「うま」の「まきもの」(その二)
おひめさまはさっそく、右手と左手の親指に、『指人形』をつける。おひめさまの『指人形』だ。
準備ができると、
「ぶんしんのー」
おとのさまに向かって、
「じゅつ!」
親指をどちらも、『にぎりこぶし』の外に出す。ぴょこっ!
「おおっ、ひめが三人にふえたぞ!」
さむらいたちが、はくしゅをしながら、
「さすが、おひめさま!」
そんな中、おじいさんのさむらいが、『分身の術』をやってみたそうにしているので、
「やってみる?」
「よろしいのですか!」
おじいさんのさむらいは、右手と左手の親指に、忍者の『指人形』をつけた。
うきうきしながら、
「ぶんしんのじゅつー!」
しかし、失敗だ。
親指を『にぎりこぶし』から出す時に、『指人形』がはずれてしまった。『にぎりこぶし』を「かたく」にぎりすぎたので、失敗したのだ。
「こうやるんだよ。ぶんしんのー」
おひめさまが、お手本を見せる。
「じゅつ!」
ぴょこっ! 三人のおひめさまだ!
それを見て、おじいさんのさむらいも、
「ぶんしんのじゅつー!」
こんどは、片方の親指だけ、成功した。もう片方の親指は、『指人形』がはずれてしまう。
「これは、かなりむずかしいですな」
「えー、簡単だよー」
この時、赤い忍者大将は、自分もこっそりやってみようと思った。
簡単そうだから、たぶんできるはず。おじいさんのさむらいが、下手なだけだ。
いそいで忍者の『指人形』をつくると、小さな声で、
「ぶんしんのじゅつー」
しかし、失敗した。親指を『にぎりこぶし』の中から出す時に、『指人形』がはずれてしまった。
いやいや、今のは練習だ。本気じゃなかった。
もう一回やってみる。
ところが、こんども失敗だ。これ、おれさまでも、むずかしいぞ。
そんな赤い忍者大将に、おひめさまは気づかない。
おじいさんのさむらいに言う。
「これは簡単だよ。だれにでも、できるって。ほら、ぶんしんのー、じゅつ!」
こうしている間も、「おしろ」では忍者たちが「おそうじ」中。




