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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第10章『“妹”ポジは、誰にも渡さない。』

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『負けられない戦いが、そこにある』

「はいっ、お兄ちゃん、朝ごはんできてるよー!」


「……って、ひより? なんでエプロン着けてるんだ?」


「ふふん。今日はひよりが作ったの。パンと目玉焼きと、あと、甘めの卵焼き。お兄ちゃんの好きなやつ」


「ああ……うん。ありがとう。すごいな、朝から」


そう言いながらも、お兄ちゃんはちょっと驚いた顔で席についた。


……ふふっ、その顔が見たかったんだ。


“妹”だからって、ただ受け身でいるだけじゃ、誰かに奪われちゃうかもしれない。

だったら私は、もっと“近くにいる女の子”にならなきゃ。


「はい、あーんして?」


「……あーんは自分でできるから」


「えーっ、そこは素直にあーんってしてくれてもいいじゃん」


「……じゃあ、あーん」


ぱくっ。


……うそ、した。

しかも、こっち見ながらちょっと笑った。

あーもう……それ、反則。


胸がどくどくする。

お兄ちゃんのくせに、無意識で女の子の心を揺さぶってくるなんて――。


「……ねえ、お兄ちゃん」


「ん?」


「ひよりの作ったごはん、美味しい?」


「うん。普通に美味しい」


「“普通に”って言い方が微妙なんだけど……」


「……いや、ほんとに美味しい。ありがとな、ひより」


その声に、ちょっとだけ照れたような優しさが混じっていて。

私はうれしくて、うれしくて、

なのにちょっとだけ泣きそうになった。


だって、お兄ちゃんはこうやって――

“優しさ”だけで、私のことを特別にしてしまうから。


昼。

お兄ちゃんが仕事の資料をまとめてる間、私は飲み物を差し入れた。


「はい、ホットレモン。喉にいいやつ」


「お、ありがと。気が利くなぁ」


「えへへ。妹ですからっ」


笑顔で誤魔化すけど、本当はもっと近づきたくて――

もっと“女の子”として見てほしくて。


気づいてほしい、この気持ちに。

気づいて――でも、怖い。

もし気づかれて、拒まれたらって思うと、踏み出すのが怖くて。


だけど、それでも私は……


負けたくない。


夜。

リビングで、二人で並んでソファに座って、

何気ないバラエティ番組を見ていた。


肩が、少しだけ触れる距離。

ソファの隙間が、なんだかすごくもどかしい。


「……ね、お兄ちゃん」


「ん?」


「もしさ。ひよりが、妹じゃなかったら……どんな女の子だと思う?」


「え?」


お兄ちゃんは、テレビに向いていた顔をこちらに向けて、少し驚いた表情を浮かべる。


「いや、ふと思っただけ。もし私たちが他人だったら、クラスメイトとか、幼なじみとかだったら……お兄ちゃん、私のこと好きになってくれたと思う?」


「……」


沈黙。

お兄ちゃんは真剣な顔で、少し考えていた。


そして――


「たぶん、好きになってたと思う」


「…………っ!」


言葉が、まるで鼓膜じゃなくて、心臓に響いた気がした。


「えっ、それって、ど、ど、どういう意味……?」


「ひよりって、明るくて、一生懸命で、気がつくし……

かわいいし、放っておけないところもあるし……」


「えっ、えっ……待って待って、今“かわいい”って言ったよね!? 言ったよね!?!?」


「……うん、言った」


「う、うわああああ……!!」


私は勢いよくソファに倒れ込んだ。


ちょっと、無理。心臓止まる。

顔、ぜったい真っ赤。鼻から変な声出そう。


「な、な、なんで急に爆弾みたいなこと言うの……!?」


「ひよりが聞いたんだろ」


「う、うぅ……お兄ちゃんのくせに、ほんと、ズルい……」


“妹”ってだけじゃない、“女の子”としての私に向けてくれた、その言葉。

本当かどうかなんて、もうどうでもよくなるくらい――

うれしくて、くすぐったくて、胸がぎゅっとなる。


……でも。

こんな言葉、いつまでも聞けるわけじゃないかもしれない。


だから私は、勇気を出した。


「……あのさ、今日……いっしょに寝てもいい?」


「……は?」


「そ、そ、そのっ、変な意味じゃなくてっ!

なんか、ちょっと寂しくて……。子どものころみたいに、一緒に、寝るだけ……」


「……わかった。ひよりがそう言うなら」


「ほんとっ!?」


お兄ちゃんは、ほんのちょっとだけ戸惑った表情を見せたあと、

いつもの優しい笑顔で、こくんと頷いた。


私はそのまま、うれしさを隠せなくて、ぱたぱたと階段を上がった。


今日は――

“妹”としてじゃなく、“女の子”として、

ほんの少しだけ、勝てた気がする。


……明日も、勝ちに行くからね。


ぜったい、お兄ちゃんを私だけのものにするんだから。

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