books★それぞれの聖書(グリモア)
テスト期間の合間に書きました。
短編のノリで読んでください。次回はちゃんとストーリーにそったものを載せたいと思います。
それと、お詫びが一つ。
大地くんの名字ですが、古いデータをこの間みたら、『刈柴大地』でした。
伝助はこの古いデータを元に執筆しているので、大地くんの名字の漢字を変えさせていただきます。
読者の皆様に混乱をお招きするようなことをしてしまい。本当にすみません。
伝助はこれからも日々精進しますので、どうかよろしくお願いいたします。
長くなりましたが、それでは本編です。どうぞ~
book 0
「ねぇ、森羅くん。ちょっといいかな?」
「はい、なんでしょうか」
「実はちょっと相談があるんだけど……、今日ちょうど外せない用事ができて図書委員の仕事出れなくなったんだ。
ものは頼みだけど……、放課後だけでいいから、私の変わりに仕事してくれないかな?」
「僕は大丈夫ですよ。今日は部活もありませんし」
「本当っ? やったー、ありがとう。いやー、助かったよ。今度何かおごるね」
「いえいえ、お気になさらず(ニコッ)」
「あっ、うん……///(森羅くんって、こういう人だから嫉妬とかを買うんだろうな)」
「どうかしましたか?」
「ううん、何も。それじゃあ、よろしくね」
「わかりました」
さてと、引き受けたはいいですけど、あまり仕事もありませんね。終了時間まで本でも読んでますか。
あ、ちょうどいいところに、贔屓にしている作家の最新作が。暇潰しにさせていただきましょう。
僕は本に手をかけるも、ぎゅうぎゅうに詰めて棚に入っているのか軽く引っ張っただけでは取れなかった。
多少強引だけど、力をこめて強く引っ張っる。
するとどうだろう。
まるで漫画の展開のように他の本も勢い良く飛び出してしまった。
……………………。
床一面が本で埋まってしまった。
「図書委員も大変ですね……」
book 1
「あれ、悠夜くん……?」
「雲雀先輩、こんにちは」
「図書委員だったの?」
「いえ、僕はクラス委員長です。今日は代理として来ています。……あの、もう少し距離縮めてくれませんか? 話し辛いです」
「えっ。うん、そうだよね。悠夜くんは後輩で、私は先輩なんだから大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫……」
「(本当に大丈夫ですかね。部活の取り決めでお互いを名前で呼び合うことになってますけど、雲雀先輩は上がり症というか人見知りですし)ところで、本を借りに来たんですよね。手続き済ませますよ」
「――大丈夫大丈夫……、えっ? あ、ああ、そうだね。うん、借りに来たんだもんね。じゃあお願いしていい?」
「わかりました。……あの、雲雀先輩が近付いてくれないと」
「こ、これは、悠夜くんが苦手とかちょっと怖いんじゃないんだよっ? ええと、なんと言うか、こ、これは演技なんだ。男の子が苦手な男の娘の役を――」
「落ちついてください、言ってることがめちゃくちゃです。肌には触れませんから本を僕に渡してください」
「は、はいっ(シュバッ)」
「渡すと同時に、バックステップしなくても……。ん?」
本は全部で二冊。
『シェイクスピアの悲劇』、『舞台から見る舞台』
「本当に演劇が好きなんですね。先輩の向上心と演劇に対する情熱は本当に尊敬します」
「そ、そんなんじゃないよ。私は……」
「はい、手続き終わりましたよ」
「えっ、あ、ありがとう。じゃ、じゃあね。また明日、部活で」
「はい、さようなら」
book 2
「あら、悠夜さん。こんなところで何してるんですの?」
「今日だけ図書委員の代理をしてるんですよ。頼まれまして。借りに来たんですか?」
「ええ、じゃあお願いします」
本は一冊。
『これであの人はイ・チ・コ・ロ 男は体でメ・ロ・メ・ロ』
「………………(ブルッ)」
「あら、どうしたんですの?」
「あー、他にもいい本とかありますよ。この本は特に人気もありませんですし、今借りなくても平気ですよ。いや、もうずっと借りなくても……」
「まー、それは悠夜さんといえども、聞きづてなりませんわね。本も読まずに、そんなことをおっしゃるなんて。試しに読んでみたらどうです?」
「いえ、結構です」
「なんなら、教えて差し上げましょうか? ――私の体で」
「あ、あの、図書室でそういうのはいけないですって、そんな、あっ、ダメです!」
「フフフ。ちょうど誰もいませんし、このまま――」
『(ピンポンパンポ~ン♪) 一年D組の霧坏恋華さん。霧坏恋華さん。至急、茶道部の部室まで来てください。繰り返します――』
「チッ」
「(た、助かった……)」
「というわけですので、私はそろそろ行きますわ。あ、ちゃんとその本は手続きしてくださいね」
「はい……。――どうぞ」
「ありがとうございます。それでは、また明日」
「はい、さようなら」
「悠夜さん悠夜さん」
「?」
「チュッ」
「えっ、あわわわ!」
「うふふ。今日はこれぐらいにしてあげますわ。それでは」
「…………(ほっぺたにキスされた!)」
book 3
「これお願いッス。あれ、悠夜?」
「そうですよ。今日は僕が図書委員です」
「ふーん。大変ッスね。じゃあ、頼むッス」
「はい」
本は三冊。
『魔陣獣が見る世界』『これでわかる 魔陣獣の生態』『キャンプのイロハ』
「あ、これ知ってます。『――の見る世界』シリーズ。とてもおもしろいですよね」
「そうなんスか。俺は先輩に薦められたから借りに来たんスけど。他のはどんなのがあるんスか?」
「僕が読んだものでは『悪魔が見る世界』、『ホムンクルスが見る世界』があります。どちらもとてもおもしろくてオススメですよ」
「わかったッス。今度読んでみるッス」
「にしても、キャンプでもするんですか?」
「ああ、今度ワンダーフォーゲル部と一緒に合同でするんスよ。俺ら実験部は魔陣獣の研究を主にするんスけど」
「へぇー、そうなんですか。あ、ところで、なんで僕を実験部に誘ったんですか?」
「え、あーと、それは……、知り合いが一緒の部にいたらいいな~、なんて思っただけッスよ。本当、それぐらいッス(部長に実験対象として部に入れろなんて言われたからって、口にしない方がいいッスよね。部長、まだ諦めてないし)」
「そうでしたか。あ、今度遊びに行ってもいいですか? おもしろそうですし」
「いや、やめといた方がいいッス!」
「そ、そうですか。わかりました」
「それじゃあ、俺はそろそろ行かせてもらうッス」
「はい。さようなら」
「……悠夜」
「なんですか」
「フラグに負けちゃ、駄目ッスよ」
「? ……わかりました」
book 4
「お兄ちゃ~ん。会いに来たよ♪」
「え、リリスさん? どうしてここに」
「さっきダイチから聞いてから。そこの廊下でばったりして」
「そうでしたか」
「ねえねえ。リリスもお手伝いしていいかな?」
「構いませんよ」
~~10分後~~
「ご主人様~」
「今はメイドなんですね」
「退屈です~。暇暇です~」
「あきるの速いですよ。僕みたいに本を読んでればいいじゃないですか。まあ、放課後ですから人も少ないのは当たり前ですけど」
「ご主人様、しりとりしませんか?」
「いいですね」
「じゃあ、リリスの『ス』から」
「酢」
「す、す、す、すいかっ」
「蚊」
「か!? か、亀」
「眼」
「もーっ、なんで一文字で返すんですか、ご主人様はあれですかっ、一文字フェチですか!?」
「違いますよ。そんな特殊な趣味は持ち合わせてませんよ。それよりもリリスさん、集中力無さすぎですよ」
「む~」
「本を読んだらどうです? この前も読んでましたよね、メイドのなんとかを」
「あれはあの時読んでたのが最新刊で、他のは全部読んでるんです」
「そうだったんですか。それでは、これを期に他の本も読んでみてはどうですか」
「うーん、でも選ぶのがめんどくさい」
「そうですか」
「ご主人様はまだ図書委員をやるんですか?」
「はい。まだ時間内ですし」
「わかりました。では、リリスは帰って晩御飯の用意をしておきます。何かご要望はありますか?」
「そうですね。酢豚、お願いできますか。パイナップル有りで」
「了解です。メインディッシュは酢豚、デザートにはリリスですね」
「リリスさん。後半の、僕は口にも出してないんですけど」
「任してください。腕によりをかけて準備をします(ジュルリ)」
「なんで僕を見ながら涎を垂らしてるんですか?」
「お兄ちゃん、いろいろ楽しみにしててね?」
「今度は義妹ですか。というか、何ですか。いろいろって」
「もう、そんなことリリスに言わせないでよ。……お兄ちゃんのエッチ///」
「だから本当に何なんです!?」
「楽しみにしててね~(タタタッ)」
「あ、ちょっと。……行ってしまいました。リリスさんの料理は美味しいですけど、それとは別になんだか不安ですね。
あ、リリスさん、図書室来たのに結局何も借りてない」
book 5
「ん、悠夜? こないところで何してるん?」
「あ、京さん。こんにちは。今日は一日図書委員をやっているんです」
「ふーん。ご苦労さん。じゃあ、これ頼むわ、返却」
「はい」
本は二冊。
『インド人ですら涙を流す 脅威の激辛カレー!』『Let's eat ~辛党版~』
「(また偏ったチョイスですね……)はい、終わりました。本はこちらで返しておきます。何か借りますか?」
「ほなら、これ頼むは」
『お家で簡単に作れる家庭的な殺人激辛料理』
「駄目ですよっ、こんなの食べては!」
「別にいいやろ。味覚は人それぞれなんやから。だいたい、こんなのハッタリや。食ってもそこまで辛へんもん」
「でも、ページを開くとどれも刺激物と言うより、もはや激物と言った方がいいものばかりなんですけど」
「料理は見た目やない。味や」
「見た目も重要ですし、そもそも味だって安全と言えるかどうか」
「なんなら今度作って、悠夜にもお裾分けしてあげるで。ウチこれでも自炊派やから」
「それは遠慮しておきます。まだ味覚が正常でいて欲しいので。
……どうぞ、手続き終わりました」
「おおきに」
「あ、そうだ。少し伺ってもいいですか? 雲雀先輩のことで」
「雲雀先輩? どうかしたん?」
「先輩って、誰にでもあのような感じなんですか?」
「ああ、あの人見知りというか、モジモジのこと。ウチは今年から入ったから付き合いは長いと言えへんけど、人見知りもそうやけど男子には特にひどいらしいで。努先輩も今では、まあ話せないこともないけど昔は大変やったって言ってたで」
「そうなんですか。なんだか不思議ですね」
「せやろ。ウチも始めは舞台上の雲雀先輩とおろおろしてる雲雀先輩が同一人物とは思えへんもん。中にはそのギャップがいいって言うてる奴もおるらしいけど」
「確かに、雲雀先輩って美人ですよね」
「でも、貧乳やけどな。くっくっくっ」
「(京さんも人のこと言えないと思いますけど……)」
「(ギロリ)今何か失礼なこと考えたやろ」
「い、いえ、何も」
「ふーん。ま、ええわ。あ、悠夜やって怪異とかに詳しかったりする?」
「人並みだと思います」
「そっか。ほなら、ウチはもう帰らせてもらうわ。また明日な、さいなら~」
「はい。さようなら(怪異に興味でも持っているんでしょうか?)」
book 6
「これを頼む。――って、森羅!?」
「こんにちは、冬空先輩」
「な、何で、お前が図書委員を? 確か今日は女子が行っていたはずだが……」
「交代して欲しいと頼まれたんですよ。……何回もこれ言うのさすがにうんざりしてきましたね」
「そうか、それは大変だな。(クソッ、ここで代打とは……盲点だ)」
「にしても、よく本来の図書委員が女子なんて知っていましたね。冬空先輩って、図書室よく利用されるんですか?」
「え、あー、うん、そうだな。図書室は昼休みもよく来るし、文学などをよく読むな」
「そうなんですか。僕はよくファンタジーとかも読むんです。最近は天宮くんの影響でライトノベルとかも読みますけど」
「意外だな」
「他の人にも言われます。でも、基本的に雑食ですから、何でも読みますね。
あ、ところでその本借りますか?手続きしますよ」
「うっ、え、えーと、いや遠慮しておく。また今度にでも借りすとしよう。私よりもこの本を借りたい人がいると思うし(言えないっ。三冊のうち二冊がバストアップ法が載っている本だなんて……!)」
「そうですか。それなら本返しておきますよ。これも図書委員の仕事ですから」
「ちょっ、いいからっ。本当にいいからっ。これぐらい自分自身でケリをつけるって。そんな笑顔で本に手を伸ばすなっ。まま待てっ、頼むから本に触らな――刻むぞ!!!」
「(ビクッ)……はい。すみませんでした」
「わかればいい。じゃあ私はこの本を返したら、そのまま帰るから。それでは、また(ああ、結局本を借りれなかった)」
「はい、さようなら(嫌がる先輩がおもしろくて調子に乗ってしまった……)」
「「はぁ…………」」
book 7
「満を持して俺の登場だニャ!」
「誰に言ってるんです? それと、図書室ではお静かに」
「ニャー、悪い悪い。俺こういう所あまり来ないから、いまいち乗りがわからんニャ」
「図書室で何に乗る気ですか。返却ですか? 借りに来たんですか?」
「なんか俺の扱い雑じゃね?」
「正直疲れて来ました」
「へぇー。こんな時間帯でも人来るだニャ~」
「ええ、天宮くんを入れて七人。しかも、キャラの濃い人ばかりで」
「ニャハハハ。それでも、お前の周りに比べればちょっとはマシだろ」
「……………………」
「え、何その沈黙。何で涙目?」
「僕の『日常』ってこんなものなのでしょうか? どうして苦難の連続なのでしょうか? これじゃあ『非日常』と変わらないですよ……」
「なんでこんなに悠夜の周りの空気が重いニャ? なんで悠夜の肩にどんよりとした黒いモヤモヤが? な、なあ悠夜。もしかしてこれ俺のせいかニャ? おーい、悠夜~」
「いえ、僕の普段の行いが悪いのですから、僕がこうして生きているのが悪いのですから。アハハ」
「こわっ。ええー、こういうテンションのやつって、どう扱えばいいニャ……。そ、そんなに落ち込むなよ、悠夜。誰だってついてない時はあるニャ」
「もし転生できるのなら、誰かの役にたてる酸素になりたい」
「落ち着け、悠夜。生まれ変わりどころか、酸素は生物ですらないから」
「そして僕は空気へと霧散していくのですね。何の痕跡も足跡も残さずに……」
「いやっ、大丈夫だからっ。いい加減、鬱モードはやめるニャ! あーもう、悠夜、スマン!(パチンッ)」
「痛っ。ハッ、僕は何を……」
「お、戻ってきた。なんか一人でぶつぶつ呟いてたニャ。悠夜大丈夫か。お前結構ストレス溜まってんじゃね?」
「うーん、どうでしょう。確かにアストラルは慣れないところですが、やはりこういう環境は僕にとって負荷が架かるのでしょうかね」
「ニャー、俺とか亮は悠夜みたいに高校からアストラルに入ってきたから、よくわかんねーな。俺も亮も積極的にアストラルに来たかったし。お前はなんでアストラル来たんニャ?」
「僕は――通える高校がアストラルにしかありませんでしたから」
「あ、そっか……。悪い」
「いえ、別にいいですよ。そこまで気にしてませんし」
「……それなら聞いてもいいか? 魔術決闘の時はうやむやになって結局聞けなかったけど、お前ってやっぱり裏口入学なのか?」
「近いですね。アストラルに来る前、ひったくりを捕まえたんです。それでアストラルの最高理事長の一人に気にいられ、僕の身の上を話したんです。僕が魔力を持ってないって知ってましたっけ?」
「ああ、一応は」
「魔法社会の中で魔力を持たないのは致命的欠陥ですからね。どの高校も門前払いされたんですよ。まあ、僕自身そこまで高校に通う気もありませんでしたし、生きるあてもありましたから特には気にしなかったんですけど。
最高理事長はそんな僕を特別にアストラルへ入れるようにしたんですよ」
「そうだったのか」
「ちなみに、その最高理事長は冬空先輩の祖母にあたります」
「ええ、マジでか!?」
「マジです。そのせいでフェーデにまで発展したようなものですし」
「そうだったのか。それなら納得がいくニャ。……なんかお前っていろいろ大変だニャ」
「玲さんにも言いましたけど、いろいろ慣れました。最初がどうだったと覚えていても、それに実感も沸きませんし。
気付いたらそこにいて、気付いたら歩いていて、そして僕は気付いたらここに居ました。
こんな感じです」
「お前って――よくわからないニャ」
「フフフ。僕自身、自分というものが今も昔もよくわからないですからね。」
「自分探しだニャ」
「めんどうですね」
「まあまあ、そういうニャって。学生は『自分探し』が仕事って言ってたニャ、瀬野先生が」
「いい事言っているのに、瀬野先生が言うと、なんだか違和感がありますね」
「学園都市で酔っ払う人もんニャ」
「本当にしなくてもいい仕事までクラス委員長(僕)に回して。いったいどれほどこの短期間で、僕が苦労したことか……」
「ま、まあまあ、落ち着くニャ。確かにああいう人だけど、根はいい人ニャ。多分」
「ところで天宮くん」
「ニャ?」
「あなたは何しに来たんですか?」
「………………ニャんだっけ」
「たいしてようもないのに図書室へ来たんですか。まあ、駄目ではないですけど」
「いやー、最近はキャラの濃いやつばかりだから、ちゃんと出とかなきゃまずいかニャ~って」
「何の話しですか?」
「ま、今日はお前の話しも聞けたし、俺的には図書室に来てラッキーだったニャ。んじゃ、俺はそろそろ帰るニャ」
「せっかくですし、何か借りたらどうです?」
「遠慮しておくニャ。今日は家で積みに重ねたマンガを読まなきゃいけないからニャ」
「そうですか。さようなら」
「じゃあニャ~」
book 8
「よーっす。部活の合間にやって来たぞー」
「誰から聞きましたか?」
「響」
「予想通りな回答ありがとうございます。はあ、立て続けに来るからもしやとは思いましたけど。こうして、永久循環の輪はできるんですね。騒ぐのは駄目ですよ、図書室ですからねここ」
「わかってるって。俺だってマンガくらい読むぞ」
「結局読むのはマンガですか。というか、野球部ってそんなに緩いんですか? 僕のイメージではもっと厳しいかと思っていましたが」
「そんなでもないぜ。特別厳しいわけではないし、緩いわけでもないからな。顧問も結構ギャグとか通じる人だし。もっとも、ちゃんと練習に出たり実力がないとベンチ入りさえ難しいからな」
「大変ですね」
「まあな。悠夜のところの演劇部はお前を入れて五人だっけ? 少ないけどレギュラー争いとかそうのってあるのか?」
「無いですよ。部長の意向で五人全員が出れる台本を探すそうです」
「へー、それなら悠夜も出るのか。もし劇やるなら見に行くぜ」
「ありがとうございます」
「途中で寝ると思うけど」
「それは来た意味ありませんよ。僕も都合が取れたら、神薙くんの試合を見に行きますね」
「おお、まじか。そしたら特大のホームランを悠夜に当ててやるよ」
「僕は的か何かですか? ホームランは打つだけにしてください。それに、キャッチぐらい僕にもできますって」
「じゃあ、レーザービームを悠夜にぶつける!」
「だからなんで僕に当てたがるです!? しかもそんなことしたら、エラーですよっ」
「んなことはわかってる」
「わかった上での暴挙ですか。なんだか試合を見に行っても、神薙くんが打席に立つ度に冷や冷やしそうです」
「そう言うなって。さてと、そろそろ時間だしマンガ借りて戻るか」
「本当に合間をぬって来たんですね」
「えーと、黒○のバスケはどこかなと」
「え、バスケマンガ!?」
book 9
「ヤッホー。悠夜くん、来たよ」
「やはり来ましたか」
「?」
「あ、いえ、なんでもありません。部活が終わったところですか?」
「そうだよ」
「今日は遅くまでやったんですね」
「一年生の一人がぼや騒ぎを起こしちゃって。その後片付けしてた」
「なるほど。体、大丈夫ですか? やけどとかしてません?」
「平気だよ。ありがとう。そうだ、ついでに本借りてもいいかな?」
「大丈夫ですよ」
本は全部で五冊。
『Let's eat ~愛しいあの人をおとそう~』『上手な首輪の選び方』『絶対にばれない薬物投与十の法則』『あなたと私の監禁生活 ~二人だけの世界を作るには~』『包丁の使い方 ~上級者編~』
「(……悪寒がっ!)」
「どうしたの悠夜くん、なんだかとても寒そうだよ?」
「いえ、なんとも本のラインナップが……。あの、五冊はさすがに多いいと思いますし、何度かにわけて借りたらどうでしょうか?」
「えー、長い間待ってやっと借りれるのに。この本どれも人気なんだよ?」
「大丈夫ですか、うちの学校!? 結構危ない本ばっかりですよ、さっきから!」
「さっきから? 私の他にも誰か来たの?」
「はい、聞いてくださいよ。京さんなんて」
「――京って、だれ?」
「はい?」
「もしかして、演劇部の人。へー、もう名前まで呼び合うようになったんだ。ふーん」
「あ、あの、玲さん。なんで声のトーンを下げるんです? 瞳も単色ですし……」
「フフフ、私なんて最初にフラグが立ってるっていうのに、未だ攻略してない。おまけに他のはどんどん立っていく。あーあ、どうしようっかな~。お姉ちゃんに相談しようか、それともこの間した相談を無視して――」
「あの、玲さん」
「え、なに?」
「包丁しまってください。図書室は、いや、学校にそういうものは持ち込み厳禁ですからね。何度も言わせてもらいますけど」
「あ、ごめんね。ついうっかり」
「そのついうっかりで僕は何回刃傷沙汰に巻き混まれたものか」
「ねえ、悠夜くん。今日は遊びに来ない?」
「今からですか? それはちょっと……」
「なんで、どうして!? リリスちゃんがいるから!? そっかぁ、リリスちゃんがいるからか。そうだよね~、リリスちゃんは家に帰っても悠夜くんと居れるもんね。いいなぁ、いいなぁ、いいなぁ。私は会えるの学校だけだっていうのに……!」
「い、行きますっ。玲さんの部屋」
「本当っ」
「はい、だから包丁はしまってください」
「ウフフ、やったー。何か晩御飯のリクエストあるかな? 私頑張るよ」
「…………酢豚でお願いします」
「うん、わかった♪ それじゃあ、私の部屋に行こうか?」
「はい、そうですね。ちょっと、待っていてください。司書の先生に言ってきますので」
「大丈夫だよ。さっきそこで会って、悠夜くんは私と一緒に帰るって言ったら、戸締まりしてくれるって」
「そうでしたか」
「悠夜くん。本、本」
「はい。……あの、やっぱり」
「もちろん五冊だよ」
「了解です――終わりました。どうぞ」
「うん、ありがとう♪」
「(今だ!)」
――ダッ!!!(僕が足を勢いよく踏み出し音)
――サクッ!(僕の進行方向、床にアイスピックが刺さった音)
「どうしたのかな、悠夜くん? もしかして逃げようとしたの? ひどいなー、悲しいなー。悲しくて涙が出そう。悠夜くんも――泣きたくはないよね?」
「に、逃げるっ。そんなわけありませんよ」
「そうだよね♪ 行こっ♪」
★ ★ ★ ★ ★
こうして僕は玲さんに半ば強制的に連行され、夜遅くに解放されて帰っても、怒ったリリスさんに説教をされるはめになりました。
やっぱり図書委員って大変ですね……