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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第10章『“妹”ポジは、誰にも渡さない。』

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『妹だけど、女の子だもん。』

「じゃーんっ! 《ひよこまる♪ × レイ》兄妹ゲームコラボ配信、開催決定ですっ!」


配信画面の向こうに向かって、私は元気よく手を振った。


コメント欄が一斉に流れ出す。


《うおお神回》《神兄妹再来》《この組み合わせ待ってた!》

《もう結婚しろ》《レイくん妹に甘すぎて草》《尊い……》


ふふっ、やっぱりこの空気、好き。

一緒に配信すると、コメント欄の盛り上がりもすごいし、

何より――お兄ちゃんと一緒にいられるから。


「ひよこまる、今日も元気だな。ゲームもトークも、全部任せたぞ」


「お兄ちゃん、それじゃただの置物じゃん! ちゃんと動いてー!」


「了解、妹様」


ちょっとした掛け合いに、コメントが《夫婦漫才かよ》《安定感すご》《これが公式妹か》と湧く。

お兄ちゃんが笑ってくれるだけで、胸がふわってなる。

声も、表情も、私だけが知ってる“裏の顔”も――全部が好き。


……だから、私だけのものにしたい。

でも、それってワガママなのかな。


「ねぇお兄ちゃん、ひよりの声、今日ちょっと甘すぎたりしない?」


「そうか? いつも通りだと思うけど……」


「ふーん。そっかー。じゃあ、お兄ちゃんが気づいてないだけだよ」


「……え?」


そう言って、小さく笑う。

たぶん今のセリフ、配信ではちょっと聞き取りづらいくらいのトーンだった。

でも、お兄ちゃんにはちゃんと届いてる。

……届いててほしい。


「さてさて、今日は兄妹で“お互いのことどれだけ知ってるかクイズ”をやりまーす!」


「え、そんなの聞いてないが……?」


「ふふ、サプライズ。お兄ちゃん、逃げちゃダメだからね?」


私は手元のフリップを持ち上げて、準備万端。

配信中だけど――これは、恋の戦いの始まりでもあるんだから。


「第3問! ひよりの好きな朝ごはんは?」


「えーっと……鮭おにぎりと、甘い卵焼き?」


「ピンポーン! 正解〜〜〜!」


「ふっふっふ。伊達に一緒に暮らしてないからな」


「うーん……じゃあ、お兄ちゃんの好きな寝巻きは?」


「それ問題としてどうなんだよ」


「ほら、早く答えて?」


「……ひよりのパジャマ姿」


「…………っ!? お兄ちゃんっ!!???」


わ、わ、わたしのパジャマ!?

っていうか、それ配信中に言うこと!?


コメント欄が爆発する。


《!?!?》《今の聞いた!?》《天城兄やばい》《こいつら付き合ってるだろ》

《パジャマ特定班出動》《それはアウトでは》《尊死》


「ち、ちがっ……! これはっ、そのっ、冗談でっ……!」


「嘘つけ。反応が初々しすぎて逆にバレバレだぞ」


「う、うぅ……ばか……」


配信画面の自分のアバターは笑顔を保ってたけど、

私の心臓はバクバクで、顔はたぶん、真っ赤になってる。


……こんなの、ずるいよ、お兄ちゃん。

妹って立場だから、いつも“甘える側”って思ってたのに――

たまにこうやって、ズルいくらいにドキドキさせてくる。


……もしかして、ちょっとは意識してくれてるのかな。

なんて、そんな都合のいいこと、思っちゃう自分がいる。


配信が終わったあと、私はそっとイヤホンを外して、お兄ちゃんの部屋を見た。

モニター越しに、ちょっと疲れたような笑顔を浮かべる横顔。


「あのさ……今日の配信、どうだった?」


「ん? 楽しかったよ。やっぱりひよりは進行上手だな。助かる」


「……それだけ?」


「ん?」


「……ううん、なんでもない」


……ズルいなぁ。

お兄ちゃんは、いつも自然体で、私を甘やかして、

でも決定的なことは言わない。


“妹”と“女の子”のあいだに立って、

私をじらすように笑って――


「……でも、絶対にあきらめないから」


「え?」


「こっちの話!」


私は笑って、すぐに部屋を出た。

胸の奥、あったかくて、くすぐったくて、でも少しだけ切ない気持ちが広がっていく。


まだ“妹”のままだけど――

でも、今日の配信で、ちょっとだけ踏み込めた気がする。


たとえばそれが、ほんの一歩でも。

いつかその一歩が、未来につながる日がくるかもしれないから。


……だから、もっと頑張る。


お兄ちゃんを、ぜったいに誰にも渡さないために。

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