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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第11章 ドキ❤️ドキ❤️温泉慰安旅行!ポロリと恋と混浴と!?

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『一杯のワインと、ほどける距離』ご褒美タイム:夜々編

旅館のバーラウンジは、どこか現実から隔絶された空気に包まれていた。

間接照明の灯り、カウンターの奥に並ぶワインボトル、低く流れるジャズの旋律。

その空間に、一枚羽織った薄手のガウン姿の女性が、ひとり、ぽつんと座っていた。


「……来たわね」


夜々は、手にしていた赤ワインのグラスをくるりと回しながら、ゆっくりと振り返った。

その視線の先――コウが、戸惑いながらも歩み寄ってくる。


「遅くなって、ごめんなさい。ちょっと、メグの花火に付き合ってて……」


「いいのよ。勝ち取った権利だもの。文句なんて、言わない」


言葉は笑っていた。けれど、その奥に、わずかな棘が混じっていることにコウは気づいた。


「……あの子たちね、可愛いわよ。素直で、まっすぐで、傷つくことも怖がらない」


夜々はグラスを傾けて、赤いワインを口に含んだ。


「でも、私は……そういうの、ちょっとだけズルいと思ってるの」


「ズルい?」


「ええ。自分の想いをぶつけるって、ほんとはすごく勇気がいる。でもあの子たちは――好き、って、簡単に言える。……私は、そんなふうに、できないの」


夜々の指が、ゆっくりとグラスをなぞる。

その指先は細くて、儚げで、でも確かに熱を帯びていた。


「……ねえ、コウくん。私のこと、どう思ってる?」


突然の問いに、コウは目を見開く。


「どう、って……それは……」


「“年上の余裕があって、からかってくる人”――そう思ってるんでしょ?」


「いや、そんなこと――」


「あるでしょ? 自分でも気づいてないかもしれないけど、あの子たちに向ける視線と、私に向ける視線、違うもの」


夜々は立ち上がり、グラスをカウンターに置いた。

そして、カウンターの隣に腰掛けるコウの横に、すっと身を寄せた。


「……だから、今日はちょっとだけ、ズルくなってもいい?」


「え……?」


彼の肩に、ゆっくりと頭を預ける。

その瞬間、微かに濡れた髪がコウの首に触れて、甘いシャンプーの香りがふわりと鼻をくすぐった。


「ねえ……知ってる? これ、完全に“酔ってる女のフリ”してるの」


「っ……」


「でも、本気で酔ってるのは、たぶん――」


夜々は、そっと顔を上げた。

その瞳が、まっすぐにコウを見つめる。


「……あなたの、声と、優しさに。酔ってるのよ、ずっと前から」


あまりに真っ直ぐな言葉に、コウの言葉が詰まった。

その隙を縫うように、夜々は身を乗り出して、彼の胸元にそっと指を這わせた。


「……あら、ちょっと鼓動、早い?」


「それは、ずるいって……夜々さんが……」


「そうよ。ずるいの、今夜は。勝ち取った“デート券”なんだから。……使いきらなきゃ、もったいない」


夜々は立ち上がり、そのまま彼の手を引いた。

カウンター奥の奥――バーラウンジに併設された、ちょっとした休憩室。


「……ここ、使っていいって、さっきマネージャーに聞いたの。――ふたりきりでも」


扉が閉まる音。

薄暗い室内には、小さな間接照明だけが灯っている。


「ねえ、コウくん。……お願いがあるの」


「……はい」


「このガウン、ほどいてくれる?」


「……っ!?」


「嘘よ。……でも、ちょっとだけ、触れてみて」


そう言って夜々は、自分の手を、コウの手に重ねた。

薄布一枚。その下には何も身に着けていない。

それを、はっきりと、手のひら越しに感じてしまう。


「ね? びっくりした?」


「……はい。正直、すごく……」


「でも、不思議ね。触れられると、こっちも――嬉しくなっちゃう」


そう呟いて、夜々はそっと、コウの胸に額を預けた。

そして、小さく、小さく囁く。


「ねえ、コウくん。……もっと、私のこと、見て?」


「見てますよ。ちゃんと」


「……そうじゃない。私を、女として、ちゃんと――」


コウの腕が、ゆっくりと夜々の背を包む。

その温もりに、夜々の呼吸が震える。


「……ああ、もう。ほんとに、本気になっちゃいそう」


その言葉は、もはや冗談ではなかった。

でも夜々は、それでも――幸せそうに、笑っていた。


「ありがとう。……今夜のこと、ずっと覚えてるから」


そっと、彼の肩に頭を預けた夜々は、しばらくそのまま、静かに目を閉じた。

まるで、大切な夢に包まれるように。

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