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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第10章『“妹”ポジは、誰にも渡さない。』

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『恋のポジション戦争!?』

「――ふぅ……」


お風呂上がり。

まだ少し火照った体で、私は自室のソファにぽすんと倒れ込んだ。


さっきの配信のことが、頭から離れない。

お兄ちゃんのあの一言――「ひよりのパジャマ姿」って、あれ、どういうつもり?


冗談にしては、なんか……妙に、リアルだった。

私のこと、見てる……? 本当に? “妹”としてじゃなく、“女の子”として――?


「……やめやめ、考えすぎ。私、アオハルしすぎ」


頭をぶんぶん振って、気分を切り替えようとした。


でも、そのとき。


テーブルに置いたスマホが振動する。

LINEの通知。差出人は……お兄ちゃん。


『今日もお疲れ。コラボありがとな。

あと、明日の夜、みなとちゃんとの収録入った。帰り遅くなるかも』


……みなとちゃん、って。

あの同級生ポジの、美人で頭よくて、クールでちょっと意地悪な人。


前にちょっとだけ話したことがあるけど――

彼女、きっと私と同じ。お兄ちゃんのこと、好きだと思う。


「……また“妹”のターン、終了……か」


指でスマホを握りしめながら、私はぽつりと呟いた。


“妹”っていうポジション。

確かに、いちばん近くにいられる特等席。

でもそれは、最初から決められた関係で、変えられない運命でもあって。


……恋愛のスタートラインにすら、立ててないのかもしれないって、ふと思う。


他の子たちは、ずるいよ。


同級生ポジの人は、自然に並んで歩ける。

お姉さんポジの人は、頼れる大人の余裕で甘やかしてくる。

後輩ポジの子は、無邪気に距離を詰めてくる。


そして――新しい“妹ポジ”まで現れて。


「ひとりでいいじゃん……お兄ちゃんの妹は、私だけで、いいじゃん……」


胸がぎゅっと締めつけられて、思わず涙がこぼれそうになった。


「ひより、いるか? ちょっといいか?」


ドアの向こうから、お兄ちゃんの声がした。


慌てて顔をこすって、タオルでごしごし拭いた。


「……いいよ。どうぞ」


ドアが開いて、いつもの優しい顔が覗く。


「さっきLINE送ったけど、明日遅くなるって話。それだけ伝えたくて」


「うん。読んだ」


「ごめんな。最近仕事詰まってて……。ちょっと、ひよりと過ごす時間減ってるかもな」


その言葉に、胸がまたチクリと痛んだ。

でも――ここで黙ってたら、なにも変わらない。


私は、勇気を出した。


「……ねぇ、お兄ちゃん」


「ん?」


「お兄ちゃんって……その……誰がいちばん好き?」


「……は?」


お兄ちゃんの目が、きょとんと丸くなる。


「いや、ほら、いろんな子と関わってるじゃん。お姉さんとか、後輩とか、同級生とか、私とか……。

“誰が特別”とか、考えたことない?」


しん、とした空気が部屋に流れた。


お兄ちゃんは少しだけ黙って、それから苦笑したように答えた。


「……みんな、大事だよ。ひよりも、他の子たちも。俺にとっては、みんなそれぞれ特別な存在だ」


……あーあ。


それ、たぶん、“正解の答え”なんだよね。

誰も傷つけない、誰も否定しない、優しいお兄ちゃんらしい言葉。


でも私が欲しかったのは――

“誰よりもひよりが好きだ”っていう、ワガママなひとことだった。


「……そっか。そーだよね。うん、うん、そうだよね。

うん、ありがと、お兄ちゃん」


笑った。ちゃんと、にこって。


でも胸の奥、ズキズキして、息が詰まりそうだった。


「ひより……?」


「じゃあ、明日の準備もあるでしょ? がんばってね!」


にっこり笑って、手を振った。

お兄ちゃんは、少しだけ不思議そうな顔をしながら、ドアを閉めた。


「……はあぁぁぁぁ……!!」


ドアが閉まった瞬間、私はベッドに突っ伏した。


だめだ。泣くつもりなかったのに。

“妹”だから、“甘えん坊”だから、“頼りにされる存在”だから。

そうやってずっと、可愛くいようって、頑張ってきたのに。


結局、私だけが――“特別”じゃないの?


「……もう、ほんとバカ……。わたし……どうしたらいいの……」


ぽたぽた、涙がシーツを濡らしていく。

それでも、私は歯を食いしばって、拳を握った。


まだだ。

まだ、負けてない。

まだ、“妹”ってポジションは、誰にも奪わせない。


私は、ただの妹じゃないんだから。


……絶対に、お兄ちゃんを振り向かせてみせる。


たとえこの恋が、“戦争”だとしても。

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