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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第11章 ドキ❤️ドキ❤️温泉慰安旅行!ポロリと恋と混浴と!?

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【出発前夜】ー不知火夜々の場合ー

「……はぁ」


不知火夜々は、自室のドレッサーの前で、静かに息を吐いた。


整えられた漆黒のロングヘアが、鏡に映る。

艶やかな睫毛の奥で揺れるのは、“完璧な先輩”を演じる仮面の下、少女のような動揺だった。


「温泉旅行、ねぇ……ふふ、慰安旅行って、名ばかりなんじゃないの?」


形のいい唇がふっと笑みに歪む。

でも、それは決して余裕の笑みではなかった。


(だって、コウくんも来るんでしょう? 二泊三日……同じ宿……同じお風呂……)


夜々は、クローゼットの奥から一枚のバスウェアを取り出した。

“混浴対応”の下着一体型バスタオル――通称「バスドレス」。


(混浴、って明言されてたわけじゃない。でも……もしも、そうなったら――)


鏡の前に立ち、肌に滑らせてみる。肩を出し、胸の形にぴったり沿うそのバスウェアは、**“戦う女の武装”**だった。


「似合ってる……かな。ねぇ、コウくん……見てくれる?」


小さくつぶやく声が、あまりにも甘かったことに気づいて、夜々は頬を赤らめた。


(ダメよ、不知火夜々。あなたは年上の余裕を見せる立場。……でも、でも……)


引き出しから小さなポーチを取り出す。

その中には、使ったことのない――けれど一応持っていた“嗜みとして”のアイテムが、ひとつだけ。


「使うなんて、思ってないわよ? ただ……ね、可能性として、ほら」


自分で自分に言い訳しながら、ポーチの奥にそれを忍ばせる。

それだけで胸が高鳴るのが悔しい。

だって、自分はもう二十歳を過ぎた大人。コウくんより、ずっと年上なのに。


(……でも、恋に“年上の余裕”なんて、意味がないのかもね)


リップと香水を丁寧に選びながら、夜々は「誘うシナリオ」をいくつも妄想した。

夜のバーでふたりきり――

少し酔ったふりをして、肩にもたれかかる――

ふざけた拍子に、指が触れて、頬が寄って――


(あぁ……だめね、これ完全に未成年に手を出すパターンじゃない……)


だが、彼はもう十八歳。

“恋”をしても、許される年齢だ。


(本当に、抱きしめられたらどうしよう)


化粧ポーチを閉じ、夜々はベッドに腰掛けた。

そのままスマホを手に取り、ロック画面を眺める。

そこには、彼とふたりで撮った小さな写真――

打ち上げの帰りに、なんとなく撮った、たった一枚の記念写真。


「……コウくん、誰と混浴するのかしら」


唇を尖らせて、ふっと息を吐く。

いつも涼しい顔でからかってきた自分が、今や逆の立場。

焦って、嫉妬して、見えない未来に心が追いつかない。


(……だから、私もちゃんと勝負しないと)


夜々はクローゼットの奥から、小さなボトルを取り出す。

それは、お気に入りのバスオイル――ほんのりスモーキーで、夜の香りがする。


「混浴なんてなかったら、……私から誘ってもいいわよね?」


その声はどこか、震えていた。


けれどその瞳は――

明日の“勝負”に向けて、静かに火を灯していた。

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