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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第10章『“妹”ポジは、誰にも渡さない。』

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プロローグ:アオハル妹、嫉妬する。

「……お兄ちゃん、モテすぎじゃない?」


そんなつもりじゃなかったのに、口に出した瞬間、心の奥で何かがプツンと弾けた。


天城ひより――十五歳。高校一年生。

そして、《ひよこまる♪》という名前で活動してる、ほんわか癒やし系(自称)のVtuber。


だけど、今この瞬間、私は全然癒やされていない。

むしろ、ぐるぐるぐるぐる、心の中で黒いもやもやが渦を巻いてる。


「……だって最近さぁ、お姉さんポジの人と夜遅くまで打ち合わせしてたでしょ?

それに、同級生ポジの子と、こないだ配信で急接近してたし……

後輩ポジの子は“レイくん大好き!”って堂々とアピールしてくるし……

極めつけは、あの“新妹ポジ”……っ!!」


部屋のベッドの上で、うつ伏せのまま枕に顔を押しつけて、私はバタバタと足をばたつかせる。

あぁ、もう……なにこれ、完全にヤキモチじゃん。


「うぅ……お兄ちゃんのバカ。無自覚たらし……」


思えば、最初に《ひよこまる♪》として活動することになったとき――

中の人を代わってもらう形で、お兄ちゃんが“中のイケボ”をやってくれたとき――

あの瞬間から、私はもう、ずっと、ずーっと好きだったんだ。


兄としても、男の人としても。

世界で一番かっこよくて、優しくて、頼れて、ちょっと鈍感で――

それでも、どんなときも私の味方でいてくれる、最高の人。


……だったのに。


最近、なんか私の“ターン”少なくない?

他の子たちとコラボしたり、裏で相談に乗ったり……

私だけが知ってるお兄ちゃんの顔、減ってきてない?


「いや、でも……一緒に住んでるし! 幼い頃からずっと一緒だし!

“義妹”ってだけで、他とは一線を画してるはず!」


・・・・・。

「まだだ。まだ焦る時間じゃないっっっっっ・・・!!!。」


心の中で叫んでみても、不安は消えない。

だって、あの新妹ポジの子、やたらと可愛いし、甘えてくるし、

お兄ちゃんもまんざらでもない感じだし……。


私の、“妹”ってポジション……誰にも渡したくないのに。


……ダメだ、泣きそう。


私はがばっと起き上がると、机の引き出しから、数日前に作った企画書を取り出した。

《ひよこまる♪ × レイ》兄妹ゲームコラボ配信――自宅収録バージョン。

事務所に提出したら、意外とあっさり通ってしまった。


「やるしかない……!」


妹として。

女の子として。

そして、ひとりの恋する女の子として。


このモヤモヤを吹き飛ばすために――

私は“私だけにしかできないこと”を、やってやるんだから。


「ひよりー、晩ごはんできたぞ。降りてこいよー」


階下から、お兄ちゃんの声が聞こえた。


その声だけで、胸がぎゅってなる。

こんなに大好きで、大事で、大切で、愛おしい人が、

誰かに取られてしまうかもしれないなんて――


……そんなの、ぜったい、イヤ。


「……今いくー!」


わざとらしく明るい声で返事をして、私は立ち上がる。

鏡をちらっと覗いて、ほっぺをぺちぺち叩いて笑顔を作る。


大丈夫。まだ焦る時間じゃない。


私は、ずっと一緒にいた。

これからだって、いちばん近くにいられる。


そして――十八歳になったら。

“兄妹”じゃない、特別な関係になってみせるんだから。


心の奥でそっと呟く。

小さな決意を胸に、私は階段を駆け下りた。


「ねぇお兄ちゃん、今日のごはんはなぁに? ひよりの好きなやつー?」


くるっと振り向いたお兄ちゃんは、相変わらず無防備で優しい笑顔だった。


……ほんと、罪な男だよ。

でも、だからこそ――絶対に、渡さない。


どんな女の子より、誰よりも、

私は“お兄ちゃんの妹”で、“いちばん近くにいる女の子”なんだから。


――恋する妹は、今日も最前線です。

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