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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第8章『音だけでメシテロ!?Vキッチン対決SHOW』

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エピローグ『耳の記憶と、チームの音色』

配信の喧騒が去った翌日。

LinkLive事務所のラウンジには、どこかまったりとした空気が流れていた。


「はいっ、お疲れさまクッキー、焼けたよ〜!」


そう言って、ひより――いや《ひよこまる♪》が、レンジから取り出したクッキー皿をテーブルに置く。ほのかに甘くて香ばしい匂いが広がった。


「……音じゃなくて、香りって……なんて優しい世界なんだ……」


呟いたのは、ソファでぐったりと沈んでいたレイ。

昨日の“耳だけ審査”で魂を削りきったその姿は、どこか透明感すら帯びていた。


「……俺、今日だけは“鼓膜”の存在を忘れたい……」


「お兄……本当に疲れてる……」


ひよりがちょこんと彼の隣に腰を下ろす。

手にしたクッキーをそっと差し出しながら、小さな声で囁いた。


「今日は、音じゃなくて……“味”で癒してあげるね?」


「うっ……その優しさが、逆に沁みる……」


ぽり、と一口。

ほんのりバターが香る、それだけで泣けそうになる。


「うん、やっぱお前の焼き菓子はうまいな……」


「えへへ……ありがとうっ。でも、次は“しゅわしゅわケーキ”も完成させたいな……」


「そのときは、目隠しなしで味わわせてくれ」


「もちろんっ! ちゃんと目、見て、食べさせてあげる!」


「おやおや、いい雰囲気ですね」


そう言いながら、ふたりの背後からスーッと現れたのは、《ヨヨ》。

今日の彼女は、落ち着いたオフの服装で、メガネなんてかけていた。


「昨日のレイくん、可愛かったですね。耳が赤くなって」


「だからアレは! 音が攻撃的すぎただけで!」


「ふふっ、じゃあ……今度は、目を見て囁くの、どうですか?」


耳元で、またもやささやかれる。レイがぴくっと反応して、ソファの背もたれに沈み込む。


「ヨヨさん……ほんと、ナチュラルに攻めてきますよね……」


「ナチュラル? うれしい。じゃあ、今度はチョコじゃなくて……甘いミルクで、耳、癒してあげますね?」


「また耳狙ってくるのか……」


「レイくんのリアクション、可愛いですし♪」


「おい、審査員がモテすぎてないか?」


どこか拗ねたように呟いたのは、《月詠ルイ》。

手には自作の“トースト改”が載った皿を持っていた。


「俺だってな、今回は本気で“音の革命”を起こしたつもりだったんだ。にもかかわらず、“爆音王子”ってタグがついたんだぞ……!」


「そりゃ爆発したらそうなるよ!」


「次は違う。次は、爆発しない」


「いやそこ最低ラインだからね!? “しない”を前提にして!!」


ルイは一口トーストを齧ってから、肩をすくめるように笑った。


「でも……まあ、楽しかったよな」


「……うん」


レイはそう呟いて、ソファからゆっくり起き上がる。


「正直、耳死ぬかと思ったけど……配信、めちゃくちゃバズったし。視聴者も笑ってた。みんなの音も、すごかったし」


「“音だけで伝える”って、難しいけど……気持ちを込めれば、ちゃんと届くんだよね」


ひよりが言うと、ヨヨがゆっくり頷いた。


「見えない分だけ、想像する。“心で食べる”って、案外アリかもね」


「俺も……もうちょっと耳、鍛えてみようかな。次の戦いに備えて」


「その意気だ、レイ。次は“実食編”だって噂もあるからな?」


「まじかよ、今度は胃袋やられるのか……」


「でも、そのときはわたし、ちゃんと作るから! 愛情たっぷり、失敗なしのスイーツ!」


「それは……楽しみにしてる。ちゃんと、噛みしめるから」


窓の外には、夕焼け。


ラウンジには、クッキーの香りと、笑い声と、まだ少しだけ残っている余韻の“音”が満ちていた。


きっと――この配信は、彼らにとっても、視聴者にとっても、忘れられない“音の記憶”になっただろう。


次の戦いが、また始まるとしても。


この音は、ずっと、心に残っている。

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