『わたしだけの夜、わたしたちの朝』
「……ひよりっ、こっちこっち〜!」
朝食会場の入り口に入った瞬間、
メグさんの元気な声に、わたしは一瞬ひるんだ。
「えっ……え?」
「ほらっ、ひよりちゃん、こっち来て来て! お話しタイム〜!」
「ちょっ、まって、え、なんで手つかんで――」
そのままぐいぐいと腕を引かれて、テーブル席の奥に押し込まれた。
「はい、質問ターイム♡」
「えっ!? な、なにが!?」
周りを見れば、夜々さんが髪をかきあげながら涼しげに笑っていて、
みなとちゃんがもくもくとパンを食べながらも、さりげなく耳をそばだててる。
るるちゃんはというと、ジュースを飲みながら、キラキラした目で私を見てるし……。
(……こ、これは……完全に包囲網!?)
「で、で、なにか用ですか……?」
「とぼけちゃって〜。昨日の夜の話、よ?」
夜々さんが、にこっと微笑む。
でも、その笑顔の奥に、探るような光を感じて――私は、観念した。
「……えっと、普通に混浴して、星を見て……それから部屋でちょっとおしゃべりして……」
「添い寝は?」
「し、しました……でも! ほんとにそれだけで!」
「キスは?」
「っ……おでこ、だけです!」
「なーるほど〜〜っ! おでこね! ふふふふっ」
メグさんは満足そうにニヤリ。
でも、みなとちゃんは逆に肩の力を抜いて、ふうん……と小さく呟いた。
「じゃあ、まだ“本番”じゃないってことだね」
「えっ、本番ってなに!?」
「心の、ってことよ」
みなとちゃんが、優しく笑った。
「わたしは……ちょっとホッとしたかも」
「るるもですっ。まだ追いつける気がしますっ」
「……あらあら、これはますます“戦線拡大”ね」
(みんな……やっぱり……)
でも、イヤじゃない。
不思議と――うれしかった。
だって、ちゃんと見てくれてるから、
そして、わたしもまた、みんなのことを知ってるから。
そのとき――。
「失礼しまーす! LinkLiveより大切なお知らせですっ☆」
突然、朝食会場に響き渡る館内放送。
神代マネージャーの、明るすぎるテンションが降ってきた。
《さあ、これがラストイベント! 全員強制参加、貸切露天風呂での混浴イベント! テーマは――『心も体も素直になろう♡』》
「「「「………………」」」」
一瞬、空気が凍った。
「え、なにそれ、わたし今寝ぼけてる?」
「し、しっかり起きてるけど!? え、えっ!?」
「……最後まで、抜かりないってことね」
「ま、また混浴……っ、さ、さすがに準備しなきゃ……!」
「ふぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!??」
るるちゃんの絶叫をBGMに、
私たちは、再び“戦場”へと駆り出される――。
でも、
きっと、それは争いなんかじゃない。
大好きな人のとなりで、
自分の想いをまっすぐに伝えるための――
わたしたちなりの、
“ラブバトル”なんだから。




