「うさぎ」の「まきもの」(その一)
となりの丘では、忍者大将が「おしろ」の方を見ていた。
あるものが届くのを、待っているのだ。
忍者大将のかわりに、忍者の一人が、
「あれが忍法『屋根がわら、ふみふみ』でござる。割れた『屋根がわら』がないかを、さがしているのでござる」
おとのさまとおひめさまに、『おそうじ忍法』を説明していた。
「そして、あっちが忍法『壁歩き』。壁を自由に、歩くことができるのでござる」
そこで忍者大将から、秘密の合図があった。
おとのさまとおひめさま、二人の注意をそらしてほしい。
そのあいだにこっそり、次の「おそうじ」の準備をするのだ。
説明係の忍者は小さくうなずくと、
「おとのさま、おひめさま、石垣のあの場所を、見てほしいでござる」
他の忍者が大太鼓をたたいて、「おしろ」に合図をおくった。
「あそこに、力持ちの忍者がいるでござる」
本当だ。石垣の上に、忍者がいる。大きな石を、片方の手で持ち上げていた。
しかし、そこで風がふく。
大きな石が、手から落ちる。石垣の上を、ころん、ころん、ぽーん。
ころがり方がおかしい。あれは軽いもののころがり方だ。
「紙でつくった石でござるな」
忍者は、「おせんべい」でできた「しゅりけん」を、おひめさまにわたすと、
「この筒の中に、なげ入れてくださいでござる。あの忍者に、ちょっと『おしおき』をするでござる」




