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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第12章 『完璧なわたしを、壊してくれますか』

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『恋って、甘えてもいいものですか?』

LinkLiveの大型企画が発表された。

タイトルは《#即興恋愛ロールプレイ》。

男女ペアで即席の恋愛ドラマを配信し、演技力と化学反応で視聴者をときめかせるというものだ。


ペアは抽選。

けれど、視聴者がどこかで“仕組まれているのでは”と疑うほど、絶妙な組み合わせが発表された。


──レイ&Inori∞Link。


瞬間、X(旧Twitter)のトレンドに「#先いのペア」が急上昇。

「絶対尊い」「やばい、絶対事故る」「年齢差カップル最高」のタグが並ぶ。


だが、本人たちはもっと静かだった。


「……やるしか、ないですね」

「大丈夫? 無理そうなら、交代してもらって──」

「……嫌じゃないです」

「?」


「むしろ……この機会、逃したくないです」


 


配信当日。

舞台は“放課後の教室”。

レイ(コウ)が先にログインし、黒板前でアバターを立たせる。


そこに、白と赤の制服風にアレンジされた《いのり》の新衣装が登場する。

静かに教室へ入ってきた彼女は、少しだけ視線を伏せて言う。


《先輩、また……一緒に帰ってくれますか?》


コメント欄は瞬間的に爆発。

「はい死んだ」「これは犯罪です」「甘えた声かわいい」

視聴者はすでに現実に戻れない。


 


即興ロールプレイは進んでいく。

お弁当を交換したり、鞄を持ち合ったり、

帰り道に肩が触れてドキッとしたり。


流れるように進む演技の中に、ふとした“素”が混じるたび、視聴者は息を呑む。


──それは“キャラの演技”じゃない。

それは、あの“泣いた夜”以降、ふたりが育ててきた“本当の関係”。


 


そして、ラストシーン。


放課後の教室。

レイがふと口にする。


《なあ……いのりって、さ。好きな人……いる?》


一瞬、沈黙。

視聴者の呼吸まで止まったかのような、緊張の間。


──そのときだった。


彼女のアバターが、そっと椅子に腰掛け、手を膝に重ねた。

そして、静かに語り始めた。


《……います》


《でも、その人は……きっと、わたしのことを“子ども”だって思ってます》


《完璧じゃなきゃ、誰にも相手にされないって……ずっとそう思ってきたから、怖くて、ずっと黙ってました》


《でも──》


いのりの声が震える。

けれど、それは“演技”ではなかった。


《その人は、泣いたわたしを笑わなかったんです》

《弱くて、情けなくて、“すごくない自分”を、ちゃんと見てくれた》


《その人がいたから、わたしは……“わたし”のままで、ここにいられる》


《だから……恋って、甘えてもいいものだって、やっと思えるようになったんです》


《……甘えたら、嫌いになりますか?》


 


コメント欄は、もはや言葉にならない。


「やばい」「リアルすぎる」「これガチだ」「泣いた」


──画面越しの恋の告白。

たとえ演技の形をとっていても、それは誰の目にも“本気”だった。


 


配信は、大団円で幕を閉じる。

終わった直後、事務所ラウンジではスタッフたちが口を揃える。


「これ……演技に見えたか?」

「無理無理。ガチで恋してるでしょ、あれは」


ひよりはニヤリと笑ってコウの背中を叩く。


「どうすんの? あんな全力で言われてさ。……逃げられないよ?」


「……俺、何も言ってないけど」


「“何も言わない”が一番残酷なんだよ、コウにい」


コウは、苦笑した。

でも──その内心では、確かに何かが動いていた。


あの告白を、“ただの演技”としてスルーするほど、もう鈍くはいられない。


 


その夜。

また、通話が繋がった。


「先輩、今日の……どうでした?」


「……すごかったよ。驚いた」


「ふふ、よかった」


「演技、上手いんだなって」


「……それ、ぜんぶ演技だったと思います?」


「……そうじゃないよな」


「……うん。じゃあ、先輩もちゃんと、答えを考えておいてくださいね」


「……答え?」


「高校生になったら、デートしてくださいって。あれ、本気で言ってますから」


 


その声は、どこまでも静かで、優しくて、真剣だった。


画面越しでも──

いのりの想いは、しっかりとコウに届いていた。

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