「ねずみ」の「まきもの」(その一)
戦国時代が終わり、黒い村の忍者たちは考えた。
これから何をしよう。
忍者たちはしばらく考えた。そのあとで、一つの答えを出す。
そうだ。「おそうじ」をがんばろう。
この平和な世の中で、自分たちが活躍できるのは、「おしろ」の「おそうじ」だ。
黒い村の忍者たちは、チラシをつくった。あちこちの「おしろ」にくばる。
すぐに注文がきた。
忍者のみなさん、「おしろ」の「おそうじ」をおねがいします。
それから十年。
今では、忍者の村はどこでも、「おしろ」の「おそうじ」をしている。
黒い村だけじゃない。
赤い村、黄色の村、青い村、緑の村、白い村、金色の村。どの村も、「おしろ」の「おそうじ」をしている。
だから、競争が大変だ。
普通に「おそうじ」をするだけでは、注文がこない。
きれいにするだけではダメ。かっこよく、きれいにするのだ。
ちょうど今、黒い村の忍者たちが、「おそうじ」を始めようとしている。
山の中にある「おしろ」だ。
三かいだて。「おしろ」の中では、小さい方だ。
この「おしろ」のおとのさまが、おともをつれて、先ほど遊びに出かけたばかり。
黒い村の忍者たちは、「ほうき」や「はたき」を持って、「おしろ」の前にならんでいた。
忍者大将が言う。
「全員いるのかを、確認する!」
すると、忍者たちが順番に言う。
「にん!」「にん!」「にん!」「にん!」「にん!」「にん!」
全員いる。行方不明はいない。




