【三日目】『ぬくもりの続き、夢じゃない朝』
目が覚めた瞬間、
まだ夢の中にいるんじゃないかって思った。
あったかい。
背中に、お兄ちゃんの腕。
吐息が、うなじにかかる。
(……ほんとに、昨日の夜のままだ)
私は今、お兄ちゃんの腕の中で目覚めた。
しかも、抱きしめられたまんまで。
動いたら、起こしちゃうかなって思って、
しばらくそのまま、呼吸を合わせるように小さく息を吸った。
(ん……なんか、ちょっと汗の匂い……)
昨日の混浴と星空散歩と、そして――添い寝。
思い出すだけで、顔があっつくなる。
唇に触れなかったキス。
でも、おでこに落ちたその一瞬が、今も私の中で優しく光ってる。
(ずるいよ、お兄ちゃん……あんなキスされたら、もっと好きになっちゃうに決まってるのに)
でも、うれしかった。
大事にしてくれるってわかった。
今はまだ子どもだと思われてても、きっと――
「……ん、ひより?」
「っ……お、おはよう……」
背中から、お兄ちゃんの声。
びくってなって、私はちょっとだけ肩をすくめた。
「まだ寝てていいぞ。今日は少し朝遅めだって、神代さんが言ってたし」
「ううん……もったいないもん、せっかくのお兄ちゃんとの朝なんだから……」
そう言って、私はくるっと向き直る。
顔と顔が、思ってたよりもずっと近くて、びっくりした。
「っ、あ、あの……ちょっとだけ、顔見てただけだからね!?」
「ん、ありがとう。ひよりの寝顔も、かわいかったけどな」
「~~~っ! い、今の録音してない!? 絶対してないよね!?」
「してないしてない」
にやにや笑ってるお兄ちゃんに、むぅ~って唇をとがらせたけど――
それでも、こんな朝が迎えられるなんて思ってなかったから、
やっぱり、胸の奥から笑顔があふれてきちゃう。
「……ねえ、朝ごはん、一緒に行こ?」
「もちろん」
「その前に……」
私は、ぎゅうっとお兄ちゃんに抱きついた。
胸の中で、腕の中で、確かめるように。
昨日も、今日も、全部つながってるって信じたくて。
「ありがと、昨日……ずっと一緒にいてくれて……キスもしてくれて……」
「……ひより。これからも、ずっとそばにいるよ」
「うんっ!」
どこかで鳥が鳴いてた。
カーテン越しの光が、ふたりの顔をやさしく照らしていた。
特別な朝。
夢じゃないぬくもりの中で、私はそっと、笑った。




