宛ら
「一緒に死んでくんない?」
ユキナは突然、そんな莫迦げた事を言ってきた。しかも、二人が付き合って二年目の記念日だ。
「おまえなぁ……別れるって話ならともかく、一緒に死のうだなんて何言ってんだよ。ははは」
何かの冗談かと思ったが、ユキナは大真面目だった。
「マサオ……あたし本気で言ってるの」
「はぁ? 何でだよ? わけわかんねぇよ」
ユキナは俯いて、言いにくそうにまごまごしている。
「あのね、その、今日みたいな日だからこそなのよ……」
「だから意味わかんねぇって! ふざけんなよ!」
ユキナは黙り込んでしまった。
「ごめん怒鳴ったりして……本気なら本気で何か理由があるんだろ? その理由を話してくれよ。急にそんな事言われて、どうすればいいかわかんないじゃないか」
「そうよね、いきなり死のうって言われて、はい分かりましたなんて言う人なんていないものね……」
「あたりまえじゃないか……」
「マサオとならいっかって思ったの。付き合って二年になるけど、こんなに好きだもん。でね、もう最近疲れたなーって思ってさ。仕事もそうだし、家の事もあるし……ほら、あたしんちの両親は借金だけ残して死んじゃったから、あたしと妹のミカでがんばって返してるんだけど、生きてる内には返せそうにないからもう嫌になって……」
「バカヤロー! 俺がいるじゃないか! そりゃさ俺は赤の他人になっちまうけど……俺は軽い気持ちでお前と付き合ってるわけじゃないんだぜ! 丁度いい機会かもな、ユキナ……」
「……急に改まってどうしたの?」
「ユキナ、俺と結婚してくれ!」
俺は意を決して、ユキナに気持ちを伝えた。借金なんて、俺が死ぬほど働いて返してみせるさ。と言わんばかりに勢いが良かった。
「マサオ……嬉しいよ、ホントにそこまで言ってもらえる程、愛されているんだねあたし。答えなんてもちろん決まってるよ!」
「ありがとう、やっと俺達一つになれるんだね」
感極まった俺は、泣いていた。これからの二人の事を考えると苦難の道のりだろうが、そんなものは気にならなかった。
だけど……
「でもね、もう遅いのよ」
「えっ?」
「さっき食べた食事の中に、遅効性の毒を入れたの。今、隠し撮りもしているの。心中ビデオを撮れば、借金はチャラになるって契約しちゃったから」
「何言ってんだ……うっ!」
「そろそろ効いてきたみたいね。ごめんねマサオ……」
2007/5




