった。黒の中には逆さの五稜星が浮かび、何かを悲しむかのように一筋の黒い涙を流しているのが確認できた。
まさか、魔眼なのだろうか?
だとすれば何故森羅がそんな物を?
魔眼は魔法と言うよりもむしろ『呪い』に近い。呪いなんぞ体に抱えれば、ただではすまないはず。
そもそも森羅はどうやって魔眼を――?
続いて森羅は右手を持ち上げ、夜空へ向ける。長い袖から右手の肌色が顔を見せる。
「科学起動――破壊者!」
「ぬくもりも、優しさも、絶望も、儚さも全て力に変えましょう 嘆け――ヘル!」
今度は右手が黒くなったと思ったら、暗く発光しその姿を変えた。
見た目は『腕』に変わりないが、大きさは森羅には不釣り合いなほど巨大で、硬質なため巨人が身に付ける鎧の一部かと思うほどだ。肩と右腕の境界線らしきところからは、黒く光る煙が出ては空気中に消えていく。
右目に異質な魔眼、黒き異形の右腕、闇に溶け込むような衣服を身に纏った森羅の姿は、人間界に舞い降りた悪魔を彷彿とさせた。
「父さんが僕に託したこの右腕と、母さんが僕に話してくれた右眼の物語、師匠が僕に教えてくれたこの世界で在る意味
僕の全てをもって怪異、あなたを――ブッ破壊します!」
瞬間、森羅が駆ける。
いかにも重量のありそうな右腕を持ちながらも凄まじい速さで怪異のすぐ下までゆく。
怪異はまた尾の一撃を加えようと振るうが森羅はこれを飛んで回避。否、飛翔した。勢いの止まらないまま森羅は怪異の顔のすぐそばまで来ると右腕を使い顎に一発、怯んだすきに裏拳の要領で二発目と怪異にダメージを与えていく。
お返しとばかりに再び怪異が尾で攻撃を仕掛ける。森羅は空中で体を捻ることにより避けるが、今度は口を大きく開け森羅に食らいつこうとしてきた。さすがに避けることはできなかったのか、右腕を前に出し盾の変わりにする。吹き飛ばされながらも素早く体制を立て直し、怪異へ攻撃を加える。
「すごい……」
感嘆の声しか出なかった。
森羅は何度地面を転がっても、何度その体を叩きつけられても怯むことなく逃げることなく怪異へと突き進み戦闘を繰りひろげる。
片や怪異、片や異形。
片や大蛇、片や悪魔。
お互いが交差する度に光が瞬き、空気が震える。
「これが森羅の『力』、なのか……?」
「そうだよ。あれがご主人様が宿す『力』にして、稀代の科学者が残した遺産」
リリスが私の隣で頷く。
鬼神のごとき森羅の強さを見て次元の違いを突き付けられたようで、私は何故だか不安にかられた。
自分は今まで何をしていたのだろうか。
お婆様に憧れ魔法を学び、この学園都市アストラルにやって来た。そして森羅との魔術決闘を通して違う形の強さを知り弟子になった。期間は短いが森羅の指導で確実にレベルアップはしていた、つもりだった。
だが実際に『力』が必要になった時、私は何もできないでいる。
自分よりめ上の物を目の前にして実感する、自分という無力でちっぽけな存在。
『鬼』にもなれない、強くもあれない私は――
「冗談じゃありませんわ」
不意に横から聞こえた声。
森羅のクラスメイトである霧坏恋華のものだった。
「私は何のために強くなろうとしたんですの! 悠夜さんを一人にしないためでしょう。こんなところでただ立っているだけなんて意味がありませんわ!」
自らを鼓舞するように霧坏は言う。
その姿とても気高く、端正な顔には変えられようのない決意があった。
「ぐっ!」
森羅は怪異の攻撃を防ぎきれず直撃してしまい、地面を転がるように私達の前まで来た。体制を整え、また駆け出そうとするが――
「悠夜さん!」
霧坏の呼び掛けに足を止める。振り向かない森羅に霧坏は続ける。
「私は悠夜さんと共にあるために魔法を学び、魔装具を授かりました。例えどんな時、場所でもあなたの隣が私の居場所です。ですから――あなたの戦場で私も戦います!」
「私だって! 私もこれぐらいのことしかできないけど、悠夜くんの為に戦う! 悠夜くんは私を助けてくれた。今度は私が悠夜くんを助ける番だよっ」
「そういうこった。真剣勝負の最中に邪魔しちゃ悪いが、ここはお前の友人として助太刀させてもらうぜ」
「ニャハハハ。主人公だけに、おいしいところは渡さないニャ。脇役の底力を見せてやるゼ」
「ま、なるようになれッスね。こうなったらとことんやってやるッスよ、師匠(悠夜)」
私はいったい何を悲観していたんだ……。
私と共に森羅から魔法を学んだ後輩達はこう言っているというのに。我ながら情けない。
――怖いのなら、それ以上の勇気を持てばいい。
――私に力が足りないのなら、誰かの隣に立てばいい。
――例え『鬼』になれずとも、私が果たすべきことを最大限すればいい。
――彼が遠くにいるというのなら、私は刀を取り一歩を踏み出すだけだ!
「私は冬空美姫。森羅の一番弟子にして、冬空家の三女。師弟の義理ににて、今戦場に馳せ参じる!
抜刀――刀雪嶺斬!」
「舞いなさい――朴旋華!」
「お願い――鋼銀線蟲!」
「来い――紅煉獄!」
「轟け――照鈴殴!」
「出るッス――緑創砕剣!」
手に持つ魔結晶が発光し、それぞれの武器の形を取る。
「……お願いしますね」
小さく声をもらすと、森羅は再び怪異の元へ。
「神薙くん、天宮くん。僕が今いる場所に火炎球と雷撃」
「まかせろ、――火炎直球!!!」
「――獣雷拳!!!」
神薙が炎球を生みだしバッティングの要領で打ち込む。天宮の拳から放たれた雷撃はデフォルメされた猫のような形になり炎球と列をなして突き進む。
(もしかしたら、初めてかもしれないな。こうやって誰かと共闘するのは)
森羅は絶妙なタイミングでそれらを避け、今まさに攻撃をしようとした怪異に命中。怪異の動きが止まる。
「刈柴くん、恋華さん。岩石と風の魔法を。
武装転換――巡れ、ヨルムンガンド!」
森羅の右腕が歪な音を上げながらまたその姿を変えてゆく。
変形を繰り返した森羅の腕は計五本からなる太い鎖になっていた。
「――土竜返し!!!」
「――風椿!!!」
巨大な竜巻が怪異の周りで起こり、動きを制限する。刈柴の魔法で発生した岩石群が怪異を攻撃すると同時に、森羅が足場として利用し上へと軽やかに飛躍してゆく。
(誰かと戦闘をともにしたのは経験上あるが、私に依存するか『あくまで自分はおまけ』と思う輩ばかりだったからな。だから、こういうのはなんというか、心地いい)
「二人は返してもらいますよ!」
右腕から変化した鎖を怪異に向かって伸ばす。
鎖は命中するも怪異を貫通することなく、奥へ中へと進んでゆく。
「見つけましたよ」
森羅の声に合わせ鎖が引き戻される。
鎖の先端には意識がないようだか、怪異に取り込まれていた白樺と篤兎が。無事救出できたようだ。
「クロキモノヨ……」
怪異が二人を再び奪おうと森羅に牙を向ける。
「冬空先輩。お願いします」
「了解だ」
森羅が後退し、私はすれ違うように前へ出る。離れてゆくも、背中に感じる森羅の気配。
(自分の背中を預けようなんてこと、昔はちっとも考えなかった。ただ強くなる。それだけに固執していた。だが気付かされた。森羅、お前によって――)
「私が相手だ!
刀雪嶺斬、昇華――双雛!」
右手に持った刀雪嶺斬。それと同じ物が私の魔力によって作られ、左手に現れる。逆手に持った左の刀雪嶺斬と右の刀雪嶺斬。二つの刃に魔力を流しこんでゆく。
怪異は大口を開け、私を飲み込もうとする。同時に体表からまた黒い紐を生み出し白樺と篤兎を捕らえようとする。
させるものかっ。
(私が今こうしてあるのは森羅、お前のおかげだ。私は愚かにもお前に刀を振るい、森羅悠夜の強さに気が付けた。だからこれから、この刀はお前の為に振るわせてもらおう。それが私なりの想い方だ)
「――氷泉ノ十字架!!!」
二つの刀雪嶺斬を交差させ十の字を描く。刀身が強く水色に輝くと、光から飛びだしたかのように氷で造られた巨大な十字架が出現。私はそれを怪異へとぶつける。
「アオキオニカ……」
怪異は抵抗するが更に魔力を込め十字架で押さえつける。
「押し通す!」
怪異が力負けし後ろへ倒れる直後、音を立てて氷の十字架が砕けて結晶となった。
私は魔力を一気に使用したせいで意識が朦朧としてきた。
「お疲れ~」
リリスの声が聞こえたかと思うと、その腕に抱きかかえられる。体に力が入らないため、ありがたい。
見れば白樺と篤兎は、同じ演劇部の祭場と柁原に介抱されていた。
森羅はどうしたんだ?
「あそこだよ」
リリスの視線の先、森羅は右手の形状を再び鎧風なものにしていた。
「玲さん」
「まかせて。
――染界網羅!!!」
月弦の両手から幾重にも張り巡らされた鋼糸。それらが怪異に絡まり、自由を完璧に封じる。
鋼糸を足場のように使って飛ぶように移動し、悠夜は怪異の眼前で制止した。
「クロキ、モノ……」
「終わりです」
森羅が右手を掲げる。
黒鋼の腕にある隙間から光が漏れ、やがてそれは辺りを照らすほどの大きなものへとなった。
宵闇を明るく染める、汚れなき黒の光。
「滅んでください。
――相思相愛!!!」
光が一際強くなり森羅の右手が動けない怪異を襲う。
「ワレハ、ミチビカレ――」
怪異はジグソーパズルが破片から徐々に崩れさるように崩壊していき、やがてその存在を完全に消していった。
脅威がなくなった今、闘技場には再び夜の静けさが戻ってきた。
静寂の中で何かが倒れるような音。
森羅が力尽きたように横たわっていた。
「ご主人様!」
「ぬぉっ。こらっ、リリス!」
私が完全に体重を預けていたリリスは森羅を見るやいなや、私を放り投げ一目散に森羅の元へ。
月弦達も一斉に森羅へ駆け寄っていく。
少しは私の心配もしろ! まだ魔力消費過多による体力消耗で満足に動けないんだからな!
だが、(意識のない)森羅を中心に心配そうにしている後輩達を見て、私はまた日常が帰って来たんだとどこか心の中で喜んでいた。
4
目が覚める。
まず私の視界を占めたのは見慣れない天井。色はいかにも清潔そうな白。ここは病院なのだろうか?
「起きはったんやね。具合とか大丈夫です?」
聞き馴れた関西弁の声。
横を見ればベッドの上で座っている京の姿。
「京っ。大丈夫なの?」
「見ての通りぴんぴんしてますわ。それよりも雲雀先輩は大丈夫なん? 一応医者は心配ない言うてましたけど」
「うん、私は大丈夫。問題ないわ」
「そりゃあ、良かったです」
私に笑顔で微笑んでくれる京。
あんなことをしてしまったというのに……。
「あー、それよりも少しいいやろか?」
「なにが?」
「確かに医者は異常ない言うてましたけど……、とりあえずこれ」
京に渡されたのは手鏡だった。私は鏡を通して自分の顔を見る。
驚きが隠せなかった。
色素は薄いがそれでも黒色だった私の髪は白金に染まっていて、日本人の典型的な色をした私の両目は深紅の色を宿していた。
「これって……」
「色だけ言うたらアルビノですわ。怪異と同調してたのが切り離された影響やて、悠夜が言ってはりました。あ、本物のアルビノみたいに、日光の下歩いても何ら悪影響は出ないから、そこは心配せえへんでいいと」
「……そっか」
私は怪異に、化物に魂を売ったのだ。むしろこれぐらいで済んだことを幸運に思うべきなのだろう。
「めっちゃ似合ってますやん。元が言い分、華やかさが増してはりますよ」
「そうかな、ありがとう。……怒ったりしてない?」
「怒るとかそういう次元やないと思うんですけど」
「うっ……」
「まあ、ウチは別に怒ってはないですけど。どんなことでもウチのためにしてくれはったんやろ。そならウチは別にせめたりせえへん。無事に解決したことやし。それに、もうあんなことしようとは思ってへんのでしょう?」
「うん……」
「なら、それでいいとちゃいますか」
「ありがとう」
「おおきに」
どちらともなく口を閉ざし、私達の間に沈黙が流れる。
「ウチは詳しいこと覚えてへんけど、悠夜がなんとかしてくれたんやろ?」
「……うん」
「ははっ。悠夜には敵わんな~。あいつ、演劇のことよく知らんくせに演技は素人にしてはうまいし。
前に部室でお互いの将来の夢を話し合ったことがあるやん? 部活が終わった後に悠夜がウチに謝ってきたんや。そん時ちょっとふてくれててたから、自分の行動でウチが気を害したと思うたみたいで。そん時言われたんですわ。自分には絶対に届かない、狂おしいほど願っても叶えられない『夢』がある。だから例えどんな夢でも、可能性があるのなら頑張って欲しい、って。……あいつ、口ではそんなこと言うてたけど、目がマジやった。例え無理でも、不可能でも、絶対でも、決して諦めない不滅の心が見えたんや。ほんま、悠夜には敵わんと思ったわー、あん時。どんな時にも進める足を止めない。ウチはそんな強さがちょっとだけ羨ましいですわ」
「そうだね。悠夜くんは強い。私のことも救ってくれたもん。……それで、その、悠夜くんは」
――ガラガラッ
「おお、起きてたか雲雀っ」
「心配したんだよ~」
扉から入って来たのは、努とキララ。キララは部屋に入るなり私に抱き付いてくる。
その後ろでは冬空さんと悠夜くんのクラスメイト六人が、私と京の見舞いに来てくれていた。
「みんなっ、うっ、うっ……」
私はいつの間にかかキララの背中に手を回し、泣きじゃくっていた。
「よしよし。もう大丈夫だからね~」
「俺らもすまんかったな。お前のことちゃんとわかってやれなくて」
「違うのっ。私が、私がっ、うわ~ん!」
一年間、部活を通して巡り合えた二人の親友。この時ほどその存在を大きく感じたことはなかった。
私はひとしきり泣きじゃくると呼吸を整え、冬空さん達の方を見た。
「あなた達にも迷惑をかけて本当にごめんなさい。なんて謝ったらいいのか……」
「気にするな。私達は森羅についてきただけだ。それに目的はあくまで白樺を助けることだったからな」
私の自業自得なのにみんなは笑顔を私に向けてくれていた。悠夜くん、いい友達を持ったんだな~、あ。
「ねぇ、そういえば悠夜くんはどこ? 彼は大丈夫だよね?」
「心配ないよ。なんなら行く? お兄ちゃんのところ」
私の質問に答えた銀髪の少女が天井を指差す。
5
「――以上が怪異による今回の事件の発端と顛末です」
『ご苦労様、ユーちゃん。各国の行方不明者もちゃんと見つかって保護できたわ。それにしても悪いわね、疲れてるのに長時間喋らせちゃって』
「別に構いませんよ。僕としては、こっちに来られて余計な騒動を起こされてはたまりませんから」
『なによー。人を除け者にして』
「それで、怪異と同調した者の処分のことですが――」
『ああ、別にいいわよ。大事に至る前にユーちゃんが解決したんでしょう? だったら私はとやかく言うつもりはないわ。その同調した子がユーちゃんのお気に入りならなおさらよ』
「お気に入りとかそういうのではなく、尊敬している先輩の一人なのですが」
『あらそうなの? まあ、あなたがそこに少しでも居たいと思うのなら、私は嬉しいな』
「意外ですね。てっきり今すぐにでも自分の元に僕を連れ戻して、過剰で過保護なスキンシップを取りたくて仕方ないと思ってましたけど」
『だから毎晩ユーちゃん抱き枕で慰めてるわ』
「その習慣を今日から破棄してください!」
『なによー。私のささやかな潤いと安らぎを奪うというの!? ユーちゃんが反抗期になったころから行っている私のフリーダムタイムをっ』
「反抗期って、そんな前からアホな抱き枕つくってたんですが。というかあなた、そんなに暇じゃないでしょう」
『何言ってるのユーちゃん。私は今世紀最大の魔女、モーガン・ペンドラゴンよ。抱き枕を創造するなんてちょちょいのちょいよ』
「ちょちょいのちょいで造らないでください! というか今世紀最大の魔女がそんな下らないことを意欲的にしないでください」
『下らない!? 私の至福の時間を下らないですって! そんなことを言われたら、ユーちゃんの等身大フィギュアを造って部屋に飾るしかないわね、不本意ながら』
「なにが不本意ですかっ。というか造るな!」
『ねえ、さっきまでの会話ってなんだか痴話喧嘩みたいじゃない?』
「どこがですが。……はあ、どこで接し方を間違えたんでしょうか? 手のかかる母を持つと大変ですね」
『………………ユーちゃん、ユーちゃん』
「なんですか?」
『い、今のもう一回言ってくれない?』
「えっと、《はあ、どこで接し方を間違えたんでしょうか?》、ですかね?」
『違う違うっ。その後の、《手のかかる母を持つと大変ですね》ってところ!』
「ちゃんと聞こえてるじゃないですか」
『はぐらかさないでっ。わ、私のこと“母”って言ってくれたよね?』
「――っ!」
『あー、何年ぶりだろ。ユーちゃんが私をそう呼んでくれたのは!』
「そ、そんなこと言っていません!」
『照れなくていいのよ。さあ、もう一度母って言ってみて』
「そんな単語は本当に言った覚えがないんですけど!?」
『さあ、早く愛の言葉を私にちょうだ――(ブツン)』
こちらから無理やり通信を終了させる。あのままにしていたら途方もないことになっていたでしょう。
病院の屋上。
そこで僕は師匠に今回の騒動を報告していたのです。
入院患者共通のパジャマのような服から、ロングコートを肩にかけるように羽織る。
服の袖や裾、髪がそよ風になびく。
転落防止用の金網越しに眼下に広がる景色を眺める。僕の家や國桜高校が確認できた。
「浮かれてたんですかね……」
昔みたいに日常で生活していた僕に導かれた怪異(非日常)。それは嵐のように僕の周りを捲き込み、大きな災害へと発展していく。
「ヒトはヒト、僕は僕。忘れてるわけじゃないんですけどね……」
不意に背を向けていたドアの開く音。こちらに足音が近付いてくる。
「だ~れだ?」
視界を背後から回された手によって奪われる。眼帯で隠されている右目にもちゃんと手の感触があった。
「恋華さん、ですね」
僕は訪ねられた声から推測する。
「正解、でも限りなく不正解ですわ」
なぜ?
そう思って振り返る。
「答えは“みんな”ですわ」
振り向いた先にいたのは恋華さんだけでなく、神薙くんと天宮くんと刈柴くん。玲さんにリリスさん。冬空先輩の努先輩とキララ先輩。京さんと雲雀先輩の姿もありました。
「みなさん、どうしたんですか?」
「絶対安静のお前が病室にいないんでみんなで探してたんじゃニャ。なかなか見つからないと思ってたらリリスちゃんが『屋上は~?』って言ったからこうして見舞いに来たのニャ」
「たく心配かけさせやがって。悠夜ってしばらく入院すんだろ?」
神薙くんの言う通り、外傷が無い京さんや瞳と髪の色が変化しただけにとどまった雲雀先輩と違い、科学を起動したはいえ怪異(大蛇)と肉弾戦を繰り広げ暴れた僕の体はボロボロだった。
目立ったのは折れた右足だけですけど、打撲やら打ち身が酷く出血のせいで血が足らなかった。そこで僕は入院生活を余儀なくされ、ゴールデンウィークの三分の一をここですごさなくてはならないはめに。
「悠夜くんは確かAB型。私もAB型……」
「そ、そう言えばそうでしたね」
「ねぇ、悠夜くんが出血多量でAB型の血が必要になった時、私の血が悠夜くんに使われたんだよ?」
「そうだったんですか。その件につきましてはありがとうございます」
「ううん、気にしないで。……悠夜くんの中には私の血が流れてるんだね。紅い紅い私の血が……」
うっとりと恍惚の笑みを浮かべる玲さん。魅力的だけれど触れればただではすまないような笑顔は、やっぱり玲さんにしか出せないのでしょう。
「あのところで一つ聞きたいんスけど。悠夜の右眼と右腕って……」
「知りたいですか?」
「いや、その……」
「構いませんよ。それに知ってしまった以上、教えなくては。
まずこちらから」
人差し指で右眼を指す。
「この眼帯は制御装置の役割をしていて、右眼の効力を無力してるです」
「右眼……、魔眼のかとか」
「はい。冬空先輩は『死神に愛された少女』という物語を知っていますか?」
「知っているぞ。一人の少女を愛した死神が、少女に振り向いて欲しい一心で起こした行動が、その少女を死においやってしまった話しだろ?」
「では、死神のした行動というのが、少女の眼を魔眼にするというのはご存知ですか?」
「ああ。!、まさかっ」
「はい、僕の右眼はその死神が与えた魔眼とほぼ同種なんです。
特性は魔を視ること。空気中に残留する魔力からヒトの魔法まで。普段は母さんが作ってくれた眼帯のおかげで見えませんが」
「いつからそんな眼を持っていましたの? あなたは幼い頃から眼帯を着けてましたけど」
「それこそ僕が僕であった時から。僕が生まれた時からこの眼はありましたよ」
「そうだったのですか……。私があの時悠夜さんに声をかけられた時は既に」
「でも、悠夜くんって魔力ゼロなんだよね? なのに魔眼って……」
「玲さんの言いたいことはわかります。魔眼と言ってももはやこれは『体質』、あるいは『呪い』という考えの方が当てはまるんです。
魔眼という『体質』で魔法を視るのに魔力は必要ありませんから。魔眼、魔力ゼロというちぐはぐな特徴が僕の中で偶然重なっただけなんですよ。
更に一つ加えるなら、魔眼とは本来ヒトが持つ眼ではない。僕はこの魔眼がある限り、ヒトに分類されません」
驚きを隠せないみんなの視線を、右眼に感じる。
まあ、当然でしょうね。
ある日を境に自分の隣に居た存在がヒトではなく、化物と宣告されたんですから。
「次はこの右腕ですね。みなさんも見た通り、この腕も普通ではありません。
この腕は科学の腕なんです」
「科学ってあれだよな、ラノベとか漫画とかにある魔法じゃない『力』のことだよなニャ? でもあれはフィクションの――」
「現実です。科学は実在します。魔法が溢れる世界の裏側で、科学という存在はあります。
そもそも、科学が何故世界の裏側で息を潜め、表の世界でフィクションや絵空事と詠われるようになったか、知ってますか?」
「いや、わからんニャ?」
「それは相容れないからです。魔法と科学。二つは相反し相剋し、お互いを滅ぼし合う存在なんです。ですから、二つは同じ舞台にはいられない。詳しい経緯は不明ですが、昔に魔法が科学を世界から追いやる形になって、今のように魔法が溢れる世界になったんです。
でも、光が隙間からこぼれて影を落とすように、科学は表の世界にも確かに存在しています。
その例外が右腕(僕)です」
「魔術決闘で私の魔法が壊れたのも、操られた天宮の雷撃を受けて無事だったのも、怪異を滅ぼしたのも科学の力ということか?」
「はい。……魔法が十人十色なように、科学にも個々によって違いが生じてくるんです。
僕の右腕である『破壊者』は魔法に限らず全ての物を破壊するためのモノなんです。まあ、使用による代償は大きいですけど。
この『破壊者』は名前の通り、悪魔を科学の力によって現代に蘇らずために造られたモノです。
右眼に魔眼、右腕に破壊者。
――僕の存在は悪魔と言っても過言ではありません」
右の手のひらをパーの形にして前に出す。
やろうと思えば、ここで科学を起動しこの場にいる全員を抹殺(破壊)することは可能だ。抵抗したとしても、大した障害ではない。
なんだって僕は悪魔だから。愛するヒトも、大切な場所もなもかも消し去ってしまう破壊者――
「それだけじゃないよ」
玲さんは一歩前出ると、突き出した僕の手を握りしめた。
「確かに悠夜くんの手は全てを壊す手なのかもしれない。でもね、こうやって誰かと手を繋ぐこともできるんだよ」
「玲さん……?」
「そうですわ。私も初めて悠夜さんとお会いした日、あなたと握手して絆を確めあったのは今でも覚えていますわ」
「それに、悪魔の右腕ってなんだか、かっこいいじゃん。魔球とか投げれそうだし」
「それに眼帯をとったら魔眼があるとか、今時珍しくもないしニャ」
「悠夜はもともと普通じゃないオーラとか出てたッスからね~。そういう方がむしろしっくりくるッスよ」
「しかし魔装具と思っていた鎖が科学の力だったとはな。フフ、私が敵わないわけだな」
「もしかして、自分は悪魔だから部活を止めるとか言わないよな?」
「駄目だよ~。悠夜くんがいなくなったら、演劇同好会になっちゃう」
「心配せえへんでも、悠夜はウチがスカウトしたんやから、ちゃんとめんどう見たる。悪魔だろうが科学だろうがビシバシ行くで~」
「悠夜くんは私を救ってくれたんだよ。その右眼と右腕の力で。だから、私はそんなに自分のことを卑下して欲しくない。むしろ私は誇るよ。自分にはこんなにすごい後輩がいるって」
「…………………………僕はなんと言われようと非日常がお似合いの科学者、全てを壊す力を持つ化物です。
……でも、ありがとうございます。こうして僕の前にいてくださって」
みんなに頭を下げ、礼をする。
これしかできないけど、僕の存在を享受してくれる誰かがいるのなら、僕はこうしてできることをする。
それがせめてもの礼儀で、少しでも感謝を伝えることがてきるのなら。
「――お兄ちゃん」
さっきから黙っていたリリスさんに呼ばれ顔をあげる。
すると間髪入れずに、リリスさんの唇が僕のそれを強引に塞ぎ舌を捩じ込んできた。
「う、うむっ、んん!」
「ちゅぱっ、ちゅるる、くちゃ、ねちょ、ちゅるっ!」
激しく音をたてながら舌を使って僕の口内を荒らしてゆく。僕は腰に力が入らなくなり、いっさいの抵抗ができない。
濃厚なキスが終わり、リリスさんと僕の口は銀色の粘ついた糸で繋がっていた。
突然の奇行に僕だけでなく、他のみなさんもあっけにとられていました。
「何をそんなに驚いてるの? ディープで濃密な大人のキスなんていつも家でやってるし、それ以上のことなんてしてるじゃない」
天使のような笑顔で僕を地獄に突き落とす義妹。
いつもって、いつもなんてしてませんよっ。そんなのこっちの身がもたない……。そ、それに、それ以上のことなんてしてませんからね!
そのことを固まっているみなさんに伝えようとするも――
「ねぇ、悠夜くん。私さ、悠夜くんに血、わけてあげたよね? 私にもちょうだい――悠夜くんの真っ赤で紅い血」
「悠夜さんの浮気者……! 子供の頃なんて一回もしてくださらなかったのにっ」
「そんな爛れた生活を送っているとはな。よし、私が生徒会長としてお前を粛清してやろう。手元が狂ってぶった斬ってしまっても文句は言うなよ?」
「さーて、ウチがスカウトした愚かな同輩にはビシバシせんとな~」
「ゆ、悠夜くんのエッチ。不潔だよ!」
時遅く、みなさんは聞く耳を持っていなかった。
「まっ、待ってください。みなさん持ってる魔装具や包丁をしまってください。てかあの戦闘のあとでよくそんだけ、元気ですね。それと京さんは手にあるバールとかハンマーとかのこぎりとか何に使うんですかっ。というかどこからそれらを出したんです!?」
雲雀先輩は武装していないものの、しくしくと泣きくずれ努先輩とキララ先輩が慰めている。できればこっちをなだめてください。
それと原因であるリリスさんは金網の上に器用に座り、文字通り高見の見物。おや、口パクで何か言っている。なになに?『ガ・ン・バ・ッ・テ』うるさいですよ! 誰のせいだと思ってるんですかっ。
おまけに、
「悠夜、さすがに俺でも今のお前は憎い」
「全国の非リア充よっ。この勝ち組ロンゲをブッ飛ばす力を俺にくれニャ!」
「悪魔ってゆうぐらいッスから、ちょっとやそっとのことは大丈夫ッスよね~?」
普段は僕に牙を向けない三人までこの有り様。まさしく四面楚歌だ。何故僕は怪異と死闘を繰り広げた後にこんなピンチを味わう羽目に!?
「ちょ、ちょっと待って。集団で行う狩りのように僕を隅に追い込まないでっ。こ、こうなったら、僕だって攻めますよ。科学と魔眼を両方使いますよ! え、なんでみなさんそんな『やってみろ!』的な闘志に満ちた目を? 嘘です。すみません調子に乗りました。だ、だから痛いのは止め、早く武器をしまっ――わー、誰か助けてっ。なんで僕は病院でこんな逆行に立たされてるんですっ。ああ、待って、みなさん落ち着いて話し合いを。だから、まっ――ギャアァァァ!!!」
「ちなみに、お兄ちゃんの入院期間は伸びましたとさ。ちゃんちゃん」
都合主義が多発する中、読んでいただきありがとうございました。
やっぱりシリアス&バトルは疲れます。
これからしばらくは溜めていた用語集やキャラ紹介を追記更新しつつ、ラブコメ&ギャグパートでいきたいと思います。
魔装具も書いた方がいいですかね?
駄目な作者に付き合っていただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。さようなら~