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第6話 即戦力認定

ギルド登録回。

ヨウの最初の立ち位置が決まります。

受付カウンターに近づくと、先ほどの騒ぎを見ていた受付嬢が、少し困ったように笑った。

「災難でしたね」

「いや、そんなことない」

そう返すと、彼女は小さく肩をすくめ、にこりと微笑む。

「私はエレンです。ギルドハウス《パイオニア》の受付担当……と、雑用全般担当です」

「ギルドへの登録を希望ですか?」

可愛らしい女性だが、いつものことと言わんばかりの慣れた表情をしている。

「あぁ、頼むよ」

「では、お名前と得意な武器を教えてください」

「それとも魔法が得意ですか?」

「名前はヨウ」

「強いて言うなら剣だと思う」

魔法についてはよく分からない。

この世界に来てから扱ったのは剣だけだ。そう正直に答えた。

魔法も一回くらい使ったがあれじゃ得意と言える程じゃない。

「わかりました」

「では、ランク測定を行いますね」

「測定?」

「実力確認です。担当がいますので、こちらへどうぞ」

案内されたのは、ギルドハウスの奥にある訓練場だった。


石張りの床。

壁際には武器ラック。

簡易結界が張られているらしく、戦闘用の空間として整えられている。


しばらくすると、奥の扉から一人の男が入ってきた。

見た目は20代半ばから後半くらいだろうか。

柔らかい雰囲気だが、無駄のない体つき。

「お、今日の測定相手は君か」

気さくに手を挙げる。

「俺はレイン・ミスティールス。今日の担当だ」

その瞬間――

視界の端に、淡い情報が“滲むように”浮かんだ。


――レイン・ミスティールス

種族:人間/エルフ混血

剣術:B

魔術:A++

弓術:A++


(混血……?)

見た目は完全に人間だ。

だが耳元の装飾や服の意匠に、どこかエルフ風の要素が混じっている感じもしなくもない。

不自然に目立たない。

だが、意識して見ると分かる程度の違和感。

「どうやって測るんだ?」

俺が聞くと、レインは剣を抜きながら肩を回した。

「単純だよ。俺と戦うだけ」

「こちらヨウさんです」

「レインさん、よろしくお願いしますね」

エレンが軽く俺の紹介をする。

「ありがとう、エレンさん」

「ヨウ、いつでも来い!」

軽く構えを取る。


なら話は早い。

俺も剣を抜き、距離を詰めた。

合図はない。

互いに、間合いへ踏み込んだ瞬間だった。


剣がぶつかる。

金属音が訓練場に響く。

最初の数合は互角。


踏み込み。

受け流し。

牽制。


レインは上手い。

無駄がなく、実戦慣れしている。

(手ごわいかもしれない)

だが――


ここからだ。

意識を切り替え、力を引き上げる。

抑えたつもりだった。

それでも、踏み込んだ瞬間に差が出た。

一気に間合いへ入る。

剣を弾き、体勢を崩し、肩口へ刃を止める。

重心が前に流れた瞬間を、見逃さなかった。

「……負けだな」

静かな声。

レインは一瞬呆然とし、それから苦笑した。

「マジかよ……」

周囲で見ていたエレンも、目を丸くしている。

「もう一回いいか?」

即座にそう言ってきた。

断らなかった。


2戦目。

結果は同じだった。

今度は、さらに差がはっきり出た。

「……はは」

レインは剣を下ろし、頭をかく。

「正直、かなり強いな」

俺も剣を収める。

「そちらも強かったと思うが」

「言ってくれるね

 また戦ってくれるかい?」

「構わないぞ」

言葉を交わしただけだが、不思議と空気は悪くなかった。

互いに、口には出さない。

だが――


相手を意識し始めている。

その様子を、少し離れた2階回廊から眺めている男がいた。

腕を組み、静かに目を細める。


――ゲイル。

ギルドハウス《パイオニア》代表。

「新人にしては、面白いな」

期待と警戒が、同時に混じった視線。

陽が気づくことはなかったが、その視線は確かに向けられていた。


測定が終わり、受付に戻る。

「測定結果ですが……冒険者ランクはBになります」

「B?」

思わず聞き返す。

この世界の基準は、まだ分からない。

エレンは慣れた様子で頷いた。

「簡単に説明しますね」

カウンター横の掲示を指しながら話し始める。


「Fランクは雑用係です。荷運びや護衛補助など、安全な仕事だけ」

「Eランクで、ようやく冒険者を名乗れる最低ライン」

「Dランクになると、一人で任務を完遂できる依頼が増えます」


一拍置く。


「Cランクは、探索や魔物討伐をソロでこなしつつ、パーティ依頼にも参加できます」


そして、少しだけ表情を引き締めた。


「――Bランク」


「ギルドが“安心して任せられる戦力”と判断する水準です」

なるほど。

想像より、かなり高い位置らしい。


「Aランクは中堅上位」

「高難度依頼や危険地域への派遣が許可されます」

「Sランクは……上級冒険者。ほぼ失敗しないと評される存在です」

「国から直接指名が入ることもあります」


腕を組み、軽く息を吐く。

「いきなりBってのは、珍しいのか?」

エレンは苦笑する。

「正直に言えば、かなりです」

「普通はEかDから始まります」

後ろで聞いていたレインが肩をすくめた。

「新人でBは、ほぼ即戦力扱いだな」


エレンは続ける。

「それと、もう一つ大事なのが“パーティ制度”です」

「上位ランカーはリーダーとして正式パーティを結成できます」

「さっき絡まれた人たち、覚えてますか?」

「フロンティアのエリックさん」

「アウトライダースのヴィクターさん」

自然と、さっきの顔が浮かぶ。

「彼らもトップランカーの1人です」

さらに指を折りながら続ける。


「防衛特化の《バスティオン》」

「少数精鋭主義の《ホライゾン》」


「それぞれ思想も役割も違います」

「ギルド《パイオニア》は、複数の有力パーティによって支えられている形ですね」


静かに頷く。

(つまり――ここは単なる受付所じゃない)

(勢力が集まる場所だ)

視線の端に、先ほどの二人の姿がよぎる。

(エリックやヴィクターは、あの中でも別格だった)

(ああいう連中が何人も集まっていれば、空気が荒れるのも当然か)

エレンは最後に、柔らかく笑った。

「Bランクになった以上、受けられる依頼の幅はかなり広いですよ」


俺は掲示板へ視線を向ける。

「報酬が多い依頼はあるか?」

(この街で動くには、まず資金が要る)

「それなら、山賊討伐だな」

レインが口を開いた。

「行商人を襲って街道を荒らしてる連中だ」

「最近は殺人にも手を染めてるやつらだ」

「ただ数が多くてな。

 元は俺1人で行くつもりだった……」

こちらを見る。

「あんたの実力なら一緒でも悪くない。どうだ?」

少し考えたが、答えはすぐに出た。

「分かった。一緒に行く」

冥奪の眼の力を見られるのは気が進まない。

だが、レインの実力を確かめたい気持ちもあった。

「それじゃ準備してくる。少し待っててくれ!」

そう言って、レインは奥へと消えていった。

「よかったですね。レインさん腕が立つので、きっと成功しますよ!」

……この人、ずっと笑っているな。

(いつもこんな調子なのか)


少し待つと、準備を終えたレインが戻ってきた。

「お待たせ!」

「それじゃあ行こうか!」


初めての依頼が開始される。

この依頼が思いもよらない波乱を巻き起こすとを知らずに。


読んでいただきありがとうございました。

ついにレイン登場しました。

次回はただでは終わらない初依頼です。

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