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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第12章 『完璧なわたしを、壊してくれますか』

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エピローグ 『リンクの先に、想いは続く』

──深夜2時。

LinkLive本社ビルの一室、配信ルームの灯りがまだ消えない。


橘いのりは、薄暗い部屋の中でひとり、静かに椅子に座っていた。

モニターには配信ソフトの画面。カメラの赤い点が“録画中”を示している。


カチリ、とマウスをクリックすると、タイマーが動き出した。

これは、非公開動画──誰にも見せない“いのり”の本心を、ただ残すだけの、個人の記録。


画面の中。巫女衣装のアバターが、いつものように微笑んでいる。


《こんばんは。Inori∞Linkです。》


でも、その声はどこか、少しだけ寂しそうで、でもあたたかかった。


《今日は、特別な誰かに向けて、お話ししたいことがあります》


《だから……もしこれを、未来のわたしが見るなら──覚えておいてね》


 


彼女は、ゆっくり言葉を選ぶように続ける。


《たぶん、あの夜の配信で……私は、すごく臆病だった》


《素直になるのが怖くて、“演技”っていう仮面の中に隠れて、それでも“本気”を伝えようとしたの》


《──だって、そうじゃないと、壊れそうだったから》


《“甘えてもいい”って言ってくれた、あの人の声がなかったら、わたし、たぶん……きっとずっと仮面のままだった》


 


《あの人の声を聞いていると、完璧じゃなくても、ちゃんと生きていいんだって思えるの》


《泣いても、困らせても、照れても……全部、見てくれてるって》


 


──少しだけ、間が空く。


画面のアバターが、ふっと俯き、小さなため息を吐いたように肩を落とす。


《……この動画は、きっと誰にも見せない》


《でも、わたしが“未来”にちゃんと会いに行くために、残しておきたくて》


《だから……きっといつか、あの人が名前を呼んでくれるその日まで》


《わたしは──“わたし”のままで、歩いていきます》


 


《Inori∞Linkは、完璧じゃないかもしれないけど》


《わたし、橘いのりは……あの人のそばにいたいから、変わっていきたいです》


 


録画タイマーが、5分00秒を過ぎる。

彼女は、ほんの一瞬だけ笑って、画面に向かって小さく囁く。


《……だから、先輩。ちゃんと、待っててくださいね》


《高校生になったらって言ったけど、もっと先でも、ずっと先でもいいんです》


《でも、そのときは……》


 


《“いのり”って、名前で──呼んでください》


 


カチッ。


録画終了。


画面が真っ暗になる。

そこにはもう、巫女衣装のアバターも、名乗りも、視聴者のコメントもない。


ただひとりの少女が、声にならない想いを、確かに遺していた。


 


 


──それから、しばらくして。


LinkLiveの収録ルーム。

仕事終わりのコウが、ふと開いたメッセージフォルダに、いのりからの未送信メッセージが残っていた。


「……これ、送るか迷ってて。変だったら、ごめんなさいね」


その文の下には、未公開動画のURLとパスワード。


コウはクリックし、動画を再生する。


──そこにいたのは、もう仮面なんかじゃない。

本当の“橘いのり”だった。


 


視聴後。

しばらく何も言えず、ただモニターを見つめていたコウは、そっと画面に向かって呟いた。


「……ああ。わかったよ、いのり」


「その時が来たら──ちゃんと呼ぶ」


 


静かに、穏やかに。

彼の声は、確かに、あの夜の彼女に届いていた。


 


──“リンク”は、いつか“想い”に変わる。


たとえ時間がかかっても。

たとえ仮面を被っていたとしても。


それでも、誰かの声が、誰かの想いが、

誰かの心を繋げてくれる。


 


《Inori∞Link》──その名前が示すのは、

誰かと誰かを“永遠に繋ぐ”願いだった。


 


そして、その先には、きっと。


“恋”という名前の──未来が、待っている。

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