「ねずみ」の「まきもの」(その六)
忍者大将は縄の火を消す。
燃えた結び目は四つ。まあまあだ。
しかし、三日後に「おそうじ」する「おしろ」は、こんなものじゃない。八かいだてだ。
しかも、「おそうじ」を見に来る人が、たくさんいる。
忍者の「おそうじ」は、きれいにするだけではダメなのだ。
かっこよく、きれいにする。これが大事。だって、忍者だから。
三日後の「おそうじ」では、忍者の人数をふやす。そして、今日よりも本気を出す。
「それでは、村に帰るぞ!」
忍者大将が走り出す。
忍者にとっては、村に帰るまでが、「おそうじ」だ。最後まで、きれいにかっこよく。
忍者大将のあとを、忍者たちが一列になって走る。
「にん!」「にん!」「にん!」「にん!」「にん!」「にん!」
そんな様子を、遠くの山から何者かが見ている。
赤い忍者だ。赤い村の忍者大将。
「なかなかやるな。黒い村の忍者たち」
いのししで邪魔をしたのに、あんなに早く「おそうじ」を終わらせたのだ。
それに、あの走っていく姿。前からうしろまで、列がそろっている。
忍者にとっては、村に帰るまでが、「おそうじ」だ。最後まで、きれいにかっこよく。
「次は三日後だったな」
赤い村の忍者大将はつぶやいた。
黒い村の忍者たちが、八かいだての「おしろ」を、「おそうじ」することになっている。
「そっちも見にいくとするか」
赤い村の忍者たちでは、六かいだての「おしろ」が限界だ。
それよりも大きな「おしろ」では、きれいにかっこよく「おそうじ」できない。
黒い村の忍者たちの「おそうじ」を見て、その秘密を見やぶってやる。




