『ぎゅってして、もっと近くで恋したい』ご褒美タイム:るる編
「……ねえ、お兄ちゃん。部屋、来てくれる?」
夜も深まった旅館の廊下。
るるは、薄手のネグリジェ姿で廊下の端に立ち、コウをじっと見つめていた。
「今日ね、ビンゴで“添い寝券”当たったでしょ? るる、ほんとに……一緒に寝たいの」
その言葉に、コウは戸惑いを隠せなかった。
「い、いや、添い寝って言ってもさ……ほんとに“寝るだけ”っていうか」
「うん、わかってるよ?」
るるはにっこり笑って――
その笑顔が、どこかいつもより“女の子らしく”見えた。
「でも、るるは……ぎゅってしてほしいの。今日だけでいいから、“好きな人のとなり”で眠りたいの」
* * *
布団がふたつ、並べられた和室。
るるは、ぴったりとコウの隣に身体を預けて、掛け布団の中に潜り込んでいた。
「ね、お兄ちゃん。るるのこと……“子ども”って思ってる?」
「え……」
その問いに、答えが出せないままコウは沈黙した。
「ねえ、聞いて? ……るるね、ずっと“恋愛は大人のもの”だって思ってたの」
「だって、テレビでも漫画でも、みんな高校生とか大学生とか……大人っぽい人たちが、好きって言い合うでしょ?」
「でもね、るるも、ある日気づいちゃったの」
「“あ、私……コウくんのこと、好きだ”って」
布団の中で、るるの小さな手が、コウの手の甲にそっと触れる。
「でも、好きって気持ち、ダメなことみたいに思われるの、すっごく悲しかった」
「だって、私は本気で……“女の子”として、好きなんだよ?」
その声は震えていた。けれど、真剣だった。
「……子どもだからって、恋しちゃいけないの? 触れたくなるのって、おかしいの?」
「……るる」
コウは、そっと彼女の頭を撫でた。
その髪はふんわりとしていて、湯上がりの甘い香りが残っていた。
「……じゃあ、今夜だけ、“大人”にしてくれる?」
「……え?」
「ぎゅってして……頭、撫でて……隣にいてくれるだけでいいの。けど、触れたら、ちゃんとドキドキしてほしいの」
「私、ちゃんと女の子だよって……知ってほしいの」
そう言って、るるは身体をコウにぴたりと寄せた。
ネグリジェの布地越しに伝わる肌の感触は、あまりにも“生”で――
「る、るる!? その……服、薄いよ……っ」
「うん、知ってる。下、つけてないの」
「っっっっ!!??」
「だって……もしも“ぎゅってされたとき”、感じちゃったら……“何も着てない”ほうが、ちゃんと伝わるでしょ?」
「……それにね、そういうのって……一生の思い出になるんだよ?」
るるは、まっすぐにコウを見つめていた。
その表情は、年齢を忘れさせるほど真剣で――
そして、少しだけ、潤んでいた。
「お願い、お兄ちゃん……もっと、近くにいて」
彼女の腕が、そっとコウの背に回される。
柔らかな胸が、ぴたりと押しつけられる形になる――が、それを本人はまったく意識していない様子だった。
「……ねえ、ドキドキしてる? るるはね……してるよ。ずっと、ドキドキしてる」
「いっしょに寝てるだけなのに、なんか、胸の奥がきゅうってしてて……ふれるたびに、嬉しくなって……」
「なんでだろうね、コウくん。触れたいって思うのって、どんな気持ち?」
コウは、答えられなかった。
けれど、そっとるるの背中を撫でると、彼女は安心したように小さく笑った。
「……ありがとう」
そして――
「るる、ぜったい、もっと大人になって……お兄ちゃんを本気で“ドキドキさせる”から、待っててね?」
その声は、子どもっぽくも、確かに“女の子の約束”だった。
コウが黙って頷くと、るるは目を閉じて、彼の胸にそっと頬をあずけた。
「……今夜だけは、好きって言ってもいい?」
「うん」
「すき……大好き……♡」
甘い吐息が、眠気のように部屋を満たしていった。
掛け布団の中、小さな体はぬくもりを求めて、ぴたりと寄り添い続けた――。




